東京日記
静岡県焼津市、藤枝市、北海道の札幌市にあるIT企業グループの経営者 松田敏孝の日記です。




ちょっと前だけど、5月6日(水)GW最終日の19:30から放送したNHKスペシャル「あすの日本」という番組は見ごたえがあった。テーマは「35歳を救え!」。

番組は35歳の人、1万人からアンケートを取り、現状把握するところから始まる。そこから見えてくる「35歳たち」の生活観は驚愕に値する(以下 番組を見ながらあわてて書いたメモの数値なので、若干不正確な部分があるかもしれません)。

「このまま働いていけば将来はよくなると思う」は15%
「以前よりも給料が減った」は42%
正社員勤務している35歳のうち、42%が「今の勤め先は倒産するかもしれない」と思っている。
正社員勤務している35歳のうち、35%が「自分は解雇されるかもしれない」と思っている。

「転職経験あり」は66%。現状の年収が200万円未満の人だけだと82%。つまり転職がキャリアアップにはなっていない。35歳の未婚の人で、正社員勤務している人の30%、非正規社員勤務の人の70%が「将来も所帯をもてない」と思っている。

ここから読み取れることは
・以前と同じ暮らしが難しくなっている
ということと
・将来への不安が広がっている
ということ。

これからの日本を支えなければならない「35歳たち」が希望を取り戻すため、2つの提言を番組ではしていた。

1.安定して仕事を得られる社会 → 積極的な雇用政策
2.安心して子どもを育てられる社会 → 生活支援

この提言はまとを得ていると思った。

「1」の積極的な雇用政策は、「モノ」ではなく、失業した「人」を守る というもの。これまでのように道路や建物など、モノを作る公共投資で景気対策をするのではなく、人に対して適切な訓練を施し、再出発の支援をするための公共投資を行うというもの。イギリスでの事例が紹介されていたが、この政策がうまくいけば、就労者が増えることで、税収が増え、失業者が減ることで失業保険の負担が減る。地味だけどこの効果は大きい。

「2」の生活支援では、まずフランスの「子どもなくして、未来なし」、「子どもなくして継続的な発展なし」という理念が紹介される。そしてその理念を実践している自治体として岡山県の山間の村、西粟倉村が紹介される。まずは「住宅支援」。過疎で住む人がいなくなった家を、移り住んでくる方々のために斡旋する。都会では考えられない広さの家が家賃、なんと2万円。古くなっている部分の改修費は350万円までは村が負担する。次に「子育て支援」。村が運営する託児所のあずかり料は 1人目の子どもが8,000円。2人目は4,000円。3人目は400円! 

そして何よりも驚いたのは、これらの財源を役場の職員の給与カットなど、既存の経費節減から捻出していること。

村では移住してきた若い世代が中心になって、木材加工品を販売したり、さらには住宅販売につなげようとしている。もちろんインターネットも駆使している。この活動もぜひうまくいってほしいと思う。「小さな経済が生まれ、現実的に地域にお金がまわっていくことが重要だ」という村長さんの言葉は素晴らしく示唆に富んでいる。これぞ「村の経営者」って感じだ。

企業としての努力も紹介された。ユニクロの「8時間店長」という制度。主婦で店長になった人たちが閉店までいなくても、18時で勤務を終了できるようにする制度。これにより主婦の退職率が減ったという。このような企業努力もこれから間違いなく重要になってくるだろう。

全編を通していい番組だと思っていたんだけど、最後の「専門家の意見」ということで登場した、慶応の先生とみずほのシンクタンクの意見はいただけなかった。慶応の先生は「西粟倉村のやり方は都会では通用しないし、費用がかかる」とか言ってしまう。都会と過疎の地域で対策が違うのは当然だし、費用は「無駄を省くことで捻出した」と紹介したばかりだ。

みずほのシンクタンクも「これからは財源が必要だからそれなりの覚悟が必要だ」とか言ってしまう。小さな自治体ではあるけれど、貴重な事例を紹介したばかりなのに。

これからは 中央の常識を覆す地域の創意工夫で、この不況を乗り越えていく時代なのだろう。それぞれの地域で、それぞれの「無駄」を省き、そこから生まれた「原資」を、それぞれの地域にあった形で投資していく。それによって「元気な地域」が生まれて、働き盛りの人たちがイキイキと仕事に打ち込めるようになっていけばいいと思う。

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