木・うんちく

木材と人間の関わりを考えて思うままに・・・

42. 木製飛行機「モスキート」。どう木製なのか

2013-10-31 22:07:45 | ウッドデッキ

モスキートの構造はバルサを芯にしたカバ合板で作られています。
ジェラルミン製のようにリベットの後がなく表面がスムーズですが、
これは合板の上に布を貼って、その上に塗料を塗ってつるつるにしているからです。
現代で言えば、グラスファイバーのガラス繊維の代わりに布を使ったと言うところでしょう。

日本で戦時中に木製飛行機を作ると言うと、そこまで追い込まれたかと思ってしまいますが、
デハビランド社の「木で作ると軽くて速い爆撃機ができるだろう」と言う発想。
さらに製造に関しては簡単で、その上、戦争中は開店休業状態の家具屋で作れるだろうと言う冷静な考え。
武器も含めて無駄を全部省いたらスピードが出るだろうと言う恐い合理思想。

それで実際に作ったら彼らの考えたとおり、
空力学的に優れた軽くてスマートな機体を強力なエンジンが引っ張っていくと言う形になりました。

変に凝った戦闘機や爆撃機の多いイギリスの中では際立って合理的でスマートな形状をしているのは、
合理的な構造にしないと強度が出ない木製だったからかもしれません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

41. 「モスキート」。奇跡の木製飛行機

2013-10-28 21:01:10 | ウッドデッキ

博物館の展示場を入ってすぐのところに、
モスキートは第二次大戦中最優秀だったアメリカの戦闘機ムスタングの横に展示していました。

外観からは木製とは分かりませんが、これが我々木材業者でも信じられないことに全木製なのです。

作ったメーカーの名前はデ・ハビランド社。
「風と共に去りぬ」のメラニー役のオリビア・デ・ハビランドの親戚の会社です。
世界で初めてジェット旅客機のコメットを作った会社でもあります。

当時さすがにイギリス空軍も木製なんて時代錯誤もはなはだしいと、
採用する気がありませんでしたが、
デハビランド社が独断で開発して、空軍に認めさせたと言う経緯があります。

軽くてスピードが速く、爆撃機でありながら戦闘機のような軽快な操縦性
(実際、爆撃機だけでなく夜間戦闘機や偵察機にも使われました)。

防御する火器を搭載していないにもかかわらずドイツの戦闘機がおいつけないスピードのために、
無事に帰還できる生還率がイギリスの爆撃機の中では一番高くて、
各航空隊からひっぱりだこになったと言うイギリスならではの戦闘爆撃機です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

40. 木製飛行機「モスキート」。ヘンドンの空軍博物館に見に行きました

2013-10-25 12:48:09 | ウッドデッキ

木材を扱う業者としては一度は見ておきたかった、イギリス近郊にあるヘンドンの空軍博物館に行ってきました。
こちらには木材業者でも信じられない奇跡の木製飛行機「モスキート」があります。

ロンドンから地下鉄で30分ぐらいのコリンデール駅に降りて、徒歩15分ぐらいで到着です。

入口に第二次大戦で活躍した、スピットファィアーとハリケーンの実物を展示していました。

博物館の中は、過去から現在までの飛行機の展示とバトルオブブリテンの展示館があります。

入場料は無料。
駐車場はキャンピングカー専用のもあり、お泊り見学も可能です。

戦艦ビクトリーと言い、この博物館と言い、
自分たちの歴史を伝えるところがあると言うことは羨ましい気持ちになります。

戦後日本が左傾化した気持ちは理解できますが、
自分たちの国に誇りを持ち、冷静に過去を分析展示する姿勢は必要だと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

39. 戦艦ビクトリー(オーロップデッキから考える)

2013-10-19 09:27:35 | ウッドデッキ


ここは最下層の船底から2番目のデッキです。
このオーロップデッキには適当な日本語がありません。
辞書を引くと最下層甲板と記載していますが、そう書くとロワーデッキと勘違いされるか、その下の船底と勘違いされる可能性があります。
まあ、船底と最下層のガンデッキの中間に仮設的に作ったデッキです。
船が運航中は海水面の下にありますので、窓はなく、
フラッシュなしの写真の限界の暗さです。

ビクトリーには3層の大砲専用のデッキがあり、
下からロワーデッキ・ミドルデッキ・アッパーデッキとなりますが、
このオーロップデッキはロワーよりもさらにロワーな位置にあります。

見学者が見ているのは、戦闘中に医務室になったところの手術道具と説明です。

治療と言っても、体の中のどこに木の破片があるかをまさぐることと
(敵の弾があたるよりも砕けた木片が体に突き刺さっての事故の方が多い)、
手足を切断することしかできませんから、展示しているのは、医療用具と言うより、
大工道具に近い用具です。
それに麻酔薬は一口のラム酒だけ。止血は溶けたタールの中に傷口を突っ込むかは、
焼きゴテを血管に当てると言う,
治療しているのか殺そうとしているのか分からないような処置ですから、
患者の苦痛は大変なものだったと思います。

医者ができる唯一のことは、患者の苦痛をできるだけ短くするために
短時間で切断することぐらい。
と言うことでいったん戦闘になると、医務室は切断された手足がごろごろ
・・写真の横に見えているのは切断した手足をほりこんだ桶です。
こう言うのまできっちり展示していました。




戦闘中に倒れたネルソン提督が運びこまれたのもこのオーロップデッキですが、
最後に息を引き取った場所をその時の絵とともに展示していました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

38. 戦艦ビクトリー(最上部甲板から考える)

2013-10-14 17:55:56 | ウッドデッキ

これがビクトリー号の船首部の甲板です。

手前の大砲がカロネード砲。
大口径で破壊力があったにもかかわらず、従来の砲の半分の重量しかなく
(と言うことは最上部甲板にも乗せることができるので優位な位置から撃てる)、
さらに台車が後退しないので扱い易く、イギリスを勝利に導いた要因の一つでもあります。

どのような工夫で後退しないのか不思議でしたが、
見て分かりました。
木の台の上を大砲を乗せた台車が下がってくることで反動を吸収していたようです。

通常のカノン砲(奥の大砲)の砲耳が両側についているのに対して
カロネード砲は下についているのは、この反動吸収台を取り付けるためだったようです。

大砲の下はデッキですが(うちの会社は、このようなデッキを住宅からテーマパークまで設計施工していますのでので、仕事柄すぐに目が行きます)。

木は膨張収縮を繰り返し板と板の間はどうしても隙間ができます。
そこから水漏れするのを防ぐために、昔は、まいはだ(タールと糸くずや羊毛くずを混ぜ合わせたつめもの)を
板と板の間につめていました。

ビクトリーの甲板を見ると、まいはだではなく、
代わりにアスファルトを床板と床板の間につめて床板を貼っています。
この方法は客船の甲板でもよく見ますし、シャルルドゴール空港内の室内デッキでも見ましたが、
割と良い雰囲気に仕上がります。

一度仕事でも採用したい方法です
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする