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ビラ・借家人の血を吸い肉を喰らひ骨までシャブらんとする悪家主永田菊松とその手先木田潔を叩きのめせ!!
1921年の社会主義運動 (「日本労働年鑑」第3集 大原社研編)
参照
「日本労働年鑑」第3集 第九編 社会主義運動
「日本労働組合物語」大河内一男・松尾洋
1921年の社会主義運動
「悪徳家主を葬れ!」借家人同盟の結成
2月14日午後7時、大阪中之島公会堂において「家賃の値下げを断行せよ!」「悪徳家主を葬れ!」と第一回借家人同盟大演説会が開かれ、4千人もの民衆が押し寄せた。警官数百名が動員され警戒を強めた。大杉栄派の逸見直浩が開会のあいさつを始めた刹那、突然壇下より2名の暴漢が現れ、凶器をふるい逸見の左額に重傷を負わせた。参加者は総立ちとなり「凶漢を殺せ」「警官無能」の声で喧々諤々。多くの警官がいる中、暴漢は悠々と逃げ去った。翌15日も演説会が開催されたが、立錐の余地もないほどで入場ができない人も多かった。多くの弁士が「悪家主の征伐」「社会制度の欠陥」「財産とは何か」等の熱弁をふるったが、その多くはたちまち「弁士中止」と発言がさえぎられた。同月24日には浜松でも借家人同盟大会が開催された。
3月15、16日天王寺公会堂で借家人第二回同盟大会開催。「労働運動」と白く染めたる赤旗を掲げ、会場は満員の聴衆が押しかけた。警官200名の物々しい警戒により、演説した社会主義者はいずれも発言の中止を命じられた。最後に堺利彦の挨拶で散開した。引き続き夜の演説会では、堺利彦の講演「大塩平八郎」に聴衆は大喝采をおくったが、これまた中止を命じられたため、聴衆と警官隊との間で格闘が起き、大騒ぎとなった。この夜検束者は7名に達した。16日の演説会には、堺利彦、荒畑寒村、三田村四郎らが登壇したが、たちまち解散を命じられたため大混乱となった。3人が違法ビラを散布したとして警察に引致された。17日は京都、19日広島、20日福山、28日には神戸と借家人同盟大会を開き、おおいに気勢を上げた。
5月10日、大阪市で行われた借家人同盟大会は総勢150名の官憲の弾圧で荒畑寒村ら弁士の演説が中止させられ、16日の天王寺公会堂での同大会は、大電罷工団と友愛会も参加して応援演説をするはずが、警察は事前に弁士のことごとくを検束してしまった。
6月6日、東京。借家人同盟の堺利彦、石川三四郎、和田久太郎、三田村四郎、加藤一夫、岩佐作太郎、高津正道らは、神田青年会館において住宅問題講演会を開催した。当局は物々しく警戒したが、会場は立錐の余地もない大盛況であり、布施辰治弁護士の演説もあり、石川三四郎が登壇するや階上より赤旗が振られ、禁止出版物をまき散らすなどたちまち大騒動となった。ここの検束者は11名に達した。
赤欄会の誕生
4月24日、山川菊栄、伊藤野枝ら42名により、日本初の女性社会主義団体が結成された。5月1日メーデーのデモで「婦人に檄す」の赤いビラを大々的に檄布して、約10名が検束され、秋月静枝、中名生いね子が東京監獄に拘禁された。
日本社会主義同盟の解散命令
1920年(大正9年)12月に結成された日本社会主義同盟は、1921年5月9日神田YMCAで第二回大会を開いた。堺利彦、大杉栄らおもだった社会主義者は、いずれも事前の予備検束か、あるいは自宅に軟禁され、当局のすさまじい弾圧が予想された。当日は、大会の主催者さえ会場にはいることができず、高津正道は前日から講堂の座席の下にもぐりこみ、江口渙は窓から忍び込んで、会計責任者の吉川守国と三人だけが、ようやく開会に間に合った。この日会場には、3千名もの参加者が押しかけた。司会者が発言したとたんに、錦町署長が解散を命じ多数の警官が壇上に突進した。たちまち社会主義同盟万歳の声が会場を圧倒して大混乱となった。ひとりの明大学生が「革命」の二文字を大書した赤旗を壇上で翻し、会場のあちこちで官憲と乱闘するものすごい光景が現れた。場外では幾千名という群衆が街路を埋めて、錦町署に検束された者は、渡邊政之輔、エロシェンコ(ロシア人盲目詩人)ら49名(「日本労働組合物語」では200名)に及んだ。5月28日、当局は治安警察法第八条第二項により、「安寧秩序に妨害あり」として日本社会主義同盟に解散命令をだした。
高津正道夫妻の収監
警視庁は8月31日巡査30名で高津正道宅らを襲い家宅捜査を行い、高津ら6名を検束し、高津ら3名を「浮浪罪」の名の下に拘留した。9月9日には高津夫人を召喚留置した。留置の理由は、高津夫妻が、全国の各師団、青年団、教員、学生、文士、学生らに「共産党宣言」「スパルタカス宣言書」などの配布宣伝につとめた「不敬罪」と「出版法違反」だという。
社会主義と軍隊
近頃、全国各地の軍隊に向かって社会主義的文書を配布する事件が頻発している。
秘密結社暁民共産党事件
1921年暁民会有志が秘密裡に8月21日「暁民共産主義団」を結成し、執行委員は近藤栄蔵、高津正道ら9人だった。11月陸軍の軍人に向けて、
「軍人諸君よ、君等も目覚める時が来た!
兄弟殺しはもうするな!
ストライキの邪魔するな、上官に叛け!」
のビラ1500枚を配布し、12月2日党員ら40名が一斉に検挙され組織は壊滅した。