木・うんちく

木材と人間の関わりを考えて思うままに・・・

274.東条湖おもちゃ王国の立体遊具の事故を考える

2024-12-20 13:28:24 | ウッドデッキ
兵庫県の東条湖おもちゃ王国の木造立体迷路で木材の腐食により事故があり、施設の管理者が管理不行き届きで書類送検されたと半月ほど前にテレビのニュースでありました。
我々屋外木製施設の専門業者としては気になるところで、その書類送検の元になった。「消費者事故等調査報告書」がネットに出ていたので、これを読みましたが・・・・驚きました。
調査の内容は徹底的に調べられていて、内容は正しいのですが、結論が180度違う。
屋外木製施設の専門業者がこのレポートを見れば、これはこれを作った外国のメーカーと輸入して施工した日本の業者の責任としか思えないのに、施設管理業者の責任とされている。と言うことです。

レポートを読むと、まずこの遊具は加圧防腐処理をされているものの、一般的に日本でされている加圧防腐処理の2つのグレードの内の低い方のグレードにも満たないこと。
これが木自体に耐久性があれば、設置後8年で、こんな事故にはならずに済んだと思われますが、使っている木材は、最も耐久性の低い木材で、加圧注入防腐処理をするにしても我々であればこのような耐久性の低い材は使わない。
さらに、梁を柱に固定する方法は確かに初期強度はありますが、数年経過すると破断しやすい方法で固定されていて、屋外施設の専門業者が設計・施工する方法ではありません。
結局、加圧防腐処理・材質・施工方法の3つがすべて屋外木製施設の仕様ではなくて、今回の事故に至ったのではないかと思います。

しかし、こんな欠陥品でさらに外部から腐朽が見えない状況にも関わらず、メーカーが責任を問われず、管理者が書類送検され、さらに管理者も自分が悪いと思っていることが、日本で屋外の木製施設が増えない原因ではないかと思います。
この大きな原因は、日本の場合、屋外での木材の使い方なり、加圧防腐の基準をご存じの方が少なく、設計事務所も施工業者も屋外での木材の使い方を理解されていないからですが、根本的には大学の建築学科には木材の講座がないことではないかと思います。結果的に、外国で賞を取られるような高名な設計の先生も木材の腐朽に関しては、知識があって設計したとは思えないデザインをされることになります。
最近、公共建築物で木材の早期腐朽が話題になっていますが、これもその設計を確認すると、木材に関しては、素人レベルの考えとしか思えないような設計仕様となっています。
大工さんの力量はスバ抜けて世界一なのに、また世界最古の木造建築物を有する国なのに、屋外あまざらし状態で使う木材に関しては腐朽に対する知識が乏しいことが、木材を使わず、より環境負荷の高い材料を使うことになるのはなんとも嘆かわしいことです。
コメント
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