<道祖神:形態① 白木野人形贈り>



<道祖神:形態② 左草人形おくり 男女2対バージョン>



まず前回の記事で「湯田町」を連呼していたが、正確には旧・湯田町で、現在は西和賀町である。今回の道祖神は共に西和賀町にあるが、最初のものが旧・湯田町、もう一つが旧・沢内村のものだ。最初の3枚は昨日掲載した巨大藁人形が小さめのサイズになっていると思って良い。残りの3枚は男根ではなく、男女2体の人形となっている。この二つは、「人形おくり」という形式のものである。人形は集落を練り歩いた後、町外れに括り付けられる。村(集落)の中の悪しきものを、人形に託して集落外に送り出す儀式なのである。広義の意味では「灯篭流し」的な行事と同一と思ってよいかもしれない。僕は8月に吉村昭氏の「雪の花」を読んだ。数年ごとに流行し、多くの人命を奪う天然痘。江戸期までは何の治療法もなく、ただ神仏に祈るのみ。ご遺体は桶に入れて急ぎで町外れの焼き場に運ばれていった。漢方医として無力だった福井藩の町医者が、南蛮由来の治療法(種痘)を必死の思いで確立するという話である。この小説で印象的なのは、夜中に焼き場に運ばれる桶、その桶を運ぶ大八車の車輪の音が不気味に響くところである。人形おくりも、その体験から出来たことかもしれない。
暗い話ばかりになった「道祖神」シリーズも終わりとする。物事の良い面も見れば、道祖神作りは集落のイベントであり、楽しみなことでもあったらしい。雪深い山間の農村集落には、娯楽らしい娯楽もなかった。人々が集まり、道祖神を作り、語らい、そして酒を呑む。祈りの行為であり、かつ数少ない楽しみでもあった。それがが今の時代まで継承されたことを考えると、胸が熱くなる。
X-PRO3 / XF16-80mmF4 R OIS WR
本当のリアル日本は東北にありみたいなジトーとした重い景色
カラッとした軽い日本は弱そうで好きじゃありません
色々な民の気持ち(祈りとか、恨みとか、諦念とか、執念とか、歓喜とか、哀しみとか)が渦巻く地で、圧倒されることもあります。