灯【NEW】

秋里とあかりままんの部屋。

月と日の后

2021-12-10 02:36:04 | 小説

某フォロワー様がブログで紹介されていた冲方丁さんの『月と日の后』を読了しました。
一気読みしないように毎日ちょっとずつ・・・と、じわじわ楽しみました。
元々歴史好きで短大で日本文芸専攻でしたので、彰子という人物に少し興味があったのもあってとても楽しめました。
彰子が『幼くして入内』して『一条天皇に心惹かれ』『紫式部と共闘して一条天皇と心通わすまでの流れ』や『道長などの藤原一族の宮廷内策略』などを描きながらも、そこにあった当時の人々の生きる様を、彼女の一生を通して描かれていてとても解りやすかったです。
雛遊びが似合う幼い少女が母になり国母になり、父母兄弟から離れ強く成長していく・・・ある意味、結婚して子供を育てた現代の私達世代にも通ずるモノもある、そんなお話でした。
装丁もとても美しいです。
興味のある方は是非v。

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クララとお日さま

2021-07-14 09:58:33 | 小説

先日某フォロワー様の記事でカズオイシグロの新作が出た事を知り、仕事帰りの秋里画伯に買ってきてもらった。
カズオイシグロはノーベル文学賞を取る以前から『日の名残り』『わたしを離さないで』が大好きだった。
彼の作品の重要な部分には常に【記憶】と言うモノが描かれる。
そして救いに似た【喪失】が、常に彼の作品にある。                     
私は、彼の描く取り残されたモノ達の【記憶】【喪失】の美しさにいつも胸締め付けられて切なくなる。
今作の『クララとお日さま』は、少女のAIの物語だ。
少女AIの視線を通して描かれる文章も彼の作品中一番読みやすいし、色合いも明るい。
しかしその根底を流れるモノはいつも同じ。
お日さまとはそのものズバリではなくて、望みの象徴。
人の【記憶】から【喪失】されるモノは純粋ゆえに消える。
彼らはその運命に、ある意味満ち足りている。
だが哀しみに似た感情がそこに同時に存在している。
無機物に宿る魂と、人々とその魂の在り様の物語。
ある意味それは極めて日本的な八百万神信仰にも似て・・・・。
そのテーマに近いニュアンスは80年代前後の少女漫画で内田善美の描いた『草迷宮・草空間』や佐藤史生の描いた『花咲く星々の群れ』にもあったね。
『クララとお日さま』、私は大好きな物語でした。
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