ぼくらの会社では5月が給与改定、夏季賞与査定の時期となる。とても重要な問題であり、その場での感覚的なことで決定できるようなことではない。
給与改定や賞与査定に臨むにあたり、自分の中の判断基準を再度明確にしておきたい。改定業務に取り組む前に哲学的思想を強化しておきたい。
そのようなとき自分は「心のよりどころ」を京セラ創業者で、元社長、日本の名経営者中の名経営者、稲盛和夫さんに求めることが多い。今回の「高収益企業のつくり方」はたいへんインパクトが強く、参考になった。
まず自分たちが苦労して手に入れた「目標管理に連動した準年棒制」という賃金体系には大きな疑問が投げかけられていた。この制度の根本的な思想は「賃金を決定する最重要要素は『どんな仕事をするか』ということであり、勤続年数や会社滞在時間(残業)などではないはずだ」ということ。そして「業績が良ければ賃金はあがり、悪ければ下がる」という、思想が色濃くなる。またそうでなければ「若い優秀な社員がやめていってしまう」という危機感もはたらいている。
稲盛さんはズバリ指摘されていた。「部門の利益をオープンにすると利益が多い職場が威張るようになります。「これだけ儲かったのだから、ボーナスに差があってもいいじゃないか」と言い出す人まで現れる。同じ会社の中でそこまで言えば、あまりに人間関係が殺伐とします。」
考えさせられました。これまでの自分の価値観が否定された瞬間。本来給与体系など、そんなに合理的に作れるものではないと、それを合理主義で割り切ろうするところが問題なのだと。
業績が上がった場合は賃金も上がり、問題ないけど、業績が下がった場合に給与を下げると、「これではやる気がなくなるのでなんとかしてほしい」と言い出す。頭では理解できたつもりでも実際に下がるとなれば、感情的にどうしても納得できない。それが人間というものだ、と肝に銘じなければならないと。
それで稲盛さんはどのようにしてきたか と言えば
「あの部門の人たちは高い利益を達成して、我が社の採算向上に大きく貢献してくれた。おかげで、我々は昇給やボーナスをたくさんもらえる。あの人たちの功績をみんなでたたえましょう」と言ってやってきました。とのことだった。
総務や経理のような間接部門も同様で、そういった部門の頑張りにより現場が高い利益を達成するのだから、現場に奉仕してくれる間接部門には感謝と尊敬の念をもち、その仕事を評価すべき とのことだった。
自分はこれまで「目標管理に基づく準年棒制」という管理体制をもっとも合理的な制度と信奉してきたけど、でも今回の給与改定・賞与査定では「稲盛思想」の影響がでることになる。そのくらいインパクトがあった。参考になる言葉、思想の宝庫のような本。一読をお奨めします。
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自分も同じ事で苦悩しています。
そして今取り組んでいることは「気持ちの数値化」です。
できないと頭から否定しては絶対に達成できませんので、「絶対にやる」と決めて、シミュレーションを繰り返しています。
世の中はいつでもかわっていきますが、働きとそれに見合う給料体系について、いつでも問題になってきたテーマだと思います。多分正解はいろいろと存在するのでしょう。その中でそれぞれがいかに満足し次のやる気につながるのか。難しいテーマではあると思います。
ぴょん
部門の利益をオープンにすると・・
のくだりは妙に納得ですね・・
自分の職場でも、最若手の自分が他部門の年配の方の3人分以上の利益はあげてますけど。。
悩みなのは、中間管理職の直属の上司が利益の低い他部門にちょっかいを出して悪い労働条件を他部門に押し付けるような足の引っ張り合いをしていることですネェ。。
人それぞれ自分の仕事をしていて、皆でよりよい条件で働けるようになればハッピーでしょうと常々考えて上司にもそれとなく言っていますが。。
経営者からするとこういう足の引っ張り合いをしてくれる中間管理職の存在って思う壺みたいで、逆に自分の部門がリストラ掛けられて青息吐息になっています(笑
コミットメントは、行動学的に「外因的」と「内因的」があるといわれています。
「外因的なコミットメント」
仕事自体や目標そのものが目的なのではなく、あくまでも仕事は手段であって、目的は別にあるようなコミットメントの仕方。お金や地位といった外的なものが目的であり、より多くの報酬を得ようと、あるいは、より出世するために一生懸命仕事に取り組むこと。
「内因的なコミットメント」
仕事そのものをやりたいと思い、やるべきであると感じ、やる気や責任感の基になっているような取り組み方。多くの場合、この違いがあまり認識されていないようです。
「成果主義」をめぐる誤解や混乱がよく見られるのは「外因的 VS 内因的」なコミットメントの混同に起因すると考えます。
