五人が洞窟から出ると、女達はルージュサンと共に『歌い小屋』に向かった。
それは洞窟から三十歩ほど離れた東側に建っていて、広くはないが、中に厠も付いていた。
『歌い女』を中心に皆で正座し、他の女達で『春の喜びの歌』を歌う。
五番まで歌い終えたところで、女達は無言で立ち上がった。
小屋に『歌い女』だけを残し、外から丈夫な閂を掛ける。
その前では、洞窟の入口を大きな石で塞ぎ終えた男達が待っていた。
黙ったまま合流すると来た道を戻る。
その途中で、ムンと村長が抜けた。
『聞き小屋』に入り、五日後に『歌い女』を戸板に乗せて里に下ろすのだ。
その時、村人達も『家籠り』を止め、 里は春を迎える。
但し『歌い女』は、まず三日ともたない。
交替で耳を澄まし、歌声が途切れ次第、救けに行くのだ。
その役目は村人に選ばれたものが担う。
今回はオグも希望したが、長老に一蹴された。
水差しだけを与えられる『歌い女』と違って、小屋には炉が切ってある。
薪も水も食料もたっぷりと用意してあった。
それでも山に慣れたムンと、村長が相応しいとされたのだ。
二人が小屋に入ると、山頂から風が吹き下ろした。
北からの強い風だ。
村人達は追われるように、山を後にした。
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