ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

シーサイドモーテル

2010-05-18 13:21:09 | さ行
これは残念、笑えませんでした。

「シーサードモーテル」43点★


山奥のさびれたホテルの
4つの部屋で起こる悲喜こもごもを
同時進行で描くドラマです。


インチキ美容クリームの営業マン(生田斗真)に
三十路前のコールガール(麻生久美子)、

チンピラ(玉山鉄二)に
伝説の拷問職人(温水洋一)

スーパーの社長(古田新太)・・・などなど

11人のクセのある男女が
4つの密室で繰り広げる
ダマしダマされの物語とは?


ってことなんですが

車などの小道具や美術にこだわって
ちょっと味のある役者を使って

いわゆる“オフビートな笑い”を
目指した感はあるんですが


この手にありがちな
娼婦や水商売女性、チンピラに、借金や女装など
わかりやすい定番アイテム、キャラを盛り込んだだけ

しかも笑えない、という
一番苦手なパターンでした。


もっともまずかったのは
事故、という同じ手を
二度使ったことですかね。


ただラストの収束が
わりと気持ちよかったのと

古田新太さんの女装にまつわるくだりと

あと「トリック」に出てる
池田鉄洋さんのなさけない眉毛には
笑いました。


★6/5から全国で公開。

「シーサイドモーテル」公式サイト
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ラスト・ソング

2010-05-16 23:37:10 | ら行
いやーよくできた青春映画ですわ。

「ラスト・ソング」73点★★★


「ハンナ・モンタナ」の主人公として
またミュージシャンとしてもノリにノッてる
マイリー・サイリス。

番長もけっこうヘビーチューンしてますが
本作は彼女のために書き下ろされたという話で
まあこれが、うまく作ってあるんです。


主人公ロニー(マイリー・サイラス)は

夏休みを過ごすために
小さな弟とともに
父の住む海辺のコテージにやってくる。

ロニーは幼いころから音楽の才能に恵まれ
名門ジュリア―ド音楽院に入学を許可されたものの

両親の離婚に反抗して
もう何年もピアノから遠ざかっていた。

久しぶりに会った父に反抗的なロニーは
海で出会った青年ウィル(リアム・ヘムズワース)にも
とげとげしい態度を取る。

そんななか
ロニーは海辺でウミガメの卵を見つけ
卵を守るために奮闘を始める――というのは、ほんのさわり。


海に水族館デートにウミガメ、
さらに別れに事件に、誤解に病気
そして音楽がつなぐ親子の絆・・・・・・

よくまあ1時間47分に
ありとあらゆる要素を詰め込んで

うまくまとめたよなあと
感心してしまいます。


それこそ米テレビの青春ドラマの
1シーズン分はゆうにあるボリューム感。


ストーリーをよく考えてみれば
両親の離婚ごときでいまどきこんなにグレる娘っているか?とか
各所に穴はあるんだけど


そんなこと吹き飛ばしてくれるのが
やはりマイリー・サイラスのオーラ。


ミュージシャン血筋に生まれ
才能バリバリの彼女には
ホントに何か“ぶる”ところとか
“自分をよく見せよう”いうところがない。

あくまでも姿勢悪く
あくまでも機嫌悪く
ふてくされた10代をまるっと演じており
これはなかなかできることじゃないと思う。


その気にしなさ加減と
しゃがれた声がまた
肝っ玉母ちゃんを連想させるというか

よくいえば母性を感じさせて
なんだか「好き」になっちゃう魅力を持っているんですねえ。

なにより
歌のうまさ以上に
“音楽とひとつになっている人間”のリアリティを
いま、ここまで出せる俳優ってほかにいないと思う。

ぶっとい指でふっとピアノを弾き出す
本物の迫力にやられました。

ちなみにこの映画をきっかけに
実生活でも
リアム・ヘムズワーズとお付き合いをしているそうで

あ~なんかそういう話
オバチャン、ほのぼのしちゃいますわあ。


★6/12から全国で公開。

「ラストソング」公式サイト
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アイアンマン2

2010-05-15 17:18:12 | あ行
ヨハンソン、何キロ絞ったんだろ・・・


「アイアンマン2」74点★★★


アメコミヒーロー実写版として
2008年に大ヒットした「アイアンマン」の続き。

1よりキャストが魅力的になっていて
パワーアップしてる“続編”の好例です。


兵器製造をしていた大企業の社長
トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)
自らの兵器が悪用されていた事実を知り
兵器製造を中止。

