ステージマネージメントのステーシィから電話。なんだろう???
「あーノリコ、今日はドライテックなんだけど、ガントリーが上手くいってなくて。ほら、乗っていて時々ガタガタすることあるでしょ。今日はそれを直すのにオイルを交換しているのだけど、予定開始時刻の4時半までに終りそうもなくて。きっと6時半、もしかするとそこまでにも終わらずにドライテックはできないかもしれない。これは初めてのことで、あ、ノリコに連絡しないと、と思ったの。」
私は笑いながら返事をしていました。ガントリーは一番大きな舞台、クリフデッキを動かしているところ。それが動かないのは大変なことなのですが、それより、わざわざ私にその連絡をして下さったことが嬉しくておかしくて。練習しに来るのはかまわない、ということなので、練習しながら修理が上手くいくことを願い、ドライテックに参加させて頂けるよう、待つことにしました。
4時半も過ぎた頃MGMに到着し、舞台の裏から下を覗くと、ガントリーはまだまだ動かない様子でした。その担当ではない人達は、ただ待つしかないようで、みなの様子を見ていると、面白くて笑ってしまいました。
こう笑っていられるのも、今日はアーティスト抜きのリハーサル“ドライテック”だから。明日はお客様を入れてのリハーサル“ドレスリハーサル”。ドレスリハーサルの日がこのような状態であったら大変なことですが、バックステージテクニシャンだけのリハーサルは、みなが何となくのんびりと構えていて、笑うことができました。
更衣室へ行くとカギが閉まっていました。以前もこのようなことがありました。それなのに、今日は靴を忘れてしまいました。まあ、身とフルートはあるので何とかなります。
トレーニングルームでゆっくりと身体を動かしていると、アーティスティックコーディネイターが来ました。
「一年間、父役なしで良くやりましたね。そして、強いキャラクターの演技は本当に良くなりました。私はその強くなったキャラクターが気に入ったので、父役は戻ってきますが、あなたのキャラクターは以前のようには戻さずに、そのまま行きたいと思っています。」
「OK。」と返事はしたものの、内心はがっかり…。本当にがっかりです。
そのうちにガントリーが動く音がしました。どうやらドライテックが出来るようです。でも、それからもなかなか始まりそうになく、振付を丁寧に確認したり、ゆっくりとバトンの練習をすることが久しぶりに出来て、楽しくなりました。
練習をしていると、放送が入りました。「ノリコ、タカハシ。」となぜかフルネームを呼んでから「まだこの建物にいるようでしたら、ドライテックがあと15分後ぐらいに始まるので、お知らせいたします。」とステーシィ。有り難いことです。その後、15分経っても始まりそうにないな、と思っているとまた放送。「ノリコ、タカハシ。」とまた名前を言ってから、「聞こえているといいのですが、ドライテックは6時50分、7時10分前から始めます。」と。私はこのドライテックに“お邪魔”している身なのに、今日は本当に気に掛けて下さって、本当に有り難いと思いました。
ドライテックは、最近スムースに運ぶようになったのですが、今もなお時間が掛かるところがテントから鳥になって飛ぶところ。それは、ショーの中ではアーティストがするのですが、ドライテックにはアーティストがいないので、リガーがやります。羽を開くのが大変なようで、いつも時間が掛かります。でも、今日は一度曲は止めたものの、時間があまり掛かりませんでした。次は、私が踊る場面なので急いで客席に行くと、舞台の近くにいたテクニカルディレクターのエリックが寄って来て、そこからラジオでステーシィに確認をして下さいました。音楽が劇場中に鳴り響いているので、彼は言葉ではなく、親指を上げて私に大丈夫だと合図をすると、舞台の方に戻って行きました。みなさん、本当にありがとうございます。
鳥はすぐに飛んだのに、今日はその後に時間が掛かりました。それを待ちながら、ほとんど灯りのない客席でフルートを回していると、一本のフルートが壊れていることに気付きました。先程、やはり真っ暗なバックステージで練習をしている時に落としたのが悪かったようです。でも、今日は更衣室が閉まっているので替えはありません。
