伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

中等部超能力戦争

2007-06-30 11:42:59 | 小説
 気に入らないことがあると遠くの壁を揺すったり電球を割ったりするちょっとせこい超能力のある少女をめぐる学校内などでの人間関係を描いた小説。
 超能力は、小道具にはなっているのですが、友人間での恐れや不快感、村八分を引き起こすきっかけの位置づけで、それで何かが解決されるような展開にはなりません。でありながら、人間関係を左右する部分になっているので、友人間の機微が描かれていても、現実へのフィードバックがちょっと希薄。そのあたりの中途半端な感じと、最後にちょっとしたひねりがあるけどだからそれでこれまでのストーリーがうまく説明できるわけでもない不完全燃焼感から、今ひとつ読み終わってスッキリした感じにはなれませんでした。小清水しずえのジコチュウぶりと、はるか・トモキ・戸部の友好関係はわかるので、そういう青春小説としては読めます。むしろ「超能力」をダシにしない方がよかったかも。


藤野千夜 双葉社 2007年5月30日発行
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解決!いじめ撃退マニュアル

2007-06-29 07:29:53 | 実用書・ビジネス書
 児童虐待等の問題に取り組むNPO「少女と少年の町」のグループが書いた、いじめ対策本。
 執筆者により温度差がありますが、基本的には教師向けのもので、タイトルから期待されるようないじめの被害者側からのアプローチは少なく、むしろ教師サイドの意識改革によりいじめを根絶しようという感じの本。割れ窓理論的な早期の介入と厳罰(信賞必罰だと言っていますが)を強調する部分が多く、実行したらかなり厳しい管理教育になりそう。
 自分がして欲しいと思うことを相手にもしなさいという黄金律は何度も強調されていますし、親が言行一致を実践し自分の子どもの未来像として描いている誠実な人間にあなた自身がなることだという指摘(190頁)も正しいと思いますし、叱った回数の4倍ほめよう(174頁)というのも言ってはいます(いずれも実践は難しいですが)が、全体のトーンは違うような気がします。
 152頁からの被害者の子どもや傍観者の子どもの側からのアプローチが少し読ませどころでしょうか。「撃退マニュアル」の日本語タイトルに沿うのはここくらいですし。これもなかなか実践は厳しそうに感じますけどね。


原題:NO ROOM FOR BULLIES
ホセ・ボルトン、スタン・グリーブ編 訳:楡井浩一
徳間書店 2007年4月30日発行 (原書は2005年)
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営業ですぐ結果を出す人の話し方

2007-06-28 07:52:47 | 実用書・ビジネス書
 訪問販売のセールストークのテクニックの本。
 著者のテクニックを要約すると、まず最初に会話の主導権を取る。そのためには相手より先に話し始める、口数多く話す。最初に相手を3つ褒め、その後は相手に話させて相手の情報を収集する。商品説明ではその商品を使うことで得られる客のメリットと未来像に重点を置き、客が感じるであろう不安は先回りして取り除く。クロージングでは100%契約が取れると信じ切ってクロージングする、今でなければならない理由・この成果を出すためなら他の方法でもこれだけの金額がかかることを説明する。やった場合のすばらしい未来とやらなかった場合の悲惨な未来を語る。客のネガへの対応では、その通り、私も最初はそう思いましたなどの相手が予想していない答から切り返して主導権を握る。口数多く話すことで、この営業にうっかり何か言ったら5倍10倍言い返されるに違いないという印象を植え付けておくと、客がクレームを言ってこないなど・・・。
 私は商品を売りつける側ではないから、営業の参考にはなりませんが、売りつけられる側で訪問販売の販売員のトークを予測するには参考になります。でも15分で情報収集、20分で商品説明、15分でクロージングがもっとも短時間で納得していただける商談(37頁)って、セールスに50分もつきあう気になる人ってそんなにいるのかね。私はとても無理。やっぱり関心を示さないことと、それ以前に会わないことでしょうね。


吉野真由美 かんき出版 2007年3月5日発行
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となりのクレーマー

2007-06-28 07:04:39 | 実用書・ビジネス書
 元西武百貨店のお客様相談室長が書いたクレーマーとの交渉についての本。
 クレーム対応については、非があるときは真摯に謝罪する、客の話は感情を抑え素直に聞く、対応は迅速にする、しかし筋は曲げずできないことはできないと言う、特に金を払って解決しないというようなことで、さほど目新しくはありません。具体例で著者が対応している様子を読んでいても、そこまでがまんできないし、そんなに時間をかけて対応してられないと感じてしまいます(まあ、クレーム対応が仕事で給料で働いてるから時間をかけられるんでしょうし)。
 むしろ、紹介されているクレーマーの実例が読みどころでしょう。
 著者が最後のコラムで「だいたい『誠意を見せろ』とは、本来ヤクザが使う言い方です。このごろは素人も平気で使います。いやな時代になりましたね。」と嘆いています(193頁)が、全く同感。


