オーウェルが『動物農場』で揶揄しているのは何だろう?

2014年08月14日 | 日記

子どもはおはなしが大好きである。

わが家の5歳の娘も毎日毎晩、やれ絵本だおはなしだとうるさくせがむ。

面倒くさいので、あっという間に終わるお話を即興ででっちあげたり、昔話を大幅に省いて超特急で”おしまい”にすると、「そんなんじゃなーい!」「ちゃんとお話して!」と怒る。仕方がないので本を持ってきてちゃんと読むのだが、そうすると面白いのでついつい引き込まれてしまう。なのに娘は「どうして?」「○○ってなに?」といちいち中断するので腹が立つ…

私は物語・おとぎ話・ファンタジーの類が好きで、図書館の子どもコーナーの常連である。書店は子どもコーナーがあまりに少なく寂しいが、意外なところにおもしろい「おはなし」が隠れていたりする。先日岩波文庫のコーナーで英国の作家:ジョージ・オーウェルの『動物農場』を見つけた。

国家によって全てを支配される近未来を描いた『1984年』のほうが有名かもしれないが、(村上春樹の『1Q84』とは違うんです…)『動物農場』もけっこう人気なのではないかと思います。

人間に支配されていた動物たちが、団結して人間を打ち負かし、自分たちだけの動物農場をつくりあげます。最初は皆が平等でしたが、元々指導的な立場にあった豚たちは、徐々に他の動物たちを支配していきます。なんかおかしいな…と思いながらも豚に言われるまま、自分で考えることもなく豚の指示に従ううち、気づけば人間に支配されていたとき以上に生活は苦しくなり、しまいには理解しがたいほどの混乱と恐怖に陥っていきます。

ソ連のスターリン批判として有名な作品です。

1945年第二次世界大戦終戦の年にイギリスで出版されました。

オーウェル自身による、出版に対する考えが作品そのものにもまして興味深いので紹介します。4つの出版社から断られていますが、明確な主義主張によって断ってきたのは1社だけでした。当時のイギリスではソ連を批判することは良識に反することだったようです。

思想と言論の自由をおびやかす最大の敵は、政府筋による直接の干渉ではない。出版社や編集者がある種のトピックスを印刷しないでおこうとする場合、それは訴えられるのが怖いからではなく、世論が怖いからである。英国における文章の検閲で気持ちが悪いのは、それが主として自発的なものだという点である。特に政府が禁止をしなくても、評判の悪い思想を黙らせ、不都合な事実を隠してしまうことができる。世界的に重要でセンセーショナルなニュースが、英国のメディアから締め出されてしまうことがある。その理由は政府の介入のためではなく、そうした事実にふれるのは「まずい」という世間の暗黙の合意のゆえなのである。そのときに人気がない意見はどのメディアであってもまともに聞いてはもらえない。そのときにまかりとおっている意見というのは、自発的なものでありどこかの圧力団体の行動によるものではない。自説を曲げるように直接圧力をかけられたわけでもないのに、リベラルな作家やジャーナリストたちから知的な批評が期待できない。ごく当たり前の率直な意見さえ望めない。非常に憂慮すべきことである。

イギリスとは島国ということ以外にも共通点があるようだ。

この本は共産主義への批判とされているが、というかそういうふうに利用されてしまったが、オーウェルが揶揄しているのは共産主義そのものではないし、今この本を読んだら多くの人が現在の日本を思い浮かべるのではないかと思うのだけど。

 

 

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