その天才的な頭脳で
最強のハイテクスーツを開発し
正義のヒーロー・アイアンマンとなった。

・・・までが前作のお話。


そして今回、スタークは
アイアンマンの動力源によって
自分の体が徐々に冒されるピンチに陥っている。

そんななか
新たな強敵ヴァンコ(ミッキー・ローク)が登場。

さらに敵か味方かわからない
謎の美女ナタリー(スカーレット・ヨハンソン)も現れて・・・


前作同様、
オヤジでノリのなんか軽~いヒーロー像と
現代への風刺を込めたスパイシーさ
そして
オトナのメカ心をくすぐる設定が楽しい
娯楽映画です。


それになんたって
敵役のミッキー・ロークと
新キャラのヨハンソンがヤバすぎでしょ!
カッコよすぎる・・・





主役のダウニー・Jrが割を食うほどですが
これは英断だったですね。

ミッキー・ロークも相当に
体絞った感じですが

ポワン&むっちりが魅力だった
ヨハンソンの変貌ぶりがすごいですよ。


初アクション出演ながら
「マジにスタントをこなさないとカッコ悪い」と
相当なトレーニングを積んだそうで

確かにこの全身ピチピチのボディースーツ姿を見れば
その言葉偽りなし、と思います。


ただ欲を言えば彼女の
アクションをもっともっと見たかった!


またこの映画は
芯に実に現代的なアイロニーを持っていて
そこが
お祭り騒ぎアクションに
プラスアルファの魅力になっています。


冒頭、アイアンマンを兵器として
没収しようとする米国との
すったもんだがあるんですが

「平和維持は国の仕事から、いまや民営化された」という
スタークの一貫した考えに
ふーむ、と思ってしまうのでした。


エンドクレジットのあとに
お楽しみがあるので、お見逃しなく。


★6/11から全国で公開。

「アイアンマン2」公式サイト
コメント (4)
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かつおのこと

2010-05-12 04:40:59 | ぽつったー(ぽつおのつぶやき)