関根眞一 中公新書ラクレ 2007年5月10日発行
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毒草師

2007-06-27 07:18:39 | 小説
 謎の毒草師御名形史紋(みなかたしもん)が薬と歴史の知識と推理で、東京の下町の旧家の豪邸を舞台に度々起こった1つ目のオニを見たという証言と離れの密室での失踪事件を解決するミステリー。
 語り手役は別の雑誌編集者で、そのライトノベルっぽい語り口と、御名形のキャラ設定のキワモノっぽさがどうもアニメイメージで、終盤で御名形が関係者を集めて謎を解いていく設定もあわせ、「名探偵コナン」を思い起こしました。布石の打ち方、最後の展開はよくできていて、推理系のエンタメとしてはかなりいい線行っているかと思います。私としては、3件も離れでの閉じこもり・密室失踪事件が続いているのに離れの戸が外から開けられない構造のままにしておく訳ないだろというのと、柊也のダイイング・メッセージ(104頁)が書きかけの文字でも手で書いた以上どっちからどっちに書いたかわかるだろという点は、突っ込みを入れたくなりますが。
 伊勢物語の解釈と業平の歌の解釈に独自の主張があり、「世の中に絶えてサクラのなかりせば」のサクラは藤原の良房の娘(文徳天皇妃)をさす(199~206頁)とか、妥当かどうかはおいても博識ぶりに感心しました。


高田祟史 幻冬舎 2007年4月25日発行
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擬態 カムフラージュ

2007-06-26 06:47:31 | 物語・ファンタジー・SF
 異星生命体とのコンタクトと愛を描いたSF小説。
 2019年にトンガ海溝海底で発見された小型トラック程度の大きさで5000tもの重量がある(プルトニウムの3倍以上の密度がある)謎の物体を引き上げてサモアで分析の試みを続ける科学者たちとそれに介入しようとするCIA、1931年にアメリカに上陸して人間の姿になりさまよい続ける変身可能な不死の異星生命体<変わり子>(チェンジリング)、古代から様々な人間の姿で戦闘・虐殺を続ける変身可能な異星生命体<カメレオン>の3者で場面切り替えをしながらストーリーが進んでいきます。
 謎の物体の正体と、<変わり子>の変転とその過程での人間への態度の変化が中心となっていきます。謎の物体の正体の解明は遅々として進まず、また<変わり子>も中盤まで比較的残忍というか人の命に冷淡です(前半でバターンの死の行進が取りあげられ日本軍の残忍さがわりと長く語られているのが印象的です)。終盤になって急展開し、最後はある意味でわかりやすいパターンに落ちついていますが、謎の物体の正体の解明としては、あれだけ引っ張った挙げ句のものとしてはちょっと欲求不満が残るかも。
 <変わり子>という訳語も含め翻訳文には私は今ひとつなじみにくく感じました。


原題:CAMOUFLAGE
ジョー・ホールドマン 訳:金子司
早川書房 2007年5月15日発行 (原書は2004年)
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警察の表と裏99の謎

2007-06-25 07:55:50 | ノンフィクション
 元警察官による警察関係の世間話。
 1項目2ページ程度ですから、ディープな話はほとんどなく、タイトル倒れの感あり。ディープな話としては、中国の反体制活動家グループが日本で北京政府批判の映画の上映会をするときに外務省に保護を求めて断られ、公安警察がそれを受けて反体制活動家を尾行する諜報員を排除して安全を守り、判明した中国政府の諜報員のリストと反体制活動家のリストを手に入れ、それをアメリカに渡したとか、中国の諜報員に実力行使して険悪になったのをCIAが仲介して手打ち式をした(95~99頁)というのが興味を引きました。捜査2課長は政界への影響力を持つ(65頁)という話も。
 当然著者の視点は警察側からのもので、弁護士や被疑者・被告人、さらには検察官に対する見方には、私の目からは疑問に思えるところが多々ありますが、警察官はこういう見方をしてるんだなあということを知る意味でいいかなあと思います。


北芝健 二見文庫 2007年4月25日発行
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なぎさの媚薬4 きみが最後に出会ったひとは

