気の向くままに

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「スリに注意」という看板の近くにはスリがいる…

2015-06-16 06:44:19 | 日記


 「スリに注意」という看板の近くにはスリがいるという話がある。こんな注意書きを目にすれば、少なからぬ人が反射的に自分のポケットの財布が盗まれてはいないかと確かめる。スリはそれを見ていて、財布のありかを知るというのである。

▲米評論家の書いた「詐欺とペテンの大百科」(青土社)にある話だから、これはスリには世界的常識か。悪知恵にたけた連中にかかっては善良な人々への注意すら悪事に利用される。日本年金機構の情報流出の罪深さは詐欺師らにそのタネを山ほど与えたことだろう。

▲問題発覚後初の年金支給日となったきのう、機構側は年金が振り込まれていなかったり、本来の受給額と違っていたりしたら年金事務所の窓口や専用電話窓口に相談するよう呼びかけた。その一方で機構側から加入者に直接電話することはないと繰り返し訴えている。

▲先に年金情報流出後初の関連詐欺と報じられた事件では、年金機構や消費者相談センターの職員、弁護士などを名乗る人物が入れ替わり電話してきて個人情報の流出を告げたという。不安につけ込んで被害者を取り巻くウソの状況を信じさせる劇場型の手口であった。

▲高齢者にだまされないよう呼びかける年金機構や警察の注意や警告すら、詐欺師どもは彼らの劇場の舞台装置として利用しようとする。受給者としてはもしも何か異変があれば、常に自分の方から警察や年金機構に問い合わせたり、相談したりするように心がけたい。

▲被害者を受け身の状況に追い込み、信じさせたいことを刷り込もうとする詐欺師らの手口である。自分からかける1本の電話で崩れるそのたくらみだ。

2015年06月16日 毎日新聞