気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

心を映すカメラ

2015-04-08 08:09:18 | 日記

 

 


 昨年80歳で亡くなった作家の渡辺淳一さんが書き残した、自身の結婚式でのエピソードである。仲人を務めた渡辺さんの恩師は、心配でたまらなかった。女性関係が華やかだった渡辺さんの結婚式が、無事に済むわけがないというのだ。

 ▼控室から披露宴の会場に向かう段になって、先頭を歩く恩師が、後ろの渡辺さんにささやいた。「君が先に行きなさい。角に、硫酸でも持った女性がいると大変だからね」(『風のように・返事のない電話』講談社文庫)。

 ▼古今東西、硫酸が凶器となる犯罪は、絶えることがない。ただしたいていの場合、被害者になるのは女性である。イラン中部の町では昨年、男が女性に硫酸を浴びせる事件が連続して発生し、社会問題化した。被害女性はいずれも、国内で義務づけられている全身を覆う服装ではなく、ささやかなおしゃれを楽しんでいた。このため、「宗教的に保守色の強い人物の仕業」との見方がネットに流れたのだ。

 ▼中国の上海市では約20年前、女性銀行員が、かつての男友達に硫酸をかけられて、顔にひどいやけどを負う事件があった。「容貌を損なう重傷を負わせたことは、卑劣で残忍な犯行だ」として、裁判所はなんと被告に、死刑判決を言い渡した。

 ▼群馬県高崎市でもここ数日、女性が硫酸をかけられて軽傷を負う事件が相次いでいた。現場付近の防犯カメラには、被害女性の近くで不審な動きを見せる男が写っていた。群馬県警が公開した画像は、知り合いなら一目でわかるほど鮮明である。あっという間に通報があり、市内に住む30歳の男が逮捕された。

 ▼ただ、見ず知らずの女性を次々に襲う動機がさっぱりわからない。最新のカメラでも、ゆがんだ心の形までは映し出してくれない。

【産経抄】4月8日

 

<memo>

・今日、お隣さんの畑を耕す。花見の飲み会出席。