伊豆大島の活火山「三原山」の北東
「砂漠が正式な地名として国土地理院の地図に載っているのは、大島だけだそうです」
伊豆大島のジャズ喫茶でマスターからそう聞いたとき、なぜか妙に納得しました。そう、あの砂漠なら「日本でただ1か所」と威張ることができると思ったからです。
【画像】東京都にある、日本唯一の「砂漠」を見る(8枚) 久しぶりに大島を訪れ、前日初めて歩いた砂漠の光景にとても感激したばかりだったので、「正式な砂漠」というお墨付きに自分のことを褒められたように感じました。
※ ※ ※ 見渡す限り広がる砂また砂の風景といえば、大陸の砂漠を連想します。 日本で同じような眺めを探すとすれば、鳥取砂丘ということになります。他にもいくつか大きな砂丘がありますが、知名度は鳥取砂丘が圧倒的です。しかし、大島には砂丘などではなく、もっと大陸的な「砂漠」があるのです。
国土地理院の地図を見ると、大島の象徴である活火山三原山の北東に「裏砂漠」、さらにその先に「奥山砂漠」と記されています。
大島の砂漠とは、三原山周辺に広がる荒れ地のことと思えば、間違いないでしょう。
ちなみに、地元では三原山の西側に広がる似たような地形の一帯を「表砂漠」と呼びますが、なぜか地理院の地図には載っていません。
まるで月か、地の果てのような風景
伊豆大島にある展望台から「裏砂漠」と三原山を一望(画像:斎藤潤)
これまで、三原山には何回か登ったことがあったので、今回は雄大な風景を一望できる山上の大島温泉まで行き、そこから三原山へ向かって歩きました。 火口原に降りてゆく細い道は、広葉樹の林の中に続いていましたが、樹々の背が低くなるにつれ、草地の面積が広がり、やがて砂原になり、そこに息をのむ風景が広がっていたのです。
月世界、砂漠、地の果て――いろいろな言葉が頭の中を駆け巡ります。
溶岩が流れた痕なのでしょう。ジオロックガーデンと呼ばれる、黒い海に小山のように波立つ岩の連なりが何か所もありました。冷えて岩になる、夜陰の中で赤い光を放ってうごめいていた姿を想像するだけで、わくわくします。
一歩一歩進むたびに、ジャッジャッジャッと足元で鳴り続けている大地を見ると、細かい砂利のようなスコリアばかりではなく、溶岩の塊がいくらでも転がっていました。 黒いものが多いのですが、なぜか鮮やかな赤褐色もあります。黒いものも剥げ落ちたような部分に、水面に広がる油のような虹色を見ることもありました。
スコリア(岩滓、がんさい)とは、噴火によって噴き上げられたマグマが細かく千切れて飛び散り冷えて固まった多孔質の黒っぽい塊です。砂ではなく、砂利といった方がいいでしょう。
崩れたアスファルトのようにも見えますが、高圧下で溶岩に含まれていた水などが抜けた細かな穴(軽石を思い浮かべてください)があいているので、見た目よりもずいぶん軽いのです。
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