伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

知らないと恥をかく世界の大問題12 世界のリーダー、決断の行方

2021-12-31 00:04:09 | 実用書・ビジネス書
 現代の世界各国の政治の問題点を取り上げて論じるシリーズの12冊目。
 トランプ政権からバイデン政権へと政権交代したアメリカの現状と今後、イギリスのEU離脱をめぐる経緯と今後、プーチン政権の現状と今後、アラブ諸国から見放されつつあるパレスティナとイランをめぐる確執でさらに混沌となっている中東情勢、覇権主義志向を強める中国、安倍政権下の日本などについて論じています。コロナ対応では、評価を上げたアンジェラ・メルケル(ドイツ首相)、ジャシンダ・アーダーン(ニュージーランド首相)の国民への呼びかけを紹介し(259~263ページ)、それに引き換え…と論じています。まぁ、いうまでもないことですが。
 日本のマスコミは、基本的に中国人の名前は漢字で日本語読み、韓国人の名前は原音読みにしています(例えば「NHK放送ガイドライン2020」24~25ページでは「中国・台湾の地名・人名などは、原則として、漢字で表記し、日本語読みとする」「韓国と北朝鮮の地名・人名・企業名などは、原則としてカタカナで表記し、原音読みとする」とされています。韓国人は原音読みにしたのは、自分の名前を日本語読みしたのは氏名権侵害だと在日韓国人牧師が裁判を起こしたからなんでしょうけど)。この本でも、文在寅大統領は「ムンジェイン」とルビを振り(193ページ)、習近平(シーチンピン)首相は「しゅうきんぺい」とルビを振っています(44ページ)。元NHKの著者は、退職後もNHKのやり方ということかもしれませんが、「エイブラハム・リンカン(現在の教科書では、リンカーンではなく、現地の読み方に近い表現で表すことが増えています)」(69ページ)というのなら、原音読みにした方がいいんじゃないかと思います。教科書が変わるまで待つことはないんじゃないかと…


池上彰 角川新書 2021年7月10日発行
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Q&A 誰でもできるブラック企業対策

2021-12-30 00:08:14 | 実用書・ビジネス書
 労働問題について、シンプルなQ&Aと若干の解説、マンガ・イラスト等で解説した本。
 わかりやすさを旨としているため、具体的にどういう場合が闘えるのか、どうやって闘うのかが今ひとつわからないといううらみはあります。労働者に闘えるよ、諦めるなと励ますのが目的なので、最高裁判決の読み方や紹介する下級審裁判例もちょっと楽観的に思えるところもあります。この本を読んで、自分の場合も当然に勝てるはずと思い込み言い張る相談者の姿が目に浮かびますが、まぁ、闘えば勝てる労働者にまずは諦めずに弁護士に相談してもらう方が優先ですから、それは、この本の性格上、いいかなと思います。
 他方で、有期契約の雇止めで、不更新条項が入った更新契約書に署名してしまった場合(170~171ページ)については、逆に悲観的な書きぶりに思えます。もちろん、気をつけようはいいんですが、不更新条項を見て拒否したらその時点で雇止めされるリスクがあるから仕方なく署名する労働者は少なくないわけで、そうなったときにも、自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的理由が客観的に存在するか(28~30ページ)で闘う余地があることは、今どきは、指摘しておくべきだろうと思うんです。
 なお、わかりやすさ・読みやすさの観点では、労働基準法や育児介護休業法の長々しい条文をそのまま載せているところは、どうかなぁと思います。


明石順平編著、ブラック企業被害対策弁護団監修 集英社インターナショナル 2021年10月31日発行
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観戦&プレーで役に立つ バドミントンのルール 審判の基本 [改訂新版]

