伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

法廷通訳人

2023-08-09 23:57:25 | ノンフィクション
 大阪地裁等で刑事裁判の韓国語の法廷通訳人を務める著者が、自分が経験した事件での法廷通訳の実情、裁判官、検察官、弁護人、被告人、その親族、被害者、傍聴人などの様子を描いたノンフィクション。
 弁護士の目には見慣れた(といっても、私はもう刑事裁判は引退状態ですので、大昔の旧聞に当たりますが)法廷の様子が、通訳人の目から見るとこういうふうに見えるのかということに興味を惹かれました。
 最後に紹介されている「げんこつで殴って金品を盗ろうとしたがかなわず、その結果相手に加療約一週間の怪我をさせた」(250ページ)という強盗致傷事件。著者が法廷通訳を務めるようになって数年が過ぎていた(248ページ)というのに、著者が強盗致傷罪の法定刑(当時は無期または7年以上の懲役)も、執行猶予がつけられない(執行猶予は3年以下の懲役でないとつけられず、法定刑が7年以上の懲役だと酌量減軽しても3年6月以上の懲役なので執行猶予にできない)ことも認識していなかったということに驚きました。法廷通訳の仕事は法廷での発言をただ通訳することなので、法律を勉強することや法律の内容を理解していることは求められていないとは言えますが、仕事としてやっていて、そういうことを知ろうとしないものなのでしょうか。
 私自身は、通訳を頼んだ事件は1件しか経験しておらず、その事件がこの件ととてもよく似た韓国人青年による
強盗致傷の捜査段階の弁護でした(その内容はこちら)ので、とても感慨深く読みました。


丁海玉 角川文庫 2020年5月25日発行(単行本は2015年12月)



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2 コメント

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Unknown (樹)
2023-08-13 18:08:35
こんばんわ
法廷通訳人で遠い昔のことを思い出しましたよ。
日本では法廷通訳人さんは資格がないと出来ないのですか?我が州では刑事事件のような裁判時には通訳の仕方で進み方も違ってくるので、法廷通訳人資格のみ適用されます。

わたくしも日本から来たばかりの日本人男性の交通違反裁判で通訳をしたことがありました。法廷通訳人の資格は不要ですので、民間人でも通訳をすることは可能なのです。

交通裁判は流れ式裁判ともいいまして、次から次へと裁判が行われ、違反チケットを切られ交通ルールを1から学ぶクラスにでた証明書と罰金をはらえば違反が帳消しなる裁判なんですが、わたくしが担当した日本人男性は
受講すればこれ以上裁判が続くことはないからここで承知したほうがいいと、伝えても自分は悪くないと
それを通訳してくれと、参りましたよ。裁判をこれ以上続けても勝ち目ない人なんですけどね。ここでむかつくわけにはいかないので(^^ゞ、この続きの裁判ではわたくしは通訳できませんので有料の法廷通訳人を探す必要がありますよと言ったとたん、受講して罰金を払いますと、
どこのくにでもたとえ交通ルール違反裁判でも、長期的にきりますものね。お金の心配もでてくるのは目に見えてますしね。

裁判官がわたくしをみながら男性にいいました。あなたはとても良い通訳をみつけましたね、親指をたててくれて、でもそれは男性には伝えませんでしたけどね。これが有料通訳人ならこんな助言はしませんよ。法廷通訳人ではないわたくしとてその裁判では名前と住所などを記入済させらせましたが。
コメントありがとうございます (伊東良徳)
2023-08-13 20:28:29
樹様

コメントありがとうございます。
日本でも法廷通訳は資格は要求されていません。民間団体が検定試験をして、将来的には国家資格にして欲しいと働きかけてはいるようですが。

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