気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

「ゼロサム」という経済用語がある。一方が…

2015-06-03 11:38:57 | 日記

 「ゼロサム」という経済用語がある。一方が利益を得たならば、もう一方はそれに見合う損失を被る。つまり全体としてプラスマイナスゼロになることを意味する。

▼福井県内市町で「プレミアム付き商品券」が続々と発売されている。地元商店で使えば、例えば1万円で1万2千円の買い物ができる、ちょっとお得な金券である。

▼国の地方創生関連交付金などを活用し、全国97%の市町村が商品券を発行するという。もちろん地域の消費拡大、そして低迷にあえぐ地方経済の景気づけが目的だ。

▼確かに2千円分の上乗せで、購買意欲が湧くかもしれない。だが額面通りに行くかは未知数。他所で買うのを地元に変えたとか、今後の買い物予定を早めただけなら、結局は「ゼロサム」に帰結する。

▼福井市出身でブランド総合研究所社長の田中章雄さんによると、1999年の地域振興券の時も生活必需品の購入や買いだめが主流で、新たな消費は生まれなかったという。

▼この反省から今回は旅行や宿泊の需要を創出する「ふるさと割」や「プレミアム宿泊券」も登場。ただし帰省や出張に利用されたのでは元も子もない。

▼田中さんはお得感より、新しい需要の掘り起こしが大事という。女性化粧品でおなじみのサンプルのように、認知度を高めたい新商品や特産品をアピール。そんな工夫があってこそ消費は拡大する―と提言する。

2015年6月1日 福井新聞コラム欄「越山若水」より