映画「ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦」を観に行ってみた、2022年、103分、アメリカ、監督テッド・ブラウン、原題Viva Maestro!
1981年ベネズエラで生まれ、10代の頃から天才指揮者として巨匠たちの薫陶を受けてきたグスターボ・ドゥダメル、ベネズエラを代表する音楽教育プログラム「エル・システマ」の責任者であり、音楽で子どもたちを救う夢を追い母国の若手音楽家からなるシモン・ボリバル・ユースオーケストラを率いて活動し、2004年「第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクール」に優勝、2009年には28歳にしてロサンゼルス・フィルの音楽監督に就任した。
しかし2017年、ベネズエラの反政府デモに参加した若き音楽家が殺害された事態を受け、音楽教育者としてマドゥロ政権批判を新聞に展開、大統領府と対立したことでユースオーケストラとのツアーは中止に追い込まれ、祖国へ足を踏み入れることすら禁じられてしまう・・・・
観た感想などを述べると
- ドゥダメルはテレビで何度か見た指揮者で、その存在は知っていたが、彼がベネズエラ人というのも忘れていたし、祖国の暴政と戦っているとは知らなかった、ベネズエラという国のことも政情不安定というのは知っていたが、それ以上知らなかった
- 彼は2004年のマーラー指揮者コンクールで優勝したが、その時に3位に入賞したのがウクライナ人の女性指揮者オクサーナ・リーニフ(Oksana Lyniv、1978年生れ)だった、彼女もNHKBSのクラシック音楽番組で何回か見たことがある、彼女は2021年に女性で初めてバイロイト音楽祭の指揮台に立つほどの指揮者(24年まで4年連続で登場)、その彼女の祖国もあんなことになるとは本当に大変だ、彼女の方はWikipediaによれば2024年いっぱいはボローニャ市立歌劇場の音楽監督にあるようだ
- この映画では実在の人物が出るのでいろいろ興味深い、サイモンラトル、ロサンゼルス・フィル、ベルリン・フィルなどのメンバーも出てくるので面白かった、ベルリン・フィルのホルン奏者サラ・ウィルスも出ていたのでうれしくなった
- 映画の中で演奏される曲もベートーヴェンの「運命」やプロコフィエフ「ロミオとジュリエット」、ドヴォルザークの「新世界」、チャイコフスキー4番、マーラーの5番など知っている曲も多くて良かった
- ドゥダメルがベネズエラに帰れなくなってからは祖国のオーケストラを指導するのはZoomのようなPCの画面で祖国とつなぎ、演奏を聴いて指示を出すなど、ITの進化のおかげで従来では考えられないようなことができるようになったんだなと驚いた
- 彼が、祖国の音楽教育プログラム「エル・システマ」について、エル・システマは音楽を通じて社会を改革するプログラムであり、音楽には人々を団結させる力があると信じていると語っているところが印象的だ、また、芸術は人々を楽しませるだけではなく、社会を癒し、人々の魂を癒すとも言っている、不要不急のものではないということでしょう
- オクサーナ・リーニフも、昨年来日したときのインタビューで「アルメニアとウクライナの両親を持つ私は、大きな苦しみを感じています。ただ、いま起こっている悲惨なことだけを見るのではなく、芸術を大切にしてほしい。世界で血が流れ続けている恐ろしい時代ですが、舞台を成功させてそれを世界に運び、魂の喜びを分かち合う活動は非常に重要です。なぜなら『音楽をしよう、戦争ではなく』というメッセージを伝えられると思うからです」と述べている、皆さん同じ気持ちなのでしょう
- 映画の中に頻繁に出てくるベネズエラの黄・青・赤の3色の国旗の色が頭に焼き付いた、ポスターにもその三色が使われていた
なお、ドゥダメルは2026年にラテン系指揮者で初のニューヨーク・フィルの音楽監督就任が決定している
クラシック音楽好きの人は見る価値があるでしょう
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