ようやくリフト5があがり、舞台が整えられると、ショーの曲が流れ続けている中、ステーシィの声で「ノリコ、舞台に上がっていいですよ。」と放送が入りました。私は客席から舞台によじ登って、ドキドキしながら舞台と自分の様子をみました。
規則としては、ショーで使う靴以外で舞台に上がってはいけないので、私は黒い靴下のまま舞台に上がり、見付からないようにしていました。少し滑ります。
曲が踊る場面になり、私は踊り始めました。壊れたフルート、靴下の足、二週間ぶりの舞台。トレーニングルームで自由気ままに踊っていた時のようにはいきません。緊張がそうしているのか、悪条件がそうしているのか。
「でもね、二週間ぶりなんだから。ここで上手くいったら、毎日毎日やっている時と変わらなかったら、ねぇ…。」
最後は少し顔に当ててしまいました。それでも、思いがけず上の方から拍手。働くみなさん、予定より二時間以上も待ってようやく始まったドライテック。私には、アーティスト抜きの舞台だけの動きをモニターで見るのはいろいろな発見があり楽しいことでしたが、みなさんには、機械だけを、それも裏から見るのはつまらなかったのかもしれません。そこへ出てきた生身の人間を観るのは、ちょっと違っていて楽しかったのかもしれません。今日はあまり上手く踊れませんでしたが、お世話になっている方々の少しの楽しみになっていたのなら、それはそれで役立ったということにします。
時間も遅くなってしまったので、早く帰り支度をしてMGMを出ました。そこへ照明の方がいらして「今日はノリコが来ないのかと思ってドキドキしていたよ。もし来なかったら、しょうがないから僕が踊ろうかと思っていたんだよ。」と言いながら、私のまねをして踊ってくれました。彼らの話を聞いていると、私がドライテックにお邪魔をすることは、彼らの楽しみにもなっているような気がして、嬉しく楽しくなりました。
「あーノリコ、今日はドライテックなんだけど、ガントリーが上手くいってなくて。ほら、乗っていて時々ガタガタすることあるでしょ。今日はそれを直すのにオイルを交換しているのだけど、予定開始時刻の4時半までに終りそうもなくて。きっと6時半、もしかするとそこまでにも終わらずにドライテックはできないかもしれない。これは初めてのことで、あ、ノリコに連絡しないと、と思ったの。」
私は笑いながら返事をしていました。ガントリーは一番大きな舞台、クリフデッキを動かしているところ。それが動かないのは大変なことなのですが、それより、わざわざ私にその連絡をして下さったことが嬉しくておかしくて。練習しに来るのはかまわない、ということなので、練習しながら修理が上手くいくことを願い、ドライテックに参加させて頂けるよう、待つことにしました。
4時半も過ぎた頃MGMに到着し、舞台の裏から下を覗くと、ガントリーはまだまだ動かない様子でした。その担当ではない人達は、ただ待つしかないようで、みなの様子を見ていると、面白くて笑ってしまいました。
こう笑っていられるのも、今日はアーティスト抜きのリハーサル“ドライテック”だから。明日はお客様を入れてのリハーサル“ドレスリハーサル”。ドレスリハーサルの日がこのような状態であったら大変なことですが、バックステージテクニシャンだけのリハーサルは、みなが何となくのんびりと構えていて、笑うことができました。
更衣室へ行くとカギが閉まっていました。以前もこのようなことがありました。それなのに、今日は靴を忘れてしまいました。まあ、身とフルートはあるので何とかなります。
トレーニングルームでゆっくりと身体を動かしていると、アーティスティックコーディネイターが来ました。
「一年間、父役なしで良くやりましたね。そして、強いキャラクターの演技は本当に良くなりました。私はその強くなったキャラクターが気に入ったので、父役は戻ってきますが、あなたのキャラクターは以前のようには戻さずに、そのまま行きたいと思っています。」
