「父上、乳を搾りに行っていいですか?」
子爵は飲み込んだ筈の食前酒で、危うくむせるところだった。
咳払い一つで気を取り直し、問い返す。
「乳を、搾りたいのかね?」
「はい。カイルの実家に牛がいて、搾らせてくれるそうなんです」
ー馴染み過ぎだー
子爵は思った。
自分の時は、最初から経営者の補助として職場に入ったので、現場を把握するのに時間がかかった。
だから敢えて、ルージュサンを見習いにしたのだ。
ルージュサン一月足らずで「ルー」と呼ばれるようになり、三ヶ月たった今では、すっかり現場に溶け込んでいる。
けれど、適当な距離というのは、あるものなのだ。
「二人で行くのか?」
「いえ、倉庫係が五、六人、他の部署から四、五人の予定です」
特定の相手ばかりなら問題だが、全体とならまあいいだろう。
職場の輪を作るにも、悪くはないのかも知れない。
「そうか。では酒とハムでも、みつくろっておこう」
「よろしくお願いします」
ルージュサンは嬉しそうに、茸のキッシュを頬張った。
「皆で乳を搾るのかね?」
「はい。経験のない者は教わってから、乳搾り競争をして、次の日飴を持って来る者を決めます」
「ならば、飴の用意もしておこうか?」
真顔の子爵に、ルージュサンが不思議顔で答えた。
「願掛けですか?。私に勝ち目は無いです。諦めて下さい」
今度は子爵が意外そうに尋ねた。
「勝った方が奢るのかね?」
「そうです。それから藁を運んだり、お手伝いをさせてもらいます」
「カイルの親御さんは、具合でも悪いのかね」
「お父上が先日、腰を痛めたそうです」
「では、早い方がいいね」
「はい。次の休みに行ってきます」
ルージュサンの無邪気な笑顔に、子爵は一抹の不安を覚えた。
…………………………………………………………………………
昔、この地方は他国に侵略され、服従の証として、300頭の牛の首を、差し出すように言われました。
同時の名主が一計を案じ、張りぼての牛の首を差し出したことを記念して、毎年牛祭りが開かれるようになりました。
牛祭り参加記念の張り子の牛
子爵は飲み込んだ筈の食前酒で、危うくむせるところだった。
咳払い一つで気を取り直し、問い返す。
「乳を、搾りたいのかね?」
「はい。カイルの実家に牛がいて、搾らせてくれるそうなんです」
ー馴染み過ぎだー
子爵は思った。
自分の時は、最初から経営者の補助として職場に入ったので、現場を把握するのに時間がかかった。
だから敢えて、ルージュサンを見習いにしたのだ。
ルージュサン一月足らずで「ルー」と呼ばれるようになり、三ヶ月たった今では、すっかり現場に溶け込んでいる。
けれど、適当な距離というのは、あるものなのだ。
「二人で行くのか?」
「いえ、倉庫係が五、六人、他の部署から四、五人の予定です」
特定の相手ばかりなら問題だが、全体とならまあいいだろう。
職場の輪を作るにも、悪くはないのかも知れない。
「そうか。では酒とハムでも、みつくろっておこう」
「よろしくお願いします」
ルージュサンは嬉しそうに、茸のキッシュを頬張った。
「皆で乳を搾るのかね?」
「はい。経験のない者は教わってから、乳搾り競争をして、次の日飴を持って来る者を決めます」
「ならば、飴の用意もしておこうか?」
真顔の子爵に、ルージュサンが不思議顔で答えた。
「願掛けですか?。私に勝ち目は無いです。諦めて下さい」
今度は子爵が意外そうに尋ねた。
「勝った方が奢るのかね?」
「そうです。それから藁を運んだり、お手伝いをさせてもらいます」
「カイルの親御さんは、具合でも悪いのかね」
「お父上が先日、腰を痛めたそうです」
「では、早い方がいいね」
「はい。次の休みに行ってきます」
ルージュサンの無邪気な笑顔に、子爵は一抹の不安を覚えた。
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昔、この地方は他国に侵略され、服従の証として、300頭の牛の首を、差し出すように言われました。
同時の名主が一計を案じ、張りぼての牛の首を差し出したことを記念して、毎年牛祭りが開かれるようになりました。
牛祭り参加記念の張り子の牛
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/81/cf374f7d5a4a5f82bf65bfaab7035eaa.jpg?1579096263)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/e0/3ce5f907d0498ea3192365737c73b429.jpg?1579096263)
材料
粘土 一握り
サランラップ 20cm四方
セロハンテープ 少量
デンプンのり 一絞り
水
新聞紙 1枚
半紙 2枚
折り紙 1枚
他の折り紙 お好みで
道具
張り子を乗せる板
糊を塗る筆
糊を溶く器
1ー外し方を計算しつつ、粘土で型を作る。
2ー新聞紙と半紙を、繊維の方向に沿って約1cm幅に割き、2cm位の長さに千切る。
3ー型が乾いたらラップで包みセロハンテープで止める。
4ー糊に等量の水を少しずつ入れ、溶かす。
5ー3に2の新聞紙を、4を筆で塗りながら貼る。
6ー5に2の半紙を、4を筆で塗りながら貼る。
7ー乾いた6の紙部分をカッターで切り、型から外す。
8ー7の切れ目に2の半紙を4で貼り、全体を折り紙で包んで4で貼る。
9ー好みで目、耳等に、違う折り紙を貼る。
干支飾りにする場合は、目鼻に色紙を貼らず、服を着せても良いと思います。
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