昨日のつづきです。
100年に一度の夜がやってきました。山の神様は月に乗ってやってきて、御神木と呼ばれる一本の木を選びます。日本には沢山の山があるので、その山々をまわるには、坐ることのできる三日月がちょうど良い乗り物でした。
新芽やキノコや夜行虫が、三日月にのった神様を歌や踊りでもてなし初めました。土の中から、モグラも顔を出して、今か今かと待っています。
月に腰掛けたお山の神様は、お供の猿を膝に乗せて一緒に山の頂上に降りてきました。あまりの神々しさに、時が止まる静けさがあたり一面に広がりました。神様は何も言わずフーッと息を吹きかけました。その息はキラキラと小さな星の粒となって一本の木を包みました。
どの木も自分かな自分かなと目をつぶってドキドキして待っていました。しかし、光に包まれた一本の木を見てみんなびっくりしました。
神様はキノコが生えて今にも枯れかけた梅の木を光で包んだのです。
その梅の木は葉も実もなく今にも枯れかけていて、身体にはキノコが沢山生えています。あまりにも痛々しい姿に、木々の中には目を逸らしたり、中には、あの木に自分が負けたのが信じられなくて、呆然としている木々もいました。
お山では、木にキノコに住みつくとどんどんと体のエネルギーを奪われて最後は死んでしまうのだと言われていました。
だから、木々はキノコの赤ちゃんである胞子が飛んで来そうになると、風にフーッと吹き飛ばしてもらったり、小鳥や蝶々にたのんでで遠くに運んでもらっていたのです。
「どうしてお山の神様は、あんなみすぼらしい梅の木を選んだの!花も実もつけないじやない!」
「信じられない!」
と、木の葉も穏やかではありません。怒ってしまうリスや小鳥さえいました。
選ばれた理由は選ばれた梅の木と神様だけの秘密です。
つづく
【画像は三日月検索画像より】