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帯とけの枕草子〔百十二〕絵にかきおとりする物
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔百十二〕絵にかきおとりする物
絵にかきおとりする物、なでしこ、さうぶ、さくら。物がたりにめでたしといひたるおとこ女のかたち。
かきまさりするもの、松の木、秋の野、山里、山道。
文の清げな姿
絵に描くと劣るもの、撫子、菖蒲、桜。物語で愛でたしと言っている男女の容姿。
描くと優るもの、松の木、秋の野、山里、山道。
心におかしきところ
絵に描くと下劣となるもの、撫でし子の君、想夫咲くら。もの語りで愛でたしという男と女の姿態。
掻き増さりするもの、ひとの気、飽きのひら野、山ばのさ門、山ばのみち。
言の戯れを知り、貫之のいう「言の心」を心得ましょう
「なでしこ…撫子…撫でし子…可愛い子…愛するこの君」「こ…子…おとこ」「さうぶ…菖蒲…壮夫…想夫」「さくら…桜…おとこ花…咲く状態」「ら…状態を表す」「かきまさり…描き優り…掻き増さり」「掻き…かきわける…おしわける…こぐ」「松…待つ…女」「木…き…気」「秋…飽き」「野…やまばではないところ」「山里…山ばのふもと」「山…山ば」「里…女…さ門」「山道…山ばの路」「路…女」。
枕草子は、おとなの女のための読物。「心におかしきところ」は、言の戯れの中に顕われる。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は 「枕草子 新日本古典文学大系 岩波書店」 による