サブタイトルに「Web2.0時代のまちおこし実践ガイド」とある。そのとおり民営、官営のたくさんの地域SNSが紹介されていて、それぞれの「まちおこし」への取り組みが紹介されている。地域SNSの「今」を知ることができる。
驚いたのはSNS以前に電子掲示板を設置した自治体が733もあったということ。その中で活発に建設的な議論が行われているのはわずかに4団体。実に成功率は0.5%という低さだったこと。その理由は一言で言えば、運営する自治体も、参加する市民も、ネットの中で合意を形成していく手法を知らなかったこと。そのためのルールが現状でも確立されていないことにつきる。
ネットでの合意形成のルールが確立しないまま、ツールは電子掲示板からSNSへ移行していく。熊本県八代市の「ごろっとやっちろ」の成功に誘発されて総務省もNTTデータ社と組んで新潟県長岡市と東京都千代田区で地域SNSの実験を開始する。が、こちらはうまくいっているとは言いがたい状況になっている(実は自分も千代田区の地域SNS「ちょっピー」には参加しているけど、そこで活発に活動しているとは言いがたい)。八代市の場合は小林さんという能力の高い市職員の方の驚異的な頑張りでもたらされた成功のようだ(実際 睡眠時間もかなり少なかったらしい)。
SNSは利用し始めてみると単なるツールではなく「メディア」「プラットフォーム」的なものであることがわかり、まちづくりへの期待はもちろん地産地消的なEC展開などへも期待が高まる。そのためにも前述の「運営・参加・合意形成のルールの確立」が望まれるところだ。
地域SNSの目的が「地域おこし」「まちづくり」にあるとすれば、成功のためのエッセンスとして
1.がんばる人を「ばかばかしい」と思わせない
2.がんばる人を抱え込みすぎない
3.がんばる人がプロ化しない
4.行政をあてにしすぎない
ということをこの本の中ではあげている。
う~ん、どうなんだろう。官営もしくは三セクみたいな組織が運営主体の地域SNSならば 八代市の例で見る限り、行政サイドの方で、ある種クレイジーなくらい熱中して、盛り上げていく人がいないと立ち上がらないような気がする。その人が「ばかばかしい」と感じないようにすることは当然として、ある意味何人かはプロ化しないと、アマチュアのボランティア的な発想だけではこの難事業(なんせ電子掲示板時代には成功率は0.5%なのだから)は立ち上がらないんじゃないかと思った。SNS立ち上げ時のスタッフは重要だ。
ネットの中の合意形成のルール作り と SNS立ち上げ時のスタッフの重要性。
ここにはビジネスチャンスがあるようにも感じた。
民営のSNSの代表格はなんと言っても「mixi」。「mixiが地域SNSなの?」って質問がすぐにきそうだけど、実はミクシィの利用者をみると東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、愛知、福岡など主要な都市圏在住者で70%を占めているとのこと。完全に都市型の「地域SNS」らしい。実際にmixiを使っている人がほとんどいない地域も多く、そういう地域では「対象地域の人口の数%の人が使うだけでも、その地域においては 現在のmixiに匹敵するくらいの存在感を得ることができるのではないか」と指摘している。この発想はおもしろいと思った。実際そういう地域でSNSを立ち上げていくのは困難を極めると思うけど、今、求められている活動なのかもしれない。
SNS構築ツールとしては今のところOpenPNEが圧倒的に使われているようだけど、Linuxのセキュリティパッチもあてられない程度の技術力でインターネット上のサーバを運営することは、外部侵入者に犯罪的な行為の踏み台にされる可能性も高く、たいへん危険であると指摘している。
「SNSレンタルサービスサイトでは、だれでも無料でSNSのオーナーとなり運営することができる。多くのサービスが続々と登場しているが、現在その代表的なものには、「あっとピーネ」、「So-netSNS開設」、「FC2SNS」、「nanoty」などがある」 とnanotyも取り上げられていて、「これらのサイトの多くは、非常に簡単なステップでSNSを立ち上げられるという利点がある」と紹介されている。
ありがとうございます。「地域SNSにもnanoty」ということで、どうぞよろしくお願いいたします。 駅前の地図とセットになったRanoty(ラノティ)もございます (^_^;) 。こちらの方が向くかな。
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地域SNSを成功させるのは、行政側の視点ではなく市民側の視点がポイントになるわけで、行政側はそれこそ全力で頑張って貰わなければなりません。
行政の立場から言えば、窓口を増やすわけですから当然多忙になります。片手間にできるわけがありません。
その上で、市民・区民として参加するには、お互いを尊重するという立場が重要になるのかと。
そうですね。行政サイドの方は当然プロ化して頑張ってもらわないとですね。ただ、現状の地方自治体などを見ると難しいと感じざるを得ない。今、そういう職員の方がいたら貴重だと思うし、上層部の職員の方はそういう人に活躍する場を与えてあげてほしいですね。
一方市民の方ですが、本書が指摘するように「がんばる人がプロ化しない」というスタンスをとることが大事だと思うのですが、これも難しいと思っています。要するに仕事じゃないのでついつい片手間になってしまいます。みんながそういう意識だとやはりSNSは盛り上がらないかも。
とても参考になる成功事例は富士宮市の「やきそば学会」で、ノウハウを聞いてみたいと思っている次第です。
実はポイントは「ビジネスへのメリットを間接的に生み出す」というところにあると思っています・・・(言ってしまった・・・)。