自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★災害関連死めぐる戸惑い 認定には慎重さとスピード感を

2024年05月15日 | ⇒ドキュメント回廊

  能登半島地震でいわゆる「災害関連死」について発表される行政のデータやメディアの報道に、少し戸惑いを感じている石川県民が少なからずいるのではないだろうか。自身もその一人だ。メディア各社の報道によると、きのう14日、地震後に亡くなった人を災害関連死とするかどうかを判断する県と3市町(輪島市、珠洲市、能登町)の合同審査会が開かれ、3市町に遺族から申請のあった35人のうち30人を災害関連死として認定した。審査会は非公開で行われ、委員は弁護士3人、医師2人の5人。今後は月1回のペースで開催する。

  戸惑いがいくつかある。審査が行われたのは3市町の35人(珠洲19人、輪島9人、能登7人)だった。認定されたのは30人(珠洲14人、輪島9人、能登7人)。珠洲の5人ついては、委員が追加資料の提出を求めたため次回以降に再審査となる。戸惑いというのも、今回審査された人数が少ないのではと感じるからだ。遺族からの申請数は輪島市だけでも53人に上っている。ところが、今回は9人しか審査されていない。このペースだと輪島市の申請数の審査を終えるのにあと5ヵ月はかかることになる。もちろん、数をこなす単純な作業ではなく、ある意味で「書面上の検死」なので時間がかかるのは分かる。

  ただ今後、申請数がさらに増える可能性も十分にあるだろう。なので、審査会の委員を増やす、開催回数を月1回より増やすことが必要なのでは、と素人ながらに考えたりする。

  さらに戸惑ったこと。県危機対策課がこれまで発表してきた地震の人的被害は「死者245人(うち災害関連死15人)」と公表してきた。なので、この「15人」は確定の人数と認識していた。ところが、市町が独自に判断した人数を県に報告していたもので、確定ではなくあくまでも「関連死疑い」の数字だった。それを確定数のように公表していたことになる。県では遺族からの申請があれば15人についても審査を行うとしている。

  災害関連死の認定基準については全国統一のものがなく、石川県では初めての対応であり、2016年4月の熊本地震で熊本県が独自に定めた認定基準などを参考にしたようだ。ちなみに、熊本地震では犠牲者273人のうち、80%以上の218人が災害関連死だった。その認定については去年12月現在で遺族から申請があった722人が審査されて、認定は218人、認定率は30%となっている(5月15日付・北陸中日新聞)。

  関連死について政府は「災害による負傷の悪化、または避難生活などにおける身体的負担による疾病」での死亡と定義している。関連死の認定数について多い少ないを問うているのではない。遺族の気持ちを察してスピード感を持って行政は対応してほしい。もちろん審査会での審議は慎重に。

⇒15日(水)夜・金沢の天気   くもり

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