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八戸探訪②〜陸奥八仙の蔵元へ行く

2025-03-10 | 街:青森







皆さんは「陸奥八仙」という日本酒をご存知だろうか。青森県の八戸酒造が造る酒である。青森の酒といえば、田酒(青森市)が最も有名だ。でも僕は陸奥八仙(八戸市)と豊盃(弘前市)こそが青森を代表する酒だと考えている。その八戸酒造の蔵見学に参加してきた。蔵内部の見学写真はSNSアップ禁止なので、可能な範囲での写真を掲載した。思いつきに近い計画だったが、現地に向かう新幹線の中で調べると、実に興味深い歴史に触れることになった。まず陸奥八仙というブランドの話である。このブランドは1998年に作られたもので、創業から300年近い蔵の歴史からすれば新しいものである。現代の嗜好と日本酒本来の味わいの高度なハーモーニーが陸奥八仙の味わいの特徴でもある。では陸奥八仙以外の代表的な酒は何かと言われれば、それは「男山」である。この「男山」という酒は日本全国に数多くある(これもよく分からなかった)。北海道旭川とか宮城県気仙沼などが有名である。八戸酒造の男山は、「陸奥男山」などとも呼ばれている。

次に蔵元の名前である。陸奥八仙を造る八戸酒造は、駒井酒造と呼ばれたりもする。実際、蔵元の看板も「駒井酒造店」となっている。八戸酒造は「駒井酒造店」として創業し、経営は代々の駒井家が担っている。現在も駒井家の八代目蔵元が経営している。実はここに激動の歴史があった。単に酒蔵を見るだけのつもりが、そこには実に壮大なドラマがあった。とてもまとめる自信はないが、簡単に説明する。まず戦時下(太平洋戦争)に国策により近郊の酒造会社は強制合併され、合同会社(十数軒による)が作られることになった。それが八戸酒類株式会社である。会社は現在の八戸酒造の蔵元に置かれていた。戦後も合同会社は継続され、各蔵元で酒を製造し、売上管理は会社(八戸酒類)が行う形式だった(生コン組合みたいなものだろうか)。元々、駒井酒造は「男山」のブランドを持ち、地域の中心的な作り酒屋だった。合同会社の初代社長も当然ながら、駒井家が担っている。だが合同体制が続けば、その弊害も出てくる。参加蔵元は自ブランドの売上や品質が悪くても、利益は平等に分配される。日本酒の衰退と流れを同じにして、合同会社の価値も薄れていく。駒井家は自分たちの酒造りを再開すべく、平成になってから八戸酒類を抜ける決断をした。現在の蔵元家屋は、当時は合同会社の管理下にあったので、別の場所で独自の酒作りを始めたわけである。商標や蔵元を取り戻す裁判などもあった上に、酒の品質も中々あがらず、大変苦労したようだ。だが2000年代に入ってから、経営環境が落ち着くと、理想の酒作りに邁進。陸奥八仙は現代の日本酒シーンにおいて重要な位置を占めるに至った。単に陸奥八仙の蔵元を見学したかっただけなのに、途方もない情報の連続だった。ちなみにこれは、僕がネットで調べた情報である。蔵元見学では、そんな生々しい話は出なかったことは明記しておく。

見学のあとは試飲も楽しんだ。僕は試飲で一番旨かった「裏八仙」を購入した。裏八仙の旨さと来たら・・・。見学前と比べ、一層と陸奥八仙のことが好きになった。ちなみに今回は鉄道の旅である。日本酒は重いので、現地から宅配便にて発送した。届くのは火曜日であり、ワクワクしている。

X-T5 /  XF23mmF1.4 R LM WR


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3 コメント

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Unknown (azutoro)
2025-03-10 07:49:20
ろくさまの解説を読んだら行きたくなりました(お酒飲めないクセに(⌒-⌒; )
行ったらきっと同じ銘柄のお酒を購入するだろうと思います(笑)
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おはようございます(^^♪ (のり)
2025-03-10 08:54:08
とても立派な建物ですね!!
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Unknown (Charlie)
2025-03-10 12:22:50
こんにちは!
八戸の酒蔵の画を興味深く拝見し、記事を愉しく拝読しました。
随分以前、八戸・苫小牧のフェリーで<陸奥男山>のカップ酒を呑んだ想い出も在ります。それを醸している場所なのですね。
「男山」という名は伊丹で起こったものだそうです。古くからの歴史が在りますが、旭川の会社がその権利を入手して<男山>という銘の酒を出しています。方々に「〇〇男山」という酒が在るようですよ。
酒の御話しも好いのですが、この記事の画に在る建物の感じが秀逸です。そして「23mm」の画ですよ!これが素敵です。
素敵な画や愉しい記事に感謝!
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