あとがきにしるされた日付は平成23年10月21日となっているので、書かれたのは5ヶ月前の本になります。2012年の「景気の動向」や「株価や為替の予想」っぽい感じの本なので、2012年2月が終わろうとしているこの時期にあえて読んでみました。いくつかのことがすでに当たっていれば、その他のことも当たる可能性が高いのではないか、というなんとも安易な考えで恐縮ですが (^_^;) 、ま、こういう読書もたまにはアリだよね。
論旨はすごく明確で「金融緩和 → インフレ → 円安・株高 = 景気回復」で「金融引締 → デフレ → 円高・株安 = 景気停滞」ということ。で、今の野田政権も日銀の白川総裁もデフレが好きだから、そこが変わらないと前者のシナリオにはならず、景気は浮上しない。今の株安や不況は「政策不況」。だけど、さすがにこれからは変わっていくのではないか。だから前者のシナリオになる可能性もあるっていう、大きく言うとそういう感じになるのかな。
参考になったのは、これまでアメリカが軍事に注ぎ込んできた資本と技術が冷戦終了後に向かった先がIT産業と金融業だったということ。だからこの2つの業界は世界でも圧倒的にアメリカが強いのはうなずける。国策として成長産業を強化したのですね。
で、ITの方はうまくいった。MS、Appleはもちろん、Google、Facebook、Salesforceととにかく筋金入りの強い会社が続出してアメリカが世界を席巻している。問題は金融の方。ノーベル賞クラスの理系エリートが様々な金融商品を開発して「金融工学」とか「金融ハイテク時代」とか言われていたけど、2008年のリーマンショックでそれは「強欲資本主義」であることが明確になり、「金融工学は偽者である」と烙印を押された形になっている。で、本を読んでわかったことは。
・しかし「強欲資本主義」はまだ死んではいないということ。
・次に経済的に成長するエリアはもちろんBRICsで、そこで経済力をつけた人たちに「強欲資本主義」はねらいを定めている。
・「強欲資本主義」の本質は「お金でお金をも儲ける」こと。
・金融商品は最初はとてもいい商品に見える(実際、最初の購入者はほとんど儲け、最後にハズレを買わされた人が大損をする)。
そして日本国内的には
・アメリカが仕掛ける成長エリアでの金融バブルに日本も無縁ではいられないということ。
・貧富の差がますます拡大する
・それでも強いものつくり企業は日本を支え続ける。ファナック、日本電産、信越化学工業 など数えたらきりがないくらいある。
・日本のウィークポイントは成長分野である金融・情報産業であり、そこの強化が課題。
・企業が海外に出て行くこと = 企業の弱体化 ではない。ただ雇用は海外で生まれることになる。
・海外でできる仕事と同じ事を日本でやって、これまでと同じ所得を得ることは限界。
・国内の雇用は成長産業であるIT企業が生み出す余地があるのではないか。
そんな感じだったかな。。
ちなみに自分は金融緩和はあまりいいと思っていない。もっと根本的なところで規制を緩和して、新しい競争力のある産業に作り変えていくべきだと思っている。産業が一時的に混乱しても、日本ならそれを乗り越え、付加価値の高い仕事をして世界で存在感を発揮していけるようになると思っています。
あと、クラウド化の時代ですから、IT産業も海外にでていけるチャンスが広がっていると思っています。
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