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古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

ハームリダクションとは何か

2017-09-24 15:29:40 | 
古森病院@福岡市博多区です。

管理人は内科医ですが、アルコール依存症(疑い)の方が
世の中に結構おられることに 驚かされることがしばしばあります。

以前 記事にもしていますが
アルコール依存症の方は 本人はもちろん
ご家族も薄々気づいているものの 問題を表ざたにしたくないこと
アルコールと別れさせるのが ほぼ不可能であること

などから 現実に目をつぶり 
何らかの深刻な社会的あるいは医学的な問題が 発生して初めて
重い腰を上げざるを得ない状況となるのが 現状です。

管理人が拝見する限りでも
アルコールに依存している方は
「この人が仮にアルコールを止めたら 
そのあとに空いた心の穴を 果たして
誰か(あるいは何か)が癒してくれるのだろうか」という方が多く
止めた後のことを考えると 一筋縄ではいかない方ばかりです。

最近 2chの元管理人であった西村博之さんの
「無敵の思考」(大和書房)という本を読んでいたところ

「(現在西村氏が居住している)フランスのパリ北駅ではヘロインやコカインを打つ人が
使う医療センターがあり、(未使用の)注射器を貸してくれて、医者と看護師が検査を行い
ヘロインやコカインを打って帰れる」
「マリファナが合法の州(ワシントン州やコロラド州)や都市(パリ)がある。」

という文章があり、その流れで

ハームリダクションとは何か~薬物問題に対する あるひとつの社会的選択
(中外医学社)

という本を読みました。

現在の日本でも 違法薬物で逮捕された後、
精神病院やダルクなどの治療施設に入ることと引き換えに 
減刑となるケースが以前よりは増えてきているように思いますが、

海外では日本より先に 厳罰より支援 という考えで
西村氏の書いているような 薬物との共存、他の合法薬物への置き換え、
当事者同士でのコミュニケーションの場の確保

などで問題解決を図る試みがなされ、大きな成果をあげているとのことです。

違法薬物を厳罰化しても 事態が解決しない
取り締まり、収監のコストが馬鹿にならない
厳罰化しても、再犯による収監が後を絶たない

ということが理由とのことで

アルコールは合法ですが、合法であれ、違法であれ
問題解決のためのアプローチは似てくるんだなあ と思いました。

〇〇依存症(〇〇にはいろいろな名称が入ります)の方には 
もともと何らかの精神障害の人が多い
(先天的な病気もあるでしょうが、劣悪な生育環境などで
二次的に発症する場合もあるし、成人して後の抑うつ状態なども含む)というお話も
うなずける内容で、

何らかの生きづらさの解消のために
娯楽的にというよりは サバイバルするために 自己治療の目的で始め
続けるケースが多い印象を受けるという筆者のお考えは

管理人がお会いした数少ない症例の方々にも悉く
当てはまるものでした。

〇〇依存症を含む精神障碍者への対策は 問題の本質から目をそむけ
ひたすら社会から隔離するという方法のみだった日本でも
大きく考え方を変える日が近くなってきているのでしょうか。

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理由を探る認知症ケア の著者の方が 当院内部研修のため来院されます。(外部施設職員の研修公募)

2017-09-14 15:17:35 | 日記
古森病院@福岡市博多区 です。

今月28日(木曜日)と来月 10月13日(金曜日)いずれも 17時から18時30分まで
当院5階で行われる
当院職員認知症内部研修のために 理由を探る認知症ケア の著者である
ペホス先生が 来福されます。

せっかくの機会ですので 外部施設職員の方にも聴講の門戸を広げようと思います。
参加費は500円のみで結構です。駐車は近隣有料駐車場をご利用ください。

当院会場狭く、一回につき3~4名を受け入れるのが限界です。
ご興味のある方は 当院代表 291-3945に「認知症研修の件で」とお電話下さい。

ぺホス先生は以下の連載 書籍の著者です。

連載:毎日新聞・医療プレミア「理由を探る認知症ケア」
⇒https://goo.gl/4QZ1hY
書籍:「理由を探る認知症ケア」
⇒http://amzn.to/2bz7nhS
アプロクリエイト 代表 ペ ホス
WEB  https://www.en-coach.com

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追記 外部施設職員と書きましたが、入所でなくても通所でも包括でも訪看でも訪介でも訪リハでも
   施設で働いている職員であれば構いません。

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外部ボランティア(和太鼓)

2017-09-13 15:30:57 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

今日は外部ボランティアで
中村学園大学・短期大学の合太鼓部の
輝来響楽座(きらきらざ)の女子大生の方々が
6名も当院に来院されました。

若い女子大生パワーに圧倒されるaround fiftyの管理人・・・でした。
太鼓体験ではほとんどの患者様が楽しく叩かれました。

(写真では患者様の人数が少なく見えますが、実際に参加された方はもっと多かったです)

パワーを戴き、また明日から(今日からだった・・・)頑張ります!
ご多忙のところ、有難うございました!!

