気の向くままに

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人工島

2015-06-14 10:39:53 | 日記

2015/6/14付  産経

 かつて南太平洋のマライタ島の住民はサンゴ礁に石で造った人工島に住んでいた。本島に通い、畑作や交易をしていた。マラリアを防ぐためなど理由は諸説ある。中でも、世界の始まりを語る「創世神話」を再現しているという説が、太古の青い海へ空想をかきたてる。

▼釣り針が海底にひっかかり、引き上げると島が浮上する。何もない海に突然、陸地が現れ世界が始まる。南太平洋には「島釣り神話」と呼ばれる創世神話が広がっている。文化人類学者の後藤明南山大教授によると、人工島を造って住むのは「創世神話の再現であり、祖先に感謝し、海の民の誇りを確認する意味がある」。

▼中国には島を探す話が伝わる。海の向こうに神の島がある。黄金の宮殿に仙人が住み、不老不死の薬がある。薬を求め始皇帝など歴代皇帝は大船団の探検隊を派遣したが、いずれも失敗した。この伝説を再現したい、島を探そうと考えたはずもないが、ここ数年、南シナ海などへしきりに船を出し、海洋活動を強めている。

▼南沙諸島では南洋の神話も顔負け。なければ造ればいいとばかり、岩礁を占拠し、埋め立てて島を造成した。ついには、滑走路や桟橋、ビルまで建てた。ただの人工島ではない。実態は立派な軍事基地だ。そこには海の民の誇りはかけらもない。幸せの妙薬どころか、不測の衝突も招きかねないリスクが膨らみ続けている。

 

ポートアイランド、神戸空港(点前)

 

南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で進めている人工島