本当のところは、逆光の猫ではなく、逆境の猫なのである。秋田県象潟漁港の猫は、強制駆除寸前のところをボランティア団体の保護で、命を繋ぎとめた。避妊手術やトイレや小屋の整備、餌やりなどを通じ、漁港猫の存在は知られていき、テレビ番組などにも登場した。徐々に観光名所化もしてきていた。衛生環境や猫の生活環境も改善し、小さな子猫を猫が欲しい方へ譲渡する取り組みなどもされていた。それが紆余曲折あって、漁港から離れた公園への移設、その後公園からの立ち退き要求を経て、象潟漁港での猫保護活動は事実上終わりを告げた。
しかしながら、相手は猫。公園へ移設しても、元の漁港に戻ってくる猫たちもいた。今ではその猫たちが、少ないながら元の漁港で生活している。漁師さんたちも表立っては「当たらぬ触らぬ」態度だが、そこは元からの関係で、それなりに平穏な日々が戻ったような気もする。今回の騒動については、実態を知らないので、コメントは差し控える。ただし、一つだけ。漁港猫が有名になると、それを見学する人が増えた。その車が漁港の内部にも侵入し、漁師さんの活動に支障が出ていた。猫を轢きそうな場面を何度も見た。すぐ脇には広く立派な駐車場がある。わずか100mを歩くことを面倒がり、漁師の仕事場に土足で踏み込む。そういう「自称猫好き」の責任が大きいことは肝に命じるべきだろう。ほら、猫だって駐車場に停めた車まで挨拶に来てくれた。雨上がりの逆光の猫。達者で暮らせよ。
X-PRO3 / XF23mm F2.0R WR