映画「私にふさわしいホテル」を観た、2024年製作、98分、監督堤幸彦(1955)、柚木麻子(1981)の同名小説の映画化、出演はのん(1993)、田中圭(1984)、滝藤賢一(1976)、田中みな実(1986)、髙石あかり、橋本愛、若村麻由美(1967)ほか
主役の“のん”は知らない女優だったが、2016年以前は本名の能年玲奈で活躍していた、俳優、アーティストで音楽、映画製作、アートなど幅広いジャンルで活動している、映画中で歌うところがあるがこれも音楽アルバムを出すなどしているゆえの演技でしょう、かなり多才な人だ
新人賞を受賞したにも関わらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)、その原因は、大御所作家の東十条宗典(滝藤賢一)の酷評だった。文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、いつかこのホテルにふさわしい作家になりたいと夢見る加代子は、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄(田中圭)の力を借り、己の実力と奇想天外な作戦で、権威としがらみだらけの文学界をのし上がっていく。ズタボロになっても何度でも立ち上がり、成功を己の力で引き寄せていく加代子の奮闘はやがて・・・
映画を鑑賞した感想
- けっこう面白かった、最初のうちは主人公のふざけたキャラクターに程度の低いお笑い映画かと思い、見る映画を間違えたと思っていたが、見ていくうちに面白くなってきた、ただ、最後の終わり方が平凡で、もう少し何かあっても良いのではないかと感じた
- この映画はコメディだ、一人の若手女性作家の悪戦苦闘ぶりをお笑いを交えながら大げさに立ち回るドタバタ劇である、色恋はない、これはこれで良いと思った
- 主人公の佳代子のキャラクターは日本ではまずありえないだろうなと思った、これだけアグレッシブな性格には男でもなれないだろうなと思った、だからこそ映画にすると強烈なスパイスになり面白いのだと思った、今の日本に欠けているキャラクターなのではないか、ハングリー精神、何度失敗してもメゲない根性、上昇思考、押しの強さなどだ
- ある高級レストランで、佳代子が東十条に取り入って一緒に食事をしていると、その同じ店で編集者の遠藤が天才女子高校生作家に2作目を書くよう説得しているところを見つける、佳代子と東十条は物陰から遠藤と女子高生の会話を聞いていると遠藤が佳代子だけでなく東十条のことも酷評しているのが聞こえてきて二人とも怒るところがあったが、面白かった
- 編集者の遠藤は佳代子を助けるが、時に裏切ることもあるため、二人が言い争いになる場面がある、佳代子が遠藤の編集者として自分を十分に支援していないことを具体的な例を挙げてののしる、例えば佳代子が店に陳列してある自分の新刊本にサインさせてもらうために書店を訪問してカリスマ店員にお願いをする時、編集者として同行せず一人で行かせたではないか、などなど、この佳代子の主張が聞いていてもっともだなと感じた
- 遠藤をとっちめるため、佳代子と東十条はクリスマスに家族そろってホテルに外泊する遠藤一家の幼い娘二人を驚かせてやろうと考え、遠藤が娘たちにサンタクロースが本物だと信じさせていたがそれは嘘だとばらすことにした、そして、佳代子と東十条がサンタとトナカイに扮して娘二人がいる部屋に行くと、娘たちは、「サンタなんて嘘だと知ってる、だけど騙されたふりをしているのだ」などとませたことを言って佳代子達を呆れさせるところも面白かった
- 佳代子が自分が受賞候補者となっている直林賞の最長老選考委員である東十条を篭絡するために彼の奥さんや娘に取り込み、彼女らか「佳代子さんに受賞させあげてよ」と言わせる戦略をとってうまく行きかけた、ところが最後で東十条が彼女らの面前で一喝して佳代子の正体をばらしてしまい作戦が失敗し気まずいムードになる、映画ではそこで場面転換し、もう後日の話に進んでしまうが、ここでも佳代子の不屈の一発逆転ヒットが欲しかったと感じた
- 佳代子が文学賞を受賞して記者の前で挨拶をする場面がある、「この度、直林賞を受賞させていただきました〇〇です」と言うが、この「させていただきます」が最近横行しているのには辟易する、「させていただく」は、誰かの承認を得て何かをする場合にへりくだって言う表現だ、この場面では「この度、直林賞を受賞しました・・・」か適切である、政治家や芸能人、経営者などが「させていただく」を連発するのは卑屈の現れである、どうしてこんな卑屈が当たり前になったのか、原作でもそうなっているのだろうか、こういう言葉遣いをする人たちは逆の立場の時は横柄な態度なのではないか、卑屈はその裏返しである
- 映画に実名で出てくる山の上ホテルであるが今年2月より建物の老朽化に対応するため休館しているが最近、明治大学が山の上ホテルの土地と建物を取得し、改修後にホテルとしての営業再開を目指すと発表したから驚いた、だが、これはうれしい、私も一度鉄板焼きレストランで昼食をとったことがある
面白い映画であった
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