NHKの「歴史秘話ヒストリア」で上杉鷹山の特集を見てから約5ヶ月。そのことをブログに書いたら磯輪社長からこの本を奨められてからもやはり約5ヶ月。スグに本は入手したのですが、どうしても小説を読むのってこういう夏季休暇のときとかに限られてしまうのですよね。その間、後から買ったビジネス書をどんどん先に読んでいたのですが、ずっと気になっていたのです。ようやく読むことができました。
歴史小説や大河ドラマは好きで、いろいろ読んだり観たりしますが、この本の自分の第一印象としては「忍耐力の要る本」という感じでした。時代は江戸後期、幕府も各藩も財政窮乏にあえいでおり、天災・飢饉が続いた時代。そこで倹約し、資金を借入れ、人心を整え、産業を興していく話しです。実際、最後の「産業を興していく」部分は少なくて(成果がでるところまでは書かれていません。「どうなるか不安だ」という状況のまま終わってしまいます)、ほとんど全編が藩内改革の話しです。この小説は藤沢周平さんの最後の小説で、本当はあと数十枚の原稿が付加されるはずだったのですが、病でかなわなかったそうなのです。だからかな。最後の「漆の実がみのりました \(^ ^)/ 」って部分がないのですね。ま、漆はそんなにうまくいかなかったにしても、桑、蚕、絹織り物の生産はうまくいったワケだし、それによって米沢藩の膨大な借財はほとんど返済するんだから、「借金返済、できました \(^ ^)/ 」って感じで終わるんだと思っていましたが、そのあたりは違いました。本当にひたすら耐え、改善を続ける話ですが、それだけにリアルで、切実な感じが伝わってきます。
それからこの時代の背景って、どこか現代にかぶるような気がするのです。国も地方自治体も借金漬けで、地震や洪水など天災も多いですよね。政治家や役人たちは改革と言いながらも、過去のしきたりに縛られているし、なかなか自分たちの身を削るような政策を実行できる人が少ない。
そんな状況の中で上杉冶憲(後の鷹山)が20年以上かけて行ってきた改革は、とても実直で、時に激しい人事裁定を含みながらも、一貫して楽天的なように思いました。実直であることと、勇気をもってことにあたることも大切ですが、どこか楽天的なところも、こういう未曾有の不況期のリーダーには必要なのだと思いました。
受次て国のつかさの身となれば忘るまじきは民の父母
治憲が藩主となるときに詠んだ和歌には強い決意と自覚が感じられます。
また治憲が藩主の座を次の冶広に譲るときに贈った言葉
一、国家は、先祖より子孫へ伝候国家にして、我私すべきものには之れ無く候
一、人民は国家に属したる人民にして、我私すべき物には之れ無く候
一、国家人民の為に立たる君にて、君の為に立たる国家人民には之れ無く候
上に立つものの心得がとても印象に残ります。
同じ大不況期を生きる経営者として上杉治憲のようなリーダーになりたいと率直に思いました。
| Trackback ( )
|
|
自分に対する厳しさをあそこまで貫く姿勢に感服です。
ひたむきに取り組んでいくものなのですね。
自分に対して厳しい姿勢を貫き通す生き方も
経営者として見習っていかなければ。
貴重なコメント、どうもありがとうございます。