博報堂の原田曜平さんが月刊誌『潮』2月号の「アジア”若者”見聞録」で、アジアの就職事情を伝えています。
日本の新卒一括採用が世界的に見てかなり珍しい制度であることはわりと知られてきていますが、アジアの国々にも当然そんなもんありません。
卒業してすぐに就職する人もいる、という程度で、就職の時期は個人の事情によって違うのが常識・当たり前のようです。
近年の日本では、新規一括採用からこぼれてしまった若者がいかにカワイソウかといった報道が目立つが、そういう面もある一方で大半の若者が新卒一括採用というシステムに庇護されているわけで、守られている側から見ればこれほどラクなシステムはない。他のアジアの国と比べればぬるま湯につかっていると思われてもおかしくないような恵まれ方…原田さんの指摘は厳しいです。
このように恵まれているなかで就活自殺に走る若者が多いという、この悲劇をどのように考えたらいいのか。
警視庁の統計によれば、2013年度までの7年間で大学生の就活自殺者は218人にのぼるそうです。年間約30人。実際はもっと多いと言われています。
庇護されているがゆえの悲劇といえないでしょうか。
日本には元々若者の就職問題は存在しなかった。
労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎さんがブログや著書でくどいほど繰り返していることです。
これは、かつて(と言っても高度経済成長期の一時期ですが)は若者は贅沢を言わなければどこでも就職口があったし、中小企業でもそれなりの給与を獲得できたので、新卒一括採用は本当に若者を守ってきた、ということです。
次代は変化したが、新卒一括採用はまだ根強く残っている。しかし、かつての贅沢さえいわなければ…の状況からははるか遠い。
大手企業に落とされたらブラック企業で一生を送るしかない…自分には非正規雇用しかない…同級生がみんな大手から内定をもらっているのに自分は中小企業にしか受け入れてもらえない…
このように悲観してうつ状態になったり、自殺してしまったりするそうですが、子を持つ親の一人として、天を仰いで頭を抱えたくなります。
小さな子どもを抱えて就職もままならない母親として「就職なんかどうでもいいじゃないか!!」とさえ思います。大手企業がバンバンつぶれた現実を知らないのか。零細企業に勤める近所のおじさんをなんと思っているのか。電気屋のオヤジは人生の敗北者なのか?
庇護された挙句の果てがこの悲劇なのか。
原田さんは、アジアで一番厳しい就職競争にさらされているのは韓国の若者だと言います。大学進学率が8割で、ソウル大学の卒業生ですら3分の1は就職できないそうです。若者の自殺率は人口比では日本より多く、高学歴ワーキングプアの問題も日本より深刻で、88万ウォン世代という言葉もあります。大学を卒業しても給料が8万円から上がっていかないことを指した言葉です。
中国も高度成長であるにもかかわらず大学生の就職難が続いているということです。
原田さんが今心配していることは、具体的実績が何もないのに、友達や所属コミュニティの数だけ多く、嘘も含めてアピール材料の多い子が就職戦線で勝ち組になっていることです。一流企業の人事担当者がまんまと騙されてしまっていると指摘しています。
なぜ騙されるのか…
各企業の人事のオジサマたちの若いころにはソーシャルメディアがなかったことが大きな要因、とのことです。
日々若者と接している原田さんでさえ感動してしまうほど瞬間芸で自分を見せるのがうまい学生が増えているそうです。すぐに化けの皮がはがれてがっかりするそうですが…とにかく入ってしまえば勝ちなんですよね。かつての大學と一緒で入ることがゴールとなっているのです。だからこそ入れない人は悲観するのですが…
若者研究第一人者の原田さんでさえこうです。普通のおじさんおばさんが騙されるのはムリのないことです。
だから、内定取れないからって死ぬのやめなって!おじさんやおばさんにあんたのよさがわかるはずないんだから!!
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