テレビで放送された映画「スノーデン」を観た。2016年、米・独・仏、監督オリバー・ストーン、原題Snowden。
アメリカ政府による個人情報監視の実態を暴いた元CIA職員エドワード・スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レビット)の実話。何となくスノーデン事件のことは知っていたが、あまり興味は湧かなかった。ただ、知っておくべき事件と思い、新聞のテレビ欄にこの映画の題名を見て、観てみようと思った。
2013年6月、イギリスのガーディアン誌が報じたスクープにより、アメリカ政府が秘密裏に構築した国際的監視プログラム(PRISM)の存在が発覚する。監視の対象はテロリストのみならず全世界の個人情報である。ガーディアン誌にその情報を提供したのはアメリカ国家安全保障局NSAの職員である29歳のエドワード・スノーデンだった。国を愛する平凡な若者だったスノーデンが、なぜ輝かしいキャリアと幸せな人生を捨ててまで、世界最強の情報機関に反旗を翻すまでに至ったのか。
映画の冒頭、この映画は実話である、と断り書きが出る。ただ、どこまでが実話かはハッキリしないので、全部実話と信じるのは考えすぎであろう。
映画を観て感じたところを書いてみたい。
- 最近アメリカは中国によるアメリカの機密情報収集に対する懸念を持ち、中国製のソフトウェア、携帯電話、通信機器などに関して制限をかけている。例えば、HuaweiやZTEによる通信機器の使用に対する制限だ。この映画のように自分たちもつい最近までそういうことをやっていたことは棚に上げてだ。どっちもどっちだ。現在でもGoogleなどを使っている日本人は個人情報をすべてアメリカに収集されている可能性がある。スノーデン事件後、政府による個人情報に対するアクセスに規制ができたようだが、実際のところはどうなのか。
- メールや電話などの通信傍受には通信会社、IT企業の協力が必要だ、アメリカでもスノーデンが暴露した資料にはGoogleなど多くの米企業の社名が出ていたが、それらの企業の多くは、一連の報道を受け「PRISMというものについて全く関知していない」、「政府からの直接アクセスを可能にするシステムは存在しない」とコメントしてしらばっくれた。
- つい最近、アメリカの日本占領時の検閲の制度的実態を書いた本(山本武利「検閲官」)を読んだばかりだが、その本ではアメリカが日本でだけでなく本国でも戦時中に検閲を行っていたと書いてあった。アメリカというのは戦後になっても必要があればそういうことを平気でやる国家だと言うことだ。日本の政治家や高級官僚はアメリカという国をよくよく研究して付き合った方がよいだろう。
- スノーデンの彼女リンゼイ・ミルズ(シャイリーン・ウッドリー)と知り合った頃の2人の会話が映画の中で出てくる。彼女はリベラルで民主党支持者、一方、スノーデンは彼女の政治的傾向に対して批判的なのが面白い。例えば、公園を歩いているときブッシュ政権のイラク攻撃反対の署名を求められると彼女は直ぐに署名するが、スノーデンはしない。曰く、自分の国を非難したくない、彼女は自分の国や大統領を批判するのは当然の権利だと言う。するとスノーデンはリベラルなマスコミへの疑問は?君は一方の意見に偏っているよと言うと、彼女は賢い保守派には腹が立つと言う。スノーデンは、それは真実を言うからだろと返す。前半部分は彼女の意見に賛成だが、後半部分はスノーデンの言うとおりでは。
- スノーデンが機密情報を暴露した動機は、アメリカ政府が個人情報まで監視することに対する反感だけでなく、もともとリバタリアンであったところオバマ政権の社会主義的な政策に幻滅したことも原因だとウィキには書いてある。この映画でもオバマさんが何回か出てくる。
- この映画には日本が登場する。スノーデンは日本の横田基地内のNSA関連施設で業務を行っていた。アメリカは日本に対しても国民監視への協力を依頼したが断られた。しかし、実際には監視を実行した、日本の通信システムや物的なインフラも乗っ取りするため、密かにプログラムを送電網、ダム、病院などにも組み込んだ。もし、日本が同盟国でなくなった場合は電力システムを停止させられるマルウェアを横田基地駐在時に仕込んだ、だから同盟が解消されたら日本は終わりだ、など。これも実話か?
面白い映画であった。