そもそも成果主義と言えば、制度というよりむしろ企業風土のことだとではないかと思います。社員一人一人が成果に対して自ら内因的なコミットメントを高めていこうとする企業風土…これを成果主義というのでしょう。ところが、一般的に「成果主義=成果主義賃金制度」と捉える傾向が多々見られます。賃金制度や評価制度を変えて成果と賃金を直結させ、社員の成果指向性を高めるのが成果主義であると考えがちなのです。しかし、報酬で引っ張るとすれば、それは外因的なコミットメントに過ぎないのかもしれません。
賃金により外因的コミットメントを高めることが、まったく間違っているわけではないのですが、中国で行った調査によれば…
月次の固定給に対してプラス30%程度の奨励給により、非常に大きなモチベーション効果があることが複数の中国企業で確認されていました(営業職の場合)。賃金制度で外因的コミットメントを強化するやり方は、中国では有効に機能しているようです。しかし、日本では30%程度の奨励給では、多くの場合、機能しにくい状況になっているのが現状でしょう。
「お金目当てに働く」ことをあまり美徳としない日本人特有の労働倫理観を挙げる人もいますが、それは日本の生活水準の高さにあると私は考えます。中国のように、今の収入では欲しい物が買えない…しかし、30%増になれば、欲しい物が買えるといったことがあるのでしょう。
今の日本では、生活に必要なもので収入が原因で買えないようなものはほとんどありません。(マイホームの購入を除いては…)報酬の使用価値を考えたとき、30%程度の年収差では生活の質はあまり変わらず、外因的なコミットメントが大きく強化されることはほとんど考えられないでしょう。
アメリカのように、様々なインセンティブ制により、成功すれば巨万の富を得られる仕組みを日本に入れることも可能です。某金融関係企業では、営業職に年収ベースで100倍近い差が出るようなフルコミッション制の賃金制度を導入している例も聞いたことがあります。このような制度は、かなり注意深く運用しないと社員の反社会的な行為を引き起こす可能性もありますが、この賃金制度により、個人で億単位の報酬を得、その活躍により会社も高成長をとげた企業もあります。
その意味では、日本でもきわめてインセンティブ性の高い賃金制度により、もともとお金や地位への指向性が高い人間に対して、短期的に外因的なコミットメントを引き出すことは不可能ではありません。しかし、年収ベースで30%程度の差では、外因的コミットメントの強化は期待できないでしょうし、まして内因的コミットメントにより、成果主義の企業風土を生み出していくことなど、ほとんど不可能と言ってよいでしょう。
成果主義賃金制度に意味がないかというとそうではありません。
例えば、社員が今取り組むべき仕事は「これだ!」と思いつき、自ら提案して、懸命な努力で大きな成果を上げれば、誰から見ても、業績向上に大きく貢献したことは明らかだったとします。本人はお金という外的な報酬が目的で手を挙げたわけではありません。しかし、まったく貢献のなかった人間と同じ賃金だったら、やはり不満を抱くはずでしょう。
私の会社ではこの「コミットメントの質」を賃金査定の目安としています。
(長々書いてスミマセン。社長!大変ですね。)
さのさのさ様ありがとうございました。
きちんとした組織をつくり、きちんとした賃金体系で、仕事が回せるようになりたいと願う今日この頃です。もっと勉強しよう!
初めまして、突然申し訳ありません。
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たくさんのコメント、どうもありがとうございます。
まーくん、「気持ちの数値化」って発想がすごい。さすが理科系。できたら教えてね。
ぴょんさん、「社長の仕事」とかいうとかっこいいんですが、現実は「なんでも屋」なんです、ハイ。
ゆうさん、「部門の利益をオープン」にするのは一長一短なのですね。「一短」の方を見落としてました。「オープンにしていばらず」。ですね。
Dy(さのさのさ)さん、外因的と内因的なコミットメントってすごくわかる気がします。先日田坂広志さんの「仕事の思想」を読みまして、「なぜ働くのか」ということを深く考える機会を得ました。給料のためだけではないとはっきり自覚することができました。
とんちゃん、起業したばかりのときはたいへんですよね。ぼくは純粋ベンチャーではないので(もともと親会社の事業部を分社化)、一から頑張るとんちゃんのことを尊敬していますよ。ともにがんばりましょうね。
harunoshoさん、休日をプレゼントするのもいいですね。問題は社長の社員を思いやる気持ちだよね。きっと気持ちは伝わると思います。
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やっぱり給与改定や賞与査定は大きな関心事であり、経営者にとっては悩みでもあるのですね。自信と勇気をもって乗り越えていくべし、ですね。多少あれこれあっても、必ず理解し合える、日頃からそういう会社運営を心がけてきた。そんな気持ちでがんばります。