
砂漠を抜けた町で宿を取ると、四人は二手に別れた。
オグとムンは近所のエクリュ村出身の者に、『神の子』の選定結果を知らせに。
ルージュサンとセランはオバニの元に、ベイを頼みに。
名残り惜しそうなベイを見たオバニが「お前と歩いたラクダは皆懐いちまう。いっそのこと、ラクダ飼いになったらどうだ?」と
笑った。
《夫婦で明日の朝見送りに来る》
ルージュサン達が宿に帰るなり、浮かない顔でオグが言った。
《そうですか。色々お疲れでしょう。まずは浴場でさっぱりしませんか?》
ルージュサンが提案した。
《賛成!行こう!》
セランが扉を開けて、さっさと歩き出す。
《そうしよう》
ムンも扉に向かう。
後を追おうとしたオグが、靴の紐が弛んでいることに気付いた。
前屈みになって紐を直すオグを、ルージュサンが待つ。
ムンはすぐに、セランに追い付いた。
《浴場が分かるか?》
《いえ、この町は初めてです》
ケロリと答えてセランは歩みを止めない。
ムンが目をしばたたいた。
《なぜこっちだ?》
《美味しい気配がするからです》
《大丈夫か?》
《はい》
平然と進むセランに、首を傾げながらムンが並んで歩く。
オグとルージュサンもすぐに追い付いた。
《ルージュ、お風呂どっち?》
母親に甘える三歳児のように、セランが聞く。
《この道は少し遠回りになりますが、夕食を取る店を選びながら、進むのに良いと思います》
そう言ってルージュサンはムンとオグを見た。
《何を召し上がりそうたいですか?》
《ね?》
セランがムンに言った。
《なるほど》
ムンが納得した。
砂と乾きに晒された体に、浴場の湯はどこまでも深く染み込むようだった。
着ていた服はそのまま浴場で売り、新しく服を買う。
数日滞在するなら洗濯も頼めるが、急ぐ時には便利な仕組みだ。
この旅でも入浴の度、使っている。
セランはその都度、服を洗うのが女性かどうかを確かめた。
「男に洗わせるくらいなら燃やします。それが勿体ないというなら、僕が食べます。ルージュの服ならきっと大丈夫。愛の力で滋養にしてみせますとも!」
そう叫んで驚かれたり、気の毒そうな目で見られたりすることもしばしばだった。
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