東京日記
静岡県焼津市、藤枝市、北海道の札幌市にあるIT企業グループの経営者 松田敏孝の日記です。




中国、韓国、台湾、そして日本。このあたりは「儒教文化圏なのではないか」と漠然と感じていました。

「こういう場合はこうするべき」というような価値観。
様々な意思決定をしていくときの拠り所。

そういった目に見えないけれども確実に私たちの中にある伝統的な精神は儒教に依るところが多いと思います。中国や韓国や台湾、そして日本の国民は、国は分かれているけど、そういう共通の精神的な基盤をもっているような気がするのです。何年か前、台湾に行ったとき、強く感じました。

ヨーロッパでは「プロテスタンティズムの倫理」による「正直・勤勉・節約」が倫理的価値観となって、様々な判断を下すときの支柱になっているように、この東アジアの地では「儒教的価値観」である「仁、義、礼、智、信」という5つの徳を積むことが 国を超えて、私たちの正しい生き方、美学として定着しているように思うのです。

仏教はお寺でお葬式のとき、神道は神社でお祭りのときなどに、強く意識することになっていて、いろいろな形で私たちや地域社会に精神的な影響を与えているけど、儒教はこれまで 学校と家庭 という日常の場を通じて、私たちの人間形成の礎となってきたと思います。

その儒教の素晴らしい教えが戦後否定され、日本古来の伝統的精神が弱められてきていることに危機感を募らせると共に、論語を徹底的に勉強し、その精神を支えにして自らの行動を律し、事業を大きく伸ばされたSBIホールディングス 代表取締役CEO 北尾吉孝さんによる経営指南書です。

「ハード(科学的経営)とソフト(倫理的経営)の両方を重視する企業は、自らを変革しながら繁栄し続けることができる」という言葉も、素晴らしい実践と実績が伴っていて、説得力と迫力があります。

経営者やリーダーとしての志をもっている人には全編に渡り参考になります。
ここでは2点ほどご紹介します。

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「私は、うまく世を渡っていく上で重要なことは、『徳』と『縁』だと思っています。『徳』の中でも大事なのは、礼儀という『礼』でしょう。『論語』に、「礼を知らざれば、以て立つことなし」という言葉があります(中略)。朝、会社に来て、別にどっちが上だとか下だとか関係なく、会ったときにお互いに「おはよう」「おはようございます」という言葉をかけるかどうかで、その後が全然違うでしょう。片方が声をかけているのに、もう片方は何も言わずに知らん顔をしているなど、最悪のケースです。こういう極めて簡単なことが大事なのです(中略)。

もう一つは「縁」ということ。これは「ご縁」です。私たちはいろいろな人と巡り会います(中略)。上司に、あれほど毎日寝食をともにするようなつき合いで一生懸命仕えたのに、その人が定年で退職したり、子会社へ行ったりしたらまったく音信不通という例もあるでしょう。それではつまらないだけでなく、その人の人生を狭くしていくと思うのです。お客さまとの関係もそうでしょう(中略)。ご縁ができたものは自ら終わりにしない。そして、できるだけ広く、いろいろな方とおつき合いをさせていただくということが、処世術として非常に重要なことだと私は思っているのです。


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「礼」と「縁」。とてもわかる気がします。挨拶にしても、どうせするならできるだけ大きい声で、元気よく言いたいものです。元気な挨拶は「ご縁」を広げるための第一歩だし、そうしてできた「ご縁」は大切に、こちらから終わりにすることはしない。自分自身が伸びていくために、また仕事がうまくいくための基本中の基本だと思います。

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リーダーは勇気を持って、自らの「胆識(たんしき)」で決断をしなければならない。必要な資質の七番目には、この胆識があげられるでしょう。ここでいう胆識とは、「知識、見識、胆識」という言葉の中の一つです。
「知識」とは、ちょっと本を読んだら頭に入ること。
「見識」とは、そういった知識や経験やいろいろ学んだものを自分なりに消化して、問題に対して自分の意見はこうだとビシッと言えること。
しかし、言うだけではまだ足りません。
「見識」を「胆識」にするためには何が必要か。それは行動力であり、実行力です。
行動力や実行力を伴う見識こそが胆識なのです。

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自分はもちろん戦後生まれで、すでに学校では修身の授業はなくなっていましたが、自分の中にはこれまでお話ししてきた「儒教的価値観」は強く残っているような気がします。でも、それをきっちり実践できているか と言われると痛いところです。今の世の中知識偏重で、さらに勉強すれば 見識まではいくけど、胆識まではいけていない人が多いんじゃないかな。現に知識も見識もワープロのFEPが変換してくれるけど、胆識は「たんしき」と打っても「胆識」とは変換してくれない (^^;) 。

いずれにしても「知識」として知ったこと、そしてそれをやってみようと思った以上は行動、実行に移していくことが大事ですね。特にいくら考えても正解かどうかは最終的にはやってみないとわからない場合とか、意見が賛成、反対に分かれている場合の決断には胆識と勇気が必要になってきますね。


「儒教的価値観」に基づくアドバイスは、日本人としては「言われてみればあたり前」みたいなことが多い。でも、わかっているけど、忘れがちになっていたり、実践できていないことが意外と多いのも事実。それと基本的なことなんだけど、とても大切なこと、それができていないと仕事もうまくいかなくなってしまうくらい大切なことが多い。

日常忘れがちな、基本的で、大切なことに気づかせてくれる、とても励まされる1冊。おすすめです。


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