いじめの時間江國 香織,角田 光代,稲葉 真弓,野中 柊,湯本 香樹実,大岡 玲,柳 美里朝日新聞社このアイテムの詳細を見る |
50年代60年代生まれの女性作家7人のいじめがテーマの短編集。
読み進んでだんだん気分が悪くなってきた。
いじめのターゲットは弱い方へ弱い方へと向かう。
小説の場所設定は学校だった。
ひとつだけ大岡玲の「亀をいじめる」は大人である父親が主人公だった。
人より弱い、しかもわざわざペットとして飼っている動物虐待の描写はむかつきを覚えた。
二編目のこれに出会った時点でこんな本を手にしてしまった事を後悔しはじめた。
出版は10年以上前。ちょうどいじめ自殺が問題になった頃か?
決して過去の学校模様と読み捨てられない。
今も誰かがいじめられている事実。臭い物の蓋を開けてしまった気分。
学校だけでなく大人の集団にも存在するが、逃げ場があるだけ学校ほど悲惨にならないだけかも。
パワハラも窓際もある意味、いじめの変形だろう。
七人の描いた架空の話の色調がなぜか似通っている。
明るくポップに語れないテーマなのだ。
最後の稲葉真由美「かかしの旅」だけは
学校から家から脱出して自分再生の旅に出ることで希望の光が射している。
前6編が「小説TRIPPER1996年冬号」掲載なのに対して
「かかし…」はこの本のための書き下ろし。
もしかすると、読者が気分下降のままで終わらないための編集者のおまけかも?
いじめている側の屈折と
存在否定受けて壊れて行く側と
人は人によって作用されるなんとひ弱な存在だろうか?