「OK。」と返事はしたものの、内心はがっかり…。本当にがっかりです。
そのうちにガントリーが動く音がしました。どうやらドライテックが出来るようです。でも、それからもなかなか始まりそうになく、振付を丁寧に確認したり、ゆっくりとバトンの練習をすることが久しぶりに出来て、楽しくなりました。
練習をしていると、放送が入りました。「ノリコ、タカハシ。」となぜかフルネームを呼んでから「まだこの建物にいるようでしたら、ドライテックがあと15分後ぐらいに始まるので、お知らせいたします。」とステーシィ。有り難いことです。その後、15分経っても始まりそうにないな、と思っているとまた放送。「ノリコ、タカハシ。」とまた名前を言ってから、「聞こえているといいのですが、ドライテックは6時50分、7時10分前から始めます。」と。私はこのドライテックに“お邪魔”している身なのに、今日は本当に気に掛けて下さって、本当に有り難いと思いました。
ドライテックは、最近スムースに運ぶようになったのですが、今もなお時間が掛かるところがテントから鳥になって飛ぶところ。それは、ショーの中ではアーティストがするのですが、ドライテックにはアーティストがいないので、リガーがやります。羽を開くのが大変なようで、いつも時間が掛かります。でも、今日は一度曲は止めたものの、時間があまり掛かりませんでした。次は、私が踊る場面なので急いで客席に行くと、舞台の近くにいたテクニカルディレクターのエリックが寄って来て、そこからラジオでステーシィに確認をして下さいました。音楽が劇場中に鳴り響いているので、彼は言葉ではなく、親指を上げて私に大丈夫だと合図をすると、舞台の方に戻って行きました。みなさん、本当にありがとうございます。
鳥はすぐに飛んだのに、今日はその後に時間が掛かりました。それを待ちながら、ほとんど灯りのない客席でフルートを回していると、一本のフルートが壊れていることに気付きました。先程、やはり真っ暗なバックステージで練習をしている時に落としたのが悪かったようです。でも、今日は更衣室が閉まっているので替えはありません。
ようやくリフト5があがり、舞台が整えられると、ショーの曲が流れ続けている中、ステーシィの声で「ノリコ、舞台に上がっていいですよ。」と放送が入りました。私は客席から舞台によじ登って、ドキドキしながら舞台と自分の様子をみました。
規則としては、ショーで使う靴以外で舞台に上がってはいけないので、私は黒い靴下のまま舞台に上がり、見付からないようにしていました。少し滑ります。
曲が踊る場面になり、私は踊り始めました。壊れたフルート、靴下の足、二週間ぶりの舞台。トレーニングルームで自由気ままに踊っていた時のようにはいきません。緊張がそうしているのか、悪条件がそうしているのか。
「でもね、二週間ぶりなんだから。ここで上手くいったら、毎日毎日やっている時と変わらなかったら、ねぇ…。」
最後は少し顔に当ててしまいました。それでも、思いがけず上の方から拍手。働くみなさん、予定より二時間以上も待ってようやく始まったドライテック。私には、アーティスト抜きの舞台だけの動きをモニターで見るのはいろいろな発見があり楽しいことでしたが、みなさんには、機械だけを、それも裏から見るのはつまらなかったのかもしれません。そこへ出てきた生身の人間を観るのは、ちょっと違っていて楽しかったのかもしれません。今日はあまり上手く踊れませんでしたが、お世話になっている方々の少しの楽しみになっていたのなら、それはそれで役立ったということにします。
時間も遅くなってしまったので、早く帰り支度をしてMGMを出ました。そこへ照明の方がいらして「今日はノリコが来ないのかと思ってドキドキしていたよ。もし来なかったら、しょうがないから僕が踊ろうかと思っていたんだよ。」と言いながら、私のまねをして踊ってくれました。彼らの話を聞いていると、私がドライテックにお邪魔をすることは、彼らの楽しみにもなっているような気がして、嬉しく楽しくなりました。
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