ぶきっちょハンドメイド 改 セキララ造影CT

ほぼ毎週、主に大人の童話を書いています。それは私にとってストリップよりストリップ。そして造影剤の排出にも似ています。

Rの物語ー適応ー

2020-01-10 07:00:00 | 大人の童話
灰色をした石造りの倉庫は、六つの区画に別れ、風通しや日当たり、棚の大きさに合わせて、荷が積み分けられている。
倉庫長のダインは、荷の入った木箱に、納品先の記号を書いていた。
「あっ」
木の継ぎ目に引っ掛けて、チョークが折れた。
2秒とかからず、替えのチョークが差し出される。
「ありがとう」
隣の柱の物入れから、ルージュサンが取って来たのだ。 
荷の管理に回る時、ダインはルージュサンを隣に付けている。
それ以外は、一つ年上のサンと同じように、男達の補助をしたり、軽い荷を運んだりしていた。
教えた以上のことを読み取って、決して忘れない。
日焼けこそすっかり抜けて、白い肌をしているが、元船乗りだ。
見た目よりずっと足腰が強く、荷の扱い方も心得ていた。
「おい、サン!。昨日入った陶器、ルージュサンと一緒に奥の陳列棚に並べて。昼過ぎにお得意様が見に来るから」
「はいっ!」
同じ区画で、荷下ろしを手伝っていたサンが、威勢よく答える。
「こっちだ、こっち!」
少し偉そうに、腕を高く上げて先に行く。
「俺、左の箱を持つから、右のを持って。こっちだ」
サンは殊更に急いだが、ルージュサンはぴたりと付いて来た。
「その箱の中身、一番下の棚に並べて。俺は上の棚に並べるから。綺麗に拭いて、割らないようにだ」
サンはそう言って、乾いた布を放った。
今度こそ経験の違い訴えたかった。
記憶力で敵わないのは明白だ。
他で勝たなければ、「頭が足りないから『ルージュサン』じゃなくて『サン』」と、呼ばれかねない。
一つづつ取り出し、素早く丁寧に拭いていく。
と、、、手が滑った。
すぐ左に、ルージュサンがしゃがんでいる。
重い壺だ。
サンの悲鳴より早く。
"ゴン"
鈍い音がした。
続いて、
"ガチャンッ"
という、壺が砕ける音が、、、、しなかった。
代わりに、
「キャッチ」
と、明るい声がした。
ルージュサンが、床ぎりぎりで受け止めていたのだ。
「上手でしたよね。私」
笑顔で見上げているが、右の額がみるみる膨らんでいく。
近くにいた人夫達が、手を止めて集まって来た。
カイルが布を濡らしに桶に走る。
ー壺が無事なのは良かった。ただ、これは…ー
大人達が青ざめる中、ルージュサンが立ち上がった。
「すみません。しくじってしまいました」
申し訳なさそうな顔をしている。
「もう少し、早く動ければ良かったのですが、手元に気を取られ過ぎてしまって」
「何言ってんだ、お前っ」
サンが怒った。
「俺が悪いに決まってるじゃないか!『キャッチ』じゃないだろう!。傷は…無いな。でもこんなに腫れてる!!」
丁度目の前に来た額を、染々と見る。
カイルが、左手で濡らした布を瘤に当て、右手でサンの頭を後ろから叩いた。
「そうだ。お前が悪い」
我に返って、赤い顔で謝るサンに、ルージュサンが笑った。


「その瘤はどうした?」
帰宅の挨拶をするなり、渋い顔で子爵が聞いた。
「失敗しました。申し訳ありません。以後気をつけます」
額の右側が、鶏卵大に腫れ上がり、赤くなっている。
「痛むだろう」
「少し。でも大したことありません」
ルージュサンは笑顔を見せた。
「昔、船室にいた時に、いきなり船が大きく揺れて、同じ位の瘤を作ったことがあったのです。気が緩んでいるからだと、よってたかって怒られたんですけど、そこに入って来た船長の額に、もっと大きな瘤があったんです」
「それは皆、困っただろうね。私は昔、階段から落ちたことがあって……」
子爵は小さく笑いながら、子供の頃の話をする。
子爵に報告が入っていることを、ルージュサンは分かっていた。
そして、それに子爵が気付いていることも。
その上で、お互いの昔話を、楽しく語り合った。

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子爵の亡き妻が倉庫に来た時、その味気なさが気になりました。
そして目をつけたのが、内側にコルクを張った、木製のチョーク入れでした。
仕立て屋から貰った端切れでカバーを作り、飾りを時々替えることに。
それは次第に、夫人と使用人達の、無言のコミュニケーションツールになっていきます。

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チョーク入れをイメージしたウォールポケット







本体は百均で調達する予定でしたが、ふと橫を見ると、ジャストサイズのティシューボックスが。
ポケットの出前部分は本体の半分の高さ、
奥部分は半分+4cmの高さで、側面は斜めに。上部の角は丸みをつけて、カット。
キリで穴を開けました。

カバー部
材料
布 約40cm×40cm
糸 
但し、私はニットの端布を使った為、裏全面に、接着芯をアイロンで貼りました。

道具
裁縫セット
ミシン

本体から直接型を取り、口部分は3cm以上、それ以外は1cmの縫い代で裁断する。
口部分を内側にJ字型に折り返し、縫う。
キャップ部分とポケット部分を中表にして縫い合わせる。
本体に合わせて穴を開け、縁をかがる。

飾り部分 土台
土台部 表布,裏布,キルト芯 約15cm×15cm
花大用 表布,裏布,キルト芯 約10cmの円型
花小用 表布,裏布,キルト芯 約6cmの円型
面ファスナー 約20cm

1ー夫々を中表にし、キルト芯を重ねて、返し口を残して縫い合わせ、表に返す。
2ー返し口をかがる。
3ー土台に花を縫い付ける。
4ー面ファスナーを2つに切り、カバーと装飾部の土台の上下に付ける。

飾り
材料
端布
布用接着剤

1ー布を好みで切る。
2ー布用接着材剤で貼る。

接着剤によっては、直接触れない方が良いものもあるので、ご注意下さい。
端布で作るのがテーマでもあったので、縫い代、型紙の取り方等は、端布に合わせました。



























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