介護の業界紙・シルバー産業新聞9月号に、働く障がい者の収入の引き上げに成功した事業所として、福祉用具レンタルサービスの「宝塚いくせい会」が紹介されていました。レンタル事業は就労継続支援事業としての取り組みです。この就労継続支援というのは、通常の事業所に雇用されることが困難な人に就労の機会を提供する福祉サービスで、雇用契約を結んで利用するA型と、雇用契約を結ばないB型があり、宝塚いくせい会ではA型12人、B型16人が働いています。
88年に無認可の小規模作業所としてスタートし、93年には社協が提供する福祉用具レンタル事業の搬入・搬出や消毒の業務を受託。01年からは法人としてレンタル事業所を立ち上げ、小規模作業所に配送業務と消毒業務を委託する形を取っています。
初年度の売り上げは介護保険レンタルと保険外レンタルで900万。
職員や利用者にとって「守られている」という状況から「自分たちで切り開いていかなければ」と危機感が高まったそうです。9時から5時まで働くのが当たり前、という空気が醸成されていき、工賃(障がい者の収入)が上がったのです。「働いて給料を稼ごう」を合言葉に、06年までに能力給を導入し、工賃は日額で1200円から2700円、月平均25000円から55000円に。13年度の売り上げは8055万円。平均してA型の人で時給584円、月額7万120円。B型は時給295円、月額3万5438円まで上がったのです。
私は学生時代、福祉作業所で2週間ほどボランティアをしたことがあります。保育士養成校の学生で福祉施設に就職したいと思っていたので、勉強のためケース会議にも出席させてもらいました。そのとき耳にした工賃は信じられないような金額でした。内職にも及ばないような、そんな金額でした。生活していけないとかそんな話以前に、これだけ働いてこの金額なのか…と愕然としたのです。利用者さんのなかには「働いている」とはいえない状態の人もたしかにいました。でもなかには、かなり手の動きの速い器用な人もいて、内職仕事に自信のある私でも、かなわない!と思う人もいました。体や心の不調のため、コンスタントに働き続けることは無理なのですが、それにしたって、不当な値段だなぁ…とため息がでました。福祉ショップで売られているものはその質に対してあまりにも値段が低すぎるように思います。利用者さん本人が作ったものもあれば、保護者の方が作ったものもあるのですが、どれもいい出来なんです。パンやクッキーはそのへんのケーキ屋よりはるかにおいしいのです。今はだいぶん改善されましたが、10~20年前は恐ろしく安かったです。障がい者というだけで最初から安い値段で買い叩かれているのです。市場原理もへちまもありません。
シルバー産業新聞では、2人の利用者さんが紹介されていました。
Nさんは自閉症のため、言葉によるコミュニケーションは一方的になりやすく、常に独り言を話しています。作業中は独り言を話さないように下唇をぎゅっと結んでいるそうです。職員さんいわく、「3年目あたりから、職業人として働くという強い意志が生まれてきたようだ」とのこと。
Kさんは簡単なコミュニケーションは取れるが、はっきりした言葉は話せず、細かい作業は苦手です。労を惜しまず黙々と重作業をする人です。仕事を終えるとケアホームに帰ります。53歳のKさんは親元を離れてケアホームで生活をはじめて20年。ホーム利用料・余暇費用などは自分の給料と年金でまかなっています。自動販売機で飲み物が買える120円を超えるお金の管理はいまいち苦手で、コンビニでの買い物がうまくいかないこともあるが、自分の稼ぎで自立した生活を送っています。
「自立」とはなにか。1人暮らしをしているとか、給料が高いとか、自分でお尻が拭けるとか、自分の手でごはんが食べられるとか、押し付けられた憲法じゃなく独自の憲法を作るとか…
子どもが大きくなるにつれて話し合いを深めていかないといけないです…
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