となりのトトロで、メイとさつきが真っ黒の精霊クロスケに会う場面があります。真っ黒クロスケは、煤ワタリ。幼いピュアな子には見えるけど、大人には見えなぁ。そこらじゅうを真っ黒にし、身体も真っ黒にします。引っ越した古い家にいた可愛い精霊です。
このクロスケととても似た精霊が、千と千尋の神隠しの釜爺の所でも出てきます。釜爺はせっせと火を焚くから煤が沢山そこら辺にいます。
宮崎駿監督にとっては、煤ワタリ、真っ黒クロスケは愛すべき精霊なんだと思いました。
トトロの舞台と思われる、大分県南部の佐伯市宇目木浦鉱山には、「木浦鉱山すみつけ祭り」があるようです。これは元々、鉱山での安全を祈願する祭りのようです。
佐伯のすみつけ祭りは、みんなですみを付け合い真っ黒になるのが縁起が良いとされる祭りで、なかなか奥が深そうです。
下記、引用します。
傾山は、全国屈指の銀山として栄えており、このお祭り(奇祭)は400年前から伝わる行事。旧暦の正月11日に、鉱山の守り神「山ん神」に安全を祈願するお祭りです。
落盤事故があった時に、家で墨をつけて遊んでいて助かった若い男性が真っ黒だったことから、鉱山の安全を願って墨をつけるようになったという説があります。
祭りでは輪切りにした大根に墨をつけ誰彼かまわず顔に塗ります。顔についた墨が多いほど縁起が良いとされ皆笑顔で歓喜にあふれます。
境内には地区の若者が長さ5mもの竹に、約1,500枚の飾り紙を付けたご神体「大幣」(おおべい)を飾り荒神による舞を先頭として地区の中を練り歩く際には「大幣」を担いで回ります。
各戸を厄払いする荒神は打ち鳴らす太鼓にのって家の中と外で舞い、家の人は酒やご馳走で一行をおもてなしする風習です。
火の神様、荒神の赤い面や衣装は木浦鉱山で産出していたスズの紅色鉱の多産を願ってとのこと。
山神社を出た荒神一行は地区の厄払いを終え熊野神社の鳥居に大幣を立ててすみつけ祭りは終了となります。
過疎・高齢化で一度中止(2005年)に追い込まれましたが、2008年地元の人たちが復活させました。
ここまで
なんだか、笑いが絶えないお祭りみたいで、この地の銀を生む山神様、火の神様荒神様、煤を出す竈門の神様も喜んでそうです。熊野大社とも縁があるんですね。
となりのトトロで、2人が真っ黒クロスケでておいでーと笑いながら歌う場面は、なんとなく、真っ黒になるのを楽しむこの奇祭を想像させます。
イザナミ様は、火の神様を産み亡くなりました。神道では、死を穢れと捉える側面があります。
火の神様ヒノカグチ様は、母の死の原因をつくり父に斬られるという悲しい側面もついている気がします。
炭や、煤は、火を焚くと出てきます。炭や煤はあたりを真っ黒にします。火の神様が出す副産物かなと思います。火はあたためたり、煮炊きにより食べ物を食べられるようにしたり、食を殺菌したり。
火は人にとって無くてはならないけれど、火は怖くもあります。黒い炭や煤は、年末の大掃除の煤払い、ススのことばなんかからも、祓うべきもの、穢れのイメージがつきまといます。赤や青の火は怖さもあります。
しかし、そんな事は気にしない、一部分だけ見て嫌がらない、すみつけ祭りは、ススもスミも全てひっくるめて、凄い恵みを与えてくださる火の神様、荒神様に感謝して同化するお祭りのように思います。
皆んながクロスケになると笑えます。お笑いはおはらい!ひとり汚れていたら、汚いとか穢れるとか言って差別されたり。黒人差別なんて、顔の色だけでおこりました。酷い話です。
煤とは違いますが、高知や、愛媛(伊予)にはどろんこ祭りがあり、お田植えの際、皆んなに泥をつけ、豊作を祈願します。
神様の御心には、区別や差別もなく皆んなが一様に可愛いのだと思います。自分の分け御霊ですから。しかし、人は見た目の美醜で差別することもあります。
見た目の美醜なんて関係ない、土や泥や炭や煤で「見た目」を真っ黒にして、そんな差は笑い飛ばしてしまおう!というお祭りは実はとても大切な神事だと思いました。
人は、年をとると容貌も衰えるし、生まれながらに顔形の美醜もあります。コンプレックスの無い人の方が少ないと思います。
しかし、肝心なのは心の美しさであり、磨こうと決めれば誰でも磨けるし、自分で自分の心だけは穢さないと決めることはできます。この身魂だけを神様は見てくださっていると信じています。
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