2007-06-25 07:25:20 | 小説
 渋谷をさまよう謎の娼婦なぎさと出会った男は過去に戻って自分が過去に関わって不幸になった女を救うことができるという枠組みで、50代の週刊誌ライターが5歳の時に手放しその後AV女優となって自殺した娘と再会する話と、なぎさ自身の物語の2編が入ったシリーズ完結編。
 1~3は読んでませんでしたし「週刊ポスト」連載なので不安には思いましたが、「重松清」のネームバリューで子どもに読ませるかと思って借りました。念のため子どもが読む前にチェックしたら、まるっきりポルノ小説でした。なぎさが娼婦で、過去に戻るために必要な媚薬が男自身の精液となぎさの愛液の混合物で、4巻第1話で娘がAV女優というのは、別段必然ではなくて、週刊誌連載で毎週濡れ場を作るための苦心の設定なんでしょう。
 過去に戻れるけど自分の人生は全く変えられない、1人の女性を救える(かも知れない)だけという設定は、小説の設定として秀逸だと思います。そこから導かれる、自分自身も忘れていた過去への悔い、それを目の当たりにしながら自分の自由には動けないもどかしさ、愛した女性をいくらか救える喜び、相変わらずではあるものの少し希望を見いだしている自分といったあたりの描かれ方が読ませます。
 ただ、露骨に東電OL殺人事件をモデルにしたなぎさの設定や鬼畜のAV監督ソドム中西とかアイドル「ユッキー」の自殺とか実在の人物・事件を借りてテキトーに粉飾するやり方は、いかにも安っぽくて下品でダーティーな感じがしてなじめません。アイディアはいい線で、もっと別の書き方をしたらいい作品になったんじゃないかと思います。


重松清 小学館 2007年6月4日発行

 作品とは関係ないんですが、UPしてすぐにアダルト系や商業系のトラックバックや勧誘アドレス付きのコメントが付くことが増えています。このタイトルだとまた中身に関係なくそういうトラックバックやコメントが予測されます。見つけ次第断りなしに削除しますけどね。
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「朝がつらい」がなくなる本

2007-06-24 08:36:09 | 実用書・ビジネス書
 寝起きが悪い人のための、寝付きをよくしてぐっすり眠り朝スッキリ起きるための方法を解説した本。
 私は、仕事をするようになって朝は自然に起きられるようになりました(やっぱり責任感ですね)から自分はもう必要ないんですが、子どもが朝苦手なもんで手にしました。1時間くらいで読めるお手軽本です。
 基本的には深い眠り(ノンレム睡眠、除波睡眠)は90分サイクルの2~3回だけという話と、それでも必要な睡眠時間は個人差が大きいという話は、よく聞きますが、大切。ノンレム睡眠では体は起きているけど脳は眠っているのに対しレム睡眠では脳は活動しているけど筋肉の緊張はほとんどなくなり脱力した状態(116頁)で、レム睡眠からいきなり覚醒すると筋肉が急には動けず金縛りになる(132頁)というのは初めて知りました。それにしても馬や牛の睡眠時間は2~3時間、イルカの睡眠時間は0時間(110~112頁)って本当?


梶村尚史 知的生きかた文庫(三笠書房) 2007年6月10日発行
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核爆発災害

2007-06-24 07:40:35 | 自然科学・工学系
 広島、ビキニ、セミパラチンスクでの核爆弾使用・核実験の事例を元に被害の範囲を特定し、現在東京に核攻撃があった場合をシミュレーションして被害を減少させる対策を論じた本。
 著者は、科学的な検討ということを何度も言っていますが、元にしている広島やチェルノブイリでの被害者調査の限界(対象の漏れ・偏りや病状・疾病の原因把握の限界)や放射線の確定的影響(急性症状)のしきい値(それ以下の線量では症状が生じないとされる被曝線量)が元々一定確率の例外を想定していること(従ってしきい値未満の線量でも症状が出る場合があること)への言及が全くありません。それで広島の原爆投下では爆心地(グランドゼロ)から3km以遠では放射線量は無視できるほど小さい(152頁)とか放射線災害は概して半径2km以内(112頁)とか、1シーベルト未満では急性症状は出ない(164~167頁等)とか、症状からの線量推定を断定的に述べたり(12~13頁、26~27頁、70~71頁等)、第5福竜丸船員の健康被害は放射線の影響ではない(77頁等)とか言っています。原爆症認定で被害者を切り捨てる厚労省や事故の度に放射線による影響はないと言いたがる原発推進派と同じ姿勢に読めます。原爆症の裁判では、そういう爆心地からの距離と被曝線量の関係、しきい値を絶対視する考え方の誤りが明らかにされてきているのですが。
 この本で新たに認識したのは、広島・長崎のケースのような空中爆発の場合は、核爆発による核分裂生成物は大部分高温・高熱のため遥か上空に吹き上げられて拡散し地上に降下する割合が少ないのに対して、地表での核爆発の場合は核分裂生成物(「死の灰」。著者はこの言葉を嫌って「核の灰」と記載していますが)が地表の粉塵(爆発による破砕物)と混合して大量に地表に降下するため放射能汚染・被曝量がかなり多くなり風下にはかなり遠方まで致死量の被曝があることです。このこともこの本の全体の書き方からすると、広島での被害が相対的に小さかった、爆心地から離れたところでの被爆者の健康被害は放射線によるものではないと言いたいがためのようにも読めてしまいますが。


高田純 中公新書 2007年4月25日発行
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