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最近読んだ本(支援の在り方について)その10

2017-09-03 14:41:35 | 
古森病院@福岡市博多区です。

管理人の趣味は多読です。
ネット書店にて 「人を助けるとはどういうことか」英治出版 エドガー・H・シャイン著
という本を見つけ、面白そうでしたので、購入して読んでみました。

翻訳本なのですが、翻訳本の常で 全体がやや冗長(わかりやすいのですが)な嫌いがあり、
後半にまとめが書かれてあるので まとめから先に読み、知りたいところを前に遡って読んでもよいと思います。

管理人がやっている医業も介護(ケアマネ)業も支援がメインの仕事ですので
面白く拝読いたしました。

特に医師の役割(本の中でのそれは狭義の医師の話ではなく、
支援者には診断と処方という医師業務のような役割が入ってくるという意味)という項目は
医師の業務について まさにずばり当てはまる内容でした。

一部抜粋すると

************************************** 

要するに、医師としての役割がどの程度成功するかは、以下の点にかかっている。

1 クライアントが正確な情報を明かす気があるかどうか
2 クライアントが診断や処方を受け入れ、信じるかどうか
3 診断のプロセスによる結果が正確に理解されて、受け入れられるかどうか
4 勧められた変化をクライアントが実行に移せるかどうか
5 クライアントが依存心を強めた結果が 最終的な解決策の助けとなるのか、妨げになるのか

***************************************

初診時など 信頼関係がない中で 
医師が患者さんの受診動機を見抜くには コミュニケーション能力が欠かせません。

管理人の経験上、受診動機が他人から無理やり勧められ 連れてこられたケースでは
問診が困難を極めます。

管理人が医師になった5-6年目のころ、
(事例詳細を変えています)

初診の方で
内科診察室に入ってきたものの、ずっと押し黙っている親子(親御さんが患者さんで 60代)の方々が来られ
管理人が
「どうされたのですか?」とお伺いしたものの、
「別に・・・」と言われました。

問診表には 一言 「吐いた」とだけ書かれてありました。

熱もなく、血圧も脈拍も呼吸状態も正常で「いつ吐かれたのですか?」「今も むかむかするのですか?」
「おなかは痛くないのですか?」と伺うも 押し黙ったまま。

同席した家族の方も別居中であったものの たまたま親御さんの様子を見に行ったところ
嘔吐のあとがあったので、そのまま連れてこられたとのことでした。

患者さんは会社員で現役で働いておられ、内服もなく
「職場の健康診断で異常を指摘されたことはありますか?」とお伺いしたところ 小声で「ない」と言われました。

「病院が嫌いなのですか?」という質問には スムーズに「はい」と言われ 「自分の意志ではなく
ご家族に連れてこられたのですか?」とお伺いしたところ、「はい」と言われました。

押し黙っていたご家族の方が 「最近おなかが出ているような気がして 心配です」と言われ
では写真をとりましょう。と申し上げ、CTを撮ったところ、息をのむような所見がありました。

患者さんご本人にCTの説明をし、大きな病院に紹介することを伝え
「本当に健康診断で異常はないといわれたのですか?」とお伺いしたところ

堰を切ったように 

身体の不調が続き、心配していたこと
お子さんの子どもさんを預かっており、お子さんの生活がかかっていたことから 
自分から病院受診を言い出せなかったこと

を告白され、

管理人をはじめ、ご家族も唖然として そのお話を
伺っておりました。

その日はたまたま外来に余裕があり、ゆっくりお話を聞く時間がありました。
コミュニケーションをとりにくい人ほど、丁寧に聞かないといけないのだということを
身に染みて感じた出来事で

この本を読んだときに、その日のことを思い出しました。

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男が痴漢になる理由(イーストプレス)

2017-09-02 16:22:26 | 
古森病院@福岡市博多区です。

今年8月に上記題名の本が出版され、
購入して読んで見ました。

男が痴漢になる理由
著者 斎藤章佳


著者は依存症専門クリニックで
加害者臨床を行っている精神保健福祉士ですが、
性犯罪を行った性依存症の男性患者さんのケア(再犯防止教育)も行っておられます。  

この本は 題名の痴漢行為に留まらず
強姦から盗撮まで 性犯罪行為を
犯した男性加害者の実態について
初めて書かれた本だと思います。

加害者は性欲のみに突き動かされ
性犯罪に走る訳ではなく

支配欲に突き動かされ
(コミュニケーションに問題があったり
ストレス解消が上手くない人が
性犯罪を犯した男性加害者には多い)

男性より腕力の弱い
女性や子どもに 支配欲の矛先を向ける。

彼らは強烈な自己コンプレックスの持ち主であり
コンプレックスの裏返しとして

男性より 女性、子どもは劣った存在であり
だから何をしてもよいと強固に思い込んでいる。

ターゲットは必ずしも服装の露出の高い
女性ではなく、露出が少なくても
抵抗したり、警察に突きだしそうにない
気の弱そうな女性や子どもに狙いを
定める。

更正プログラムを受け
性犯罪行為をしなくなり、失ったものは
と加害者に聞くと「生き甲斐」と
答える者が多く、問題の根深さが感じ取れる。

被害者も喜んでいた。
被害者から誘ってきた。

と発言する加害者男性は少なくないが
被害者がそう思っていると思いこまないと
自分の犯罪行為を正当化できないため
自ら認知を歪ませている。

など、日本に於ける男性による性犯罪行為に対する
誤解と解決法について 沢山の
示唆を与えてくれる優れた本だと思います。

ちなみに管理人は、今回
性犯罪の定義が変わったことで
今まで水面下に埋もれていた
女性加害者による性犯罪が表面化する可能性が
否定できないと考えています。

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