3編の小説から構成される。
どれも劇的な展開はなく淡々と時間が流れ、淡々の中に熟成するものがある。
ほっくりとあたたかい。
秋の日差しみたいな小説?
『あなたがここにいて欲しい』と『男子五編』は
幼少から大人になるまでの流れで描かれていた。
最後の『ハミングライフ』は
公園のノラに餌をやる知らない同士が、木のウロにメモだけの交換で繋がってゆく話。
メールだツイッターのと交信タイムが短縮の一途の中。
猫に餌やりのついでにウロに手紙を置くという古典的手法で
じわじわ気持ちが近づいて、出会いへと発展してゆく。
はじめてのデートは映画。
暗闇でテケルイルイですか。
テケルイルイは照れますね。ナミナミくらいにしておきますか。
アイヌ語でテケルイルイは握手、ナミナミは笑うという話の交信が先にあって、
ふたりだけに通じるノリ。ウロ仲間のノリ。
どれも良かったけれど、陽だまりのねこを想像させる『ハミングライフ』が一番良かったかな?