昨日 母校 静岡聖光学院の文化祭で行われた富士宮やきそば学会会長 渡辺英彦氏の講演要録を書いてみました。地域活性やまちおこしにはもちろん、企業経営にも参考になります。
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小学校まで富士宮では神童(と自分で言っていた)と呼ばれていたが静岡聖光学院に通うようになってみると勉強でも部活でも圧倒的にすごい人間がいて、目立たない存在となった(男女交際も極めようとしたが、そちらも高い能力をもつ人間がいて目立てなかった (^_^;) )。
その後苦節40年、地味にやってきたが2000年を境に突然スポットがあたりだす。それもなぜか「やきそば」で。富士宮では2000年以前を「BC」、以降を「AC」と呼び、BCは旧焼(きゅうやき)聖書の時代、ACは新焼(しんやき)聖書の時代とされている。
2000年以前の旧焼時代は富士宮市外からの街中への観光客の集客はほとんどゼロ。2000年以降の新焼時代になるとやきそばを食べにくる市外からの観光客が激増。今ではその数は年間約60万人、やきそばの売上など、経済効果は217億円を突破としたと言われている(たぶんもう300億円くらいになっている)。
今、市外のお客さんをいちばん連れてきてくれるのは「はとバス」。「ヤキソバスツアー」と銘打った観光バスが毎日きている。ヤキソバスツアーのお客さんは 富士宮市内のやきそばをタダで食べられる「麺ざいふ」なるチケットを渡されている。またその「麺ざいふ」が使えるやきそば店を「麺ぜい店」と呼ぶことにした。
「免罪符」といえば普通思い浮かべるのは宗教改革。500年の歳月を経て、富士宮で復活する「麺ざいふ」ということで、こじつけっぽいけどおもしろいストーリーも用意した。
# このあたりのゴロあわせは氏一流のオヤジギャク。やきそばはブームには
# なっているが、正直原価は決して高いものではないから旅行会社の
# 費用負担も少ない。そういうところはきっちりと計算されている
元々富士宮市は富士山のお膝元であり、観光には事欠かない。朝霧高原、白糸の滝などを組み合わせて、いろいろなコースを作ることができる。東京にも近く、バスツアーにはぴったりのロケーション。ポイントは観光客を街中に呼び込んで新しい経済効果を作りだすことに成功したこと。
ま、それはさておき、上記のように「うんちく」や「ストーリー」があるとメディアは喜ぶし、取材にもきてもらえる。取材してもらえるということは、広告費を使わずに告知できるということでその効果は非常に大きい。
地域おこしがうまくいっているところとそうでないところを見ていくと、技術主導、商品開発型に陥ったところはあまりうまくいっていないようだ。頑固な職人気質のおじさんがでてきて、「来てみて、食べてみれば (うまさが)わかるんだ」っていうのはダメ。それは「行ってみて、食べてみないと わからない」ということであり、伝わらない。はじめに「言葉」ありき。まず「言葉」で伝えられなければ広がらないのだ。
「新たに名物を開発しよう」というのもダメになりやすい。研究開発ばかりが先行しても、存在を知られなければ、存在していないのと同じ。それよりも「もともと存在していたもので、まだ知られていなかった名物」という方がいい。知られるようになるだけでブレイクする可能性がある。
自分の本業はやきそば関係ではなく、やきそばに関しては素人で、一般消費者の視点でみることができたのがよかったと思っている。今の日本は「ものづくり」という点では品質も、安全性も、低コストであること もいくところまでいった感があり、差別化しにくくなっている。どこのご当地グルメもおいしいし、リーズナブルだ。そこでさらに差別化するためにはプラスアルファの価値が必要になってくる。そのプラスアルファは「感性価値」と言うべきもので、前述の「うんちく」だったり、「ストーリー」だったりする。
最近富士宮では「やきそば神社」なるものができて、よく神社にいくと絵馬に名前を書いてくるけど、それにあやかり「麺馬(めんま)」と呼ばれる木札の配布を始めている。これは流行ると思うんだけど(当日の会場での人気はいまいちであったが (^_^;) )。
富士宮やきそばをはじめとしたご当地グルメを「B級グルメ」と呼んでいる。その定義としては「その土地にもともとあったもの」で、「リーズナブル」で、「うまい」もの。B級という言葉にはレコード盤のB面にかくれた名曲があるように、知る人ぞ知る名産品という思いがこめられている。
B級ご当地グルメの祭典として「B-1グランプリ」というイベントを開催しているが、今年はアサヒビールがスポンサーでついてくれることになった。GYAOによる動画配信も始まっている。企業からの応援で全国規模のイベントが実施できるし、告知も上がることで さらに地域活性につなげていくことができる。
過去2回開催されたB-1グランプリで、富士宮やきそばは2連覇を達成しているが、それは(こんなことを言うと地元の人に怒られそうだが)味の差ではないと思っている。富士宮やきそばだけがうまい ということはないし、どこのご当地グルメもうまい。ではなぜ富士宮やきそばが2連覇を達成し、まちおこしでも効果を上げているかと言えば、それは「情報量の差」だと思っている。インターネットで検索してみても、マスコミの取り扱いでも、富士宮やきそばの掲載量は多い。取り上げられるときの文章やコピーの重要性は高まっている。
鳥取には「鳥取とうふちくわ総研」(略して「とうそう研」)という組織があって、行ってみると挨拶がいきなり「こんにちくわ」だったりする。アホというか、なんと言うか、でもそういうおもしろさは大切で、「とうふちくわはおいしい」だけではなかなか広まらない。どうすれば第三者に伝わっていくのか」という部分を考える必要があるのだ。
富士宮ではやきそばだけなく、虹鱒(にじます)も日本一なので、やきそば学会を完全にコピーして「にじます学会」なるものができている。キャッチフレーズは「柳の下にどじょうは2匹いなかったけど、にじますがいた」とか言うもので、やきそば学会のメンバーは「やきそばGメン」と呼ぶのに対してにじます学会のメンバーは「鱒コットガール」と呼ぶらしい。これもおもしろい取り組みだ。
地域ブランドを立ち上げていくときは「コンセプト」作りはまじめにやるけど、「パフォーマンス」も必要で、そこはただまじめなだけは広まっていかない。プラスアルファの「感性価値」を生み出していく必要がある。
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ということで、地域活性やまちおこしにはもちろん、企業経営にもとても参考になる講演でした。どうもありがとうございます。
これは後で聞いたことだけど、氏はぼくの母校 立教大学の「立教ビジネスクリエーター塾」でも講演をしているとのこと。すごいなぁ。
英彦氏と富士宮市をはじめとする各地のB級グルメ都市のますますの発展とわが地元焼津市やわが社がこういう発想を取り入れてさらに発展することを願って この要録を終えたい。
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それにしても英彦の発想やノウハウ
すばらしかったなぁ~。
そこら辺の講演より
断然面白かった。
人一倍大きな声ですごんで・・もとい仕切っていただいて、おかげさまでスムーズで楽しい会になったよね (^_^;) 。
英彦のノウハウ、すごかったですねー。ジョーダンをまじえて さりげなくしゃべっていたけど、あの内容は素晴らしい。上の文章、ぜひ活用してやって下さい。