月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

いよいよ台北最終章。小さな国で、もっと小さな自分と見つめ合う時。(6)

2013-11-04 17:52:56 | 海外の旅 台湾編



5時過ぎには目が覚めた。
シャワーブースに飛び込み、ぼんやりした頭を覚醒させたら、文庫本をもってバスタブへ。
昨日夜市にて買い求めたフレッシュマンゴーの果肉を口の中にほうり込む。
あ~至福!朝のビタミンC。 お風呂で行儀悪く食べるのは最高だ。

7時には1階の朝食バイキングへ降りていった。
最後のホテルラウンジだ。いい緊張感と、爽やかな朝の空気がみなぎっていた。



私たちは、朝から食欲旺盛。焼きたてパンやベーコンエッグなどの洋風メニューはカットして、
お粥やラーメン、台湾惣菜をたくさん食べ、コーヒーを3杯もお代わりして。
デザート類もたくさん食べた。

さあ、この日はどこへ行こうか。

「101」や「誠品書店」に行って、旬のファッションを見ようか。
老舗茶芸館「紫藤盧」(80年前日本統治時代大正末期に建てられた日本家屋の風格を残したまま、改装を重ねてきた建物)に
タクシーで行こうか。それとも、
台湾一の漢方、乾物、布問屋街としてにぎわう「迪化街」とハイソな「中山」界隈か。
ああ、やはりあと1日は欲しかったなぁ。
調べてみると、どの街のどのショップも、11時にならないとオープンしない。
毎晩、夜市でエキサイトする台北市内は、昼前じゃないと活動しないのか。なるほどと妙に納得する。

それで、「故宮博物館」に9時から出掛けることにした。(ここを観ずにして日本に帰るのも忍びない)

「故宮博物館」のオープン時間にあわせてタクシーを急がせ、混雑する前に入館。

手荷物を預けると、悠久の歴史にどっぷりと浸かることができた。

(ホームページから引用)

故宮博物館のすごいところは、
新石器時代から青銅器時代、宗、栄、明晩期、清晩期と…、時代をさかのぼって観覧できるところ。
そして、王家の秘宝から、磁器、暮らしの用具、書、美術、家具と一堂に展示されているから、見ごたえたっぷり。
それに、博物館といっても、美術館のような部屋もあり、
書画の展示室は2F階の西側で、「筆に千秋の業あり」、「造形と美感」とそれぞれ書法と絵画の常設展を開催。
3Fの303展示室および305、307展示室では「新石器時代」と、「古代青銅器の輝き-中国歴代銅器展」などの器物展覧。304展示室では「名匠の魂と神仙の業―明清彫刻展」を。
中国歴代陶磁器、皇室コレクション、家具、漢字の源流、玉石彫刻、宝飾などの常設展のほか特別企画もしている。

真っ赤な絨毯を進み、2階、3階もオール見学。
小さな展示の部屋もざーっと訪ねて、有名な清の「翠玉白菜」「肉形石」までほぼ観た。



驚いたのは、日本の博物館では古いものはセピア色に褪せ、古布の絵画なども見えないほどボンヤリした表情で、
時間の経過さえ価値あるものとして見せるのに対して、この国の宝物類はよほど修復技術が素晴らしいのかしら。
実に鮮やか、真新しいまでにピカピカに輝いている。

そして、最新映像技術などを駆使した3Dの世界も(古代の美術や暮らしの紹介)も採用され、
新旧の融合が違和感もなく調和しているのが、逆にユニークに思えた。

明代前期からの磁器・漆器や家具。暮らしの用品に、花鳥画の絵画は特に美しかったが、
それでも、日本贔屓なのか日本の奈良時代や平安の頃の宝物のほうが、趣があるなぁと(失礼なこと)思ったりしながら、
たくさんの傑作や宝物の数々を2時間くらいかけて観た。
1階2階のミュージアムも充実していた。



このあと、タクシーで「台北圓山大飯店」(グランドホテル)まで行って写真撮影。




そして、宿泊先であるシェラトン台北の裏手にある茶藝店「徳也茶喫」で
角煮や点心、宮廷菓子、烏龍茶のランチメニューを予約していたので、急いで戻るようにお願いしていたのだった。


それが、えらいことになったのだ。
はじめて、あまりよろしくない台北の人に出くわしてしまったのである。

タクシー運転手は、乗った瞬間から饒舌で超笑顔。
なんて人懐っこくて、感じのいい運転手さんだろうと思ったりしたのは乗車してほんの5分だけだ。

もう、カタコトの日本語と英語、台湾語のミックスでしゃべる、しゃべる。

そのほとんどの内容が「私は日本人大好きです。日本人の誰々さんをどこそこに案内した..」
「◎◎さんは知っている。◎◎さんもよい人だった」
「誰々は友達だ」
と、こちらの知りもしない一般の日本人の名前を羅列。「日本の大学は素晴らしい」「日本の鎌倉はよかった」という自慢話オンパレード。
そればかりか、運転が危ういのだ。

しゃべりながらも、日本人の名刺や書いたメモ帖を出そうとして、ハンドルはフラフラ。
何度、前の車と激突しそうになったことか。どんどん、後ろから横から抜かされていく。

わたしたちの予約していた時間は11時半。
12時半には、旅行会社の車で空港に向かわねばならない。
今日は台北の最終日。ほんの数分でも貴重で大事にしたいところだったのである。
だから、急いでほしい!とお願いしても、無視。
大丈夫、OKと、マイペースでにこやかに喋る、喋る。