しばらく更新してなくてすみません。

うちの猫、かつおが
5/7(金)に突然亡くなってしまい

まだちょっと整理ができていなくて。


ツイッターで少しずつリハビリしてますが

またブログも
しっかりやってこうと思ってます。

なによりかっちゃんは
いつも私の仕事を優先してくれてたので。

「遊んで~」と鳴いてても
私がキーボードをカチャカチャ言わせると
いつの間にかおとなしくなってた。

まあネット見てたりサボってると
すぐバレて邪魔されるんですけどね(笑)。



そんなで今日は
いったん整理するために

かっちゃんのこと、少し書かせてクダサイ。


かっちゃんは私と同居人である飼い主Bの
大事な一人っ子でした。


4/23に突然、体調を崩して
通院→入院してました。

病気の原因はまだわかってません。
生研の結果が全部出てないから。

でもたぶんすい臓の急激な炎症らしい。

詳しい経過は「日々かつお」
飼い主Bが書いてます。


まだ3歳と1ヶ月だったから
先生も我々飼い主も
誰もこんなことになるとは
思っていなかった。


亡くなった日は
仕事を中抜けして
病院に会いに行ったんです。


いままでより呼吸が苦しそうだったけど
そんなに悪化してるとは先生も思ってなかった。

面会30分しかいられなくて
「これから仕事だからごめんね。また明日ね」
って言ったら

いつもは感じないんだけど
あの日だけは
一瞬「行かないで」という感触が残った気がした。


その約15分後に電車のなかで
「急変した」という知らせを受けたんだけど
私は仕事に向かってたから、戻れなかった。

一緒にいた飼い主Bは
病院に戻ってくれたけど

すでに自発呼吸はなく
先生たちが心臓マッサージをしていたそうです。


あとで聞いたら
我々が部屋を出てすぐに
吐いて、呼吸が止まってしまったと。

「また明日ね」がたぶん
私がかっちゃんにかけた
最後の言葉になった。


かっちゃんは最期まで
がまんしてくれてたんだと思う。

具合が悪くなったのを見たら
私が仕事に行けなくなると思ったのかもしれない。

ほんとに、そんなコでした。


立ち直るのは難しいけど
もうこれからはずっと一緒にいられると思うと
気持ちが落ち着きます。

また仕事もブログも
がんばっていこうと思ってます。

すでに
励ましや温かい言葉をくださったみなさんに
本当に心からお礼を言わせてください。

ありがとうございました。

そしてかっちゃん
ありがとう。

また、ぽつお番長がんばるよ。

じゃ、今日はおやすみ~
コメント (4)
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モダン・ライフ

2010-05-05 02:54:28 | ま行
タイトルと宣伝のビジュアルから
いまどき楽しき“スローライフ”映画かと
思ったら・・・

あら、違ってた。


「モダン・ライフ」71点★★★


あの“マグナム”に所属し
ピューリッツァー賞も取ってる
写真家レイモン・ドゥパルドンが


自分の出身地でもある
南仏の山間部の農村を
10年以上かけて取材&撮影したドキュメンタリー。



小規模農家の置かれている
決して明るくない現実を

淡々と徹底したリアリズムで描いた
出色の作品です。



映画は
村の農家を一軒、一軒訪ね
農夫たちをテーブルの前に座らせて

「最近、変わったことは?」
ってな感じの
会話を中心に構成されています。



厳しい農村の現状やらを
データや数字で訴えるわけじゃない。

監督がやっているのは
ただただ
「そこにあるものを、そのまま写す」作業なんです。

そこに写るものは
村から
だんだん羊や牛が減っていくさま。


年老いた夫婦が
酪農を続けることができなくなっていく現実。


都会からきた嫁とそりの合わない老農夫。


「農業をやりたいの」とやってきて
あっさり「やっぱり、大変だった」という若夫婦。


・・・もうすべてが
これ以上はないほどの“リアル”。


なにより驚くのは
カメラの前に「座らされた」人たち(特に年配の農夫たち)が
みんな、楽しそうでも
嬉しそうでもないってことです。


気の利いた言葉も、愛想笑いのひとつもなく
話の途切れた気まずい空気を
モノともしない。

いやー、観ている我々のほうがひるむほど。

てか、インタビューする立場でもある
自分から見るともう冷や汗もんです。


実際、最初は
「何年も通ってて、こんなにギコチないなんて
この監督のインタビューアーとしての
技量ってどうなの?」とか
ナマイキにも思っちゃった。


しかし
「週刊朝日」“ツウの一見”のインタビューで
農業流通の専門家・山本謙治さんの
お話を伺いつつ

よくよく考えると

これこそが
田舎で静かに暮らす人々の
ホントウの姿なのではないかと。


愛想よく話してくれる農家の人を
取材しているうちは
まだまだ甘いなー自分、と反省。


ということで
内容も、甘くない現実という面でも
渋~い映画に思えますが

それを補って余るのが
写真家ならではの画角、構図の完璧さ。


たいていは村人たちを
テーブルの前に座らせて
長回しでインタビューをしているんですが




ボソボソと話す彼らを
じーっと観察してるうち

後ろのキッチンにある雑貨やコーヒーポット
テーブルに置かれたグラス

そういうものがすごーくものすごーく
気になってくる。


そこから、彼らの普段の生活が
浮かび上がってくるんです。


お見事でした。

特に「田舎暮らし」や「農業」に興味がある人
必見です。


★6/26から渋谷シアターイメージフォーラムで公開。
 ほか全国順次公開。

「モダン・ライフ」公式サイト
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