2021-12-29 01:04:29 | 趣味の本・暇つぶし本
 公益財団法人日本バドミントン協会監修のバドミントンのルールやストロークの基本、審判のコール等について説明した本。
 私がバドミントンをしていた頃(1970年代!)とは、得点方法が大きく変わっています。昔はサーバー側しか得点できませんでしたし、ダブルスでは「セカンドサーブ」もあってサーバー側は2回負けないとサーブ権を失わないというルールでしたが、今はラリーポイント制でレシーバー側もラリーに勝てば得点できるようになりました。バドミントンは他の競技と違って攻撃的なサーブができず、サーバーは有利とは言えません。レシーバーが得点できるとなると、サーバー側にはプレッシャーが大きくなりむしろ負担になります。また、ラリーポイント制になると、ゲームの進行が格段に早くなります。それもあってか、昔は15点ゲームが基本でしたが、今な21点ゲームが基本となっています。そして、サービスのルールでも、昔はインパクト時点でシャトルがウェストより下(ウェストの上で打つと「オーバーウェスト」)、かつ手首より下(手首より上で打つと「オーバーハンド」)でなければなりませんでしたが、今は床から1.15m以下になっているそうです。
 ストロークの紹介では、ドロップの打ち方が「カット」と「リバースカット」の2パターンで終わっています(100~103ページ)。これはどちらもラケットの親指側の面でシャトルをカットする(リバースカットは手首を返してその面を体の外側に向ける)ものですが、私たちがやっていた頃にはカットのフォームのまま裏面でカットする(ストレートのフォームでクロスに落とし、クロスのフォームでストレートに落とす)というテクニックを弄していました(決まると快感!)。そういうのは全然紹介されていませんが、やる人いないんでしょうか。


日本バドミントン協会監修 実業之日本社 2021年10月10日発行
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ダチョウはアホだが役に立つ

2021-12-27 21:37:00 | 自然科学・工学系
 日本で500羽、アリゾナで3000羽のダチョウを飼っているという著者が、ダチョウの生態と、ダチョウから作った数多の製品を紹介する本。
 「ダチョウはアホだが」というタイトルに関連するのは、家族(コロニー)のメンバーを識別していない(入れ替わっても気がつかない)、人が乗っても気にしない、毛繕いをしない(汚れても気にしない)などです。アホというのではなく、鷹揚・寛容と評価してあげてもよさそうな気もしますが。
 ダチョウの特性は、鈍感なこととケガをしても死なない/すぐ治る免疫力の強さだとかで、ものすごいスピードで抗体を作り、それが巨大な卵に移行するそうです。そうすると、ウィルス等への抗体製造が迅速かつ安価でできるということで、それが「役に立つ」となって、著者は抗体入りマスク、抗体スプレー、抗体入りグミ、抗体入りだし醤油、抗体入り化粧品、薄毛抗体配合シャンプー、抗体入り飴ちゃん、抗体入りサプリなどさまざまな製品を商品化済みだそうです。
 軽いタッチで難しくなく書かれていますが、学習や教養よりも、著者の商売・商品紹介の色彩が強いのが難点です。
 高卒で工員となったが、一念発起して大学に行って獣医となり、ダチョウの卵による抗体の大量生産を売りにしてたくさんの企業を立ち上げて商売に励みながら、今は京都府立大学の学長という著者の人生・経歴の方が、やり直し人生物語めいて読みでがあるかも知れません。


塚本康浩 幻冬舎 2021年3月25日発行
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久遠の島

2021-12-26 21:03:55 | 物語・ファンタジー・SF
 世界中の書物のコピー/アバターを見ることができる久遠の島がそこで暮らすジャファル氏族もろとも海の藻屑とされ、その惨禍を「誓いの書」とともに免れたシトルフィとヴィニダルらが、久遠の島を破壊した後も「誓いの書」を追い続けるサージ国の王子セパターから逃げつつ復讐を図るファンタジー。
 著者の出世作「夜の写本師」のエピソード0の位置づけのようですが、7年前に読んだ本なのでもう記憶がつながらないためかもしれませんが、ラストがそう書いている以上にはその点はよくわかりませんでした。その世界観、指輪物語風でもあり、上橋ワールドより少し怨念をはらみ、ゲド戦記に近いタッチ、羊皮紙の本へのこだわりと愛着、ヴィニダルの心の中に伸び成長する黒い枝などに、共通のあるいは近いものを感じさせるのですが…
 書き出した災厄と怨念の割には比較的軽やかな結末は、救いと見るか、欲求不満を残すか。好みの分かれるところでしょう。


乾石智子 東京創元社 2021年10月22日発行
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続 横道世之介

