世田谷パブリックシアターの公演「ハムレット」を観てきた。3階のA席、5,500円。中央やや右だが舞台は全部欠けずに見え問題ない。今日は2階、3階席の脇の席に空きが目立った。当日券も販売していた。客層は圧倒的に40才くらいまでの若い女性であった。人気俳優が出ているためかシェークスピアが好きなためか。
私はシェークスピアの戯曲は好きだが、ハムレットは必ずしも好きではない、なぜかあまり面白みを感じないのだ。先王の弟グローディアスに対する怒り、先王の死後その弟とすぐに再婚した母への怒り、というのはわかるが、そこから先の彼の行動がどうも今ひとつ理解できない。ハムレットになった気持ちで思わず劇を観てしまう、という感じにならない。福田恆存氏の言うように優柔不断に見えて一つ芯が通っているのだろうが、まだ読み込みがまだ足りないのだろう、よくわからない。
さて、今回の中心となった役者について観た感想を述べてみよう。
- 野村裕基(ハムレット)・・・・まあまあ頑張っていた、役柄と役者のイメージは一致していた
- 藤間爽子(オフェーリア)・・・・同上
- 野村萬斎(亡き父王の亡霊と、叔父王クローディアス)・・・・彼は役柄とイメージが一致していないと思った。萬斎はスリムでギラギラしたところがない。権力欲が強く、女好きなクローディアスのイメージに一致しない、この役はやはりちょっと太っていて精力絶倫のイメージが出せる役者がいい、以前、国村隼のクローディアスを観たが最高にはまっていた、ただ、萬斎は好きな俳優だ、映画「のぼうの城」や「七つの会議」の萬斎はよかった
- 若村麻由美(ガートルード)・・・・これはぴったりはまっていた、やはりガードルードは美人の中年女でないとイメージと一致しない、若村はぴったりだ
舞台の演出は可も無く不可も無く、役者のせりふも大声で叫んでいるようなしゃべり方ではなく、まあまあだった。この劇場がおそらくイギリスのシェークスピア劇場(グローブ座)をイメージしてできた演劇専用の劇場だから声の通りが良いのかもしれない。
さて、この劇の翻訳だが、河合祥一郎氏だ。ウィキペディアをみると、シェークスピアの専門家で翻訳を多く手がけている方だ。祖母の大叔父がシェイクスピア戯曲を初めて全訳した坪内逍遙である。ハムレット訳では、有名だが実は誰も翻訳で使ったことのない「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」を用いたと。ちなみに福田恆存氏の訳は「生か、死か、それが問題だ」と訳されている。福田氏の「ハムレット(新潮文庫)」の解説を読むと、専門家間でどう翻訳すべきかの相互批判があるようである。福田氏は舞台の上演を前提に意訳しているが、批判者は書いてあるとおり翻訳すべきで福田氏は意訳に過ぎると指摘しているようだ。どちらの言い分に納得できるかまで勉強していないが、この世界も興味深いものだ。
14時開演、休憩を挟んで、17時30分終演、3時間半はちょっとキツく感じたが座席(シート)は座りやすかった。
【作】W.シェイクスピア
【翻訳】河合祥一郎(63)
【構成・演出】野村萬斎(56)
【出演】
野村裕基(ハムレット)
岡本圭人(オフィーリアの兄・レアーティーズと、廷臣ローゼンクランツの二役)
藤間爽子(さわこ、28、オフェーリア) ※三代目藤間 紫、祖母は初代藤間 紫
釆澤靖起(うねざわ やすゆき、39、ホレイシオ)
村田雄浩(ポローニアス)
河原崎國太郎(旅芸人一座の座長)
若村麻由美(56、ガートルード)
野村萬斎(亡き父王の亡霊と、叔父王クローディアス)