2021-12-15 23:56:22 | 小説
 大学を一年留年して卒業し、バブル最後の売り手市場に乗り遅れて52社受けて全て不採用となってバイトとパチンコで食いつないでいる24歳のフリーター横道世之介と、同期生で証券会社に就職したコモロン、コモロンの部屋から双眼鏡で覗きをやってて見つけた「目が離せなくなるほどの美人」のシングルマザーで世之介らがストーカーまがいの訪問中に子どもがビー玉を飲み込んだところを助けたことがきっかけで世之介とつきあうことになった日吉桜子、パチンコ屋で新台を取り合った縁で知り合った鮨職人になりたい居酒屋の女性店員浜本らの1993年4月からの1年と、東京オリンピックのマラソンレースに沸く2020年の東京を交差させて描いた青春小説。
 前作では大学1年生の1年と、友人たちが駅で線路に転落した客を助けようとして死んだ世之介を振り返る現在を交差させていましたが、その6年後の写真に目覚めつつある世之介を描いているところを見ると、作者が世之介の死を実在の新大久保駅での事件とダブらせるならそこまでも6年。もう1作くらい続編を書くつもりでしょうか。
 書かれた頃には東京オリンピックが1年延期になるとか、マラソンは東京では行われないとか、到底想像もできなかったでしょうから、作者には罪はありませんが、銀座や国立競技場でのマラソンシーンを感動的に描かれてもなぁ…


吉田修一 中央公論新社 2019年2月25日発行
「小説BOC」連載
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朔が満ちる

2021-12-14 00:36:37 | 小説
 酔って暴力を振るう父親に対し、13歳の時斧で頭を割って父親を半身不随にし、その後伯母の家で暮らして、今は東京で建築写真家の助手をしているものの時折父親を殺す夢を見てうなされている横沢史也が、かかった整形外科で看護師をしている生まれてすぐ施設前に捨てられ施設で育った過去を持つ梓と名乗る女と出会い、目を背けてきた過去と向き合っていくサバイバー青春小説。
 底辺層でもがき懸命に生きる人・カップルの姿を掬い出すのがうまい作者だと、思う。そしてそういう人たちが、手放しでは喜べないとしても前向きになって終われる話は、どこかホッとする。そういう読後感を持ちました。
 「不幸な家のパターンってどうして似ているんだろ。幸福ほどバリエーションがないのがまた不幸だよね……」(125~126ページ)という梓の台詞は、アンナ・カレーニナ(「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」)への異議申立なんでしょうね。目立たせずにさらっと入れているのに好感を持てました。


窪美澄 2021年7月30日発行 朝日新聞出版
「週刊朝日」連載
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コロナ狂騒録

2021-12-13 00:16:33 | 小説
 「チーム・バチスタの栄光」に始まる「田口・白鳥シリーズ」とも「東城大学シリーズ」とも「桜宮サーガ」とも呼ばれるシリーズの体裁と登場人物を使った新型コロナウィルス感染拡大とそれに対する安倍政権と官僚・医療専門家たちの対応のまずさ・無策ぶりをあざ笑う政治小説「コロナ黙示録」の続編。
 安倍晋三の辞任から東京オリンピック開会までが描かれています。作者としては、オリンピック中止を期待して書き続けてきたがどうも強行されそうだというところで見切って出版したというところでしょうか。これも、菅首相の辞任直前に出版された(前作は安倍首相の辞任直前に出版された)のは、狙ったものだったのでしょうか。
 前作よりもさらに東城大学関係はどうでもよくなった感じで政界官界の話に集中しています。
 登場する人物の中で、白鳥の暗躍の一つの場である「政策集団・梁山泊」の総帥村雨弘毅の描き方に疑問を感じます。作者は、村雨を浪速府で医療最優先の行政システムの構築(医療立国)を目指した浪速の風雲児と位置づけ、安倍政権打倒のために活動し、公文書偽造を命じられて自殺した官僚の無念を晴らすために「梁山泊」の活動をする人望がある元浪速府知事と描いています。村雨は、「ナニワ・モンスター」(2011年)からの登場人物だそうで(私は読んでいません)、その経歴から橋下徹を指していると一般に受け止められています。ところが、作者は前作の「コロナ黙示録」以来、「弁護士で、人気テレビ番組『注文が多い法律事務所』出演で知名度を上げ、2008年に第17代浪速府知事になり、2010年に白虎党を結党して、代表に就任」した(64ページ)というより明確に橋下徹を示す人物「横須賀守」(前作・コロナ黙示録では「橋須賀守」でしたが…:「コロナ黙示録」43ページ、246ページ等)を登場させた上で浪速府の医療を破壊し府民を騙した政治家としてこき下ろしています。期待を寄せて持ち上げた人物が、裏切って変節・堕落したり、あるいはその人物はもともと信を寄せるに足りない人物で以前の評価が誤っていたという場合、作家はどうすべきなのでしょうか。以前書いたキャラクターは維持したままで別人物だったことにするというのは、スッキリしない感じがします。ここは村雨が実は見下げ果てた人物だったとして悪役で登場させるか、もう登場させないかではないかと思うのです。そこを過去に持ち上げた幻想のキャラは架空の人物にすり替えて登場させ今でも理想的だとするのは、無理が出てくるように思えます。結局、前作でも今作でも、「梁山泊」は重要な位置づけがあるように見えながら、実際には大したことは行わず、別に梁山泊も村雨もいなくても作品が成り立つように、私は思います。作者の村雨へのこだわりは、空回りし、何のために村雨が出てくるのかわかりません。作者はさらに続編を書いてそこでは村雨が何かを成し遂げるという構想を持っているのかも知れませんが。


海堂尊 宝島社 2021年9月17日発行
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コロナ黙示録

2021-12-12 23:34:49 | 小説
 「チーム・バチスタの栄光」に始まる「田口・白鳥シリーズ」とも「東城大学シリーズ」とも「桜宮サーガ」とも呼ばれるシリーズの体裁と登場人物を使った新型コロナウィルス感染拡大とそれに対する安倍政権と官僚・医療専門家たちの対応のまずさ・無策ぶりをあざ笑う政治小説。
 医師である作者の目から、政治家と官僚の無能ぶりとともに口先では国民の命を守るなどと言いながらその実医療体制の充実や感染拡大防止のための実効的な措置、ワクチンの開発などには精力も予算も振り向けず、お友達と大企業の利益のためにだけ予算を使っている様子が辛辣に描かれていて、なるほどなと思いますし、安倍政権と維新が嫌いな者にとっては溜飲が下がるところはあります。検査・免疫・ワクチン関係の話も勉強になります。
 また、安倍・菅への忖度で提灯報道ばかりのマスコミの現状を見るとき、このような作品が安倍晋三の首相在任中に(何とか間に合って)出版されたことは、それ自体快挙なのかも知れません。
 しかし、小説としてみたときには、作者の年来の主張・悲願のAi (Autopsy imaging) (死亡時画像診断)の普及がコロナによる死亡の判定や診断に役立つという話がそろりと出ているとか、シリーズの登場人物を登場させてかろうじてエピソードは作って話は進めているというくらいで、中途半端感があります。Aiの利用の話は作者の情熱が下がったか飽きられていると自覚しているのかこの情勢下では不謹慎と受け止められると考えたのかでしょうけれど。
 作品の終わりが中途半端な感じがするのは、現在進行中のことがらを描いているためという面もあり、また中途半端な時期までの話にしたから安倍首相在任中に出版できたという面もあり、仕方ないかなと思いますが、それにしても、作品の中枢であるかのように扱った「政策集団・梁山泊」を解散するという理由とタイミングは、現実世界ではさまざまな要素で判断されることではありますが、小説の世界では全然スッキリしないし、ぶつ切れ・唐突感に満ち、説得力を感じません。


海堂尊 宝島社 2020年7月24日発行
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最新版 オールカラー 個人事業の経理と節税

2021-12-09 01:37:24 | 実用書・ビジネス書
 個人事業主が帳簿付や会計処理、決算書作成や確定申告をどうすればいいかについて解説した本。
 初歩的なところからイラスト・図表付きで複式簿記・帳簿付(仕訳:勘定科目)等を説明してくれていて、これまで読んだ本では一番わかったような気になれました。だからといって、自分でちゃんと帳簿をつけて来年から青色申告するぞと決意するには至らないのですが。
 仕入れと経費の区別は、それぞれの売上に関係があり粗利計算に使えるものは経費ではなく仕入れに仕訳してよいと説明されています(80~81ページ)。弁護士業務の場合、仕入れなんてないと思っていましたが、そう考えると、個別事件のために支出する費用は、仕入れと位置づけることができそうです。
 個人事業主が法人成りした方がいいかについての考慮事項として、ある程度の儲けがないとそもそものコストが高くなって損することにもなりかねないとか、個人より法人の方が税務調査を受けやすいと実務的なアドバイスもなされています(124ページ)。
 個人事業をやっていても、ああそういうことがあるのか(本当はそういうこともしなきゃならないのか)と気づかせてくれるところが多い本でした。


益田あゆみ監修 西東社 2021年8月10日発行(旧版は2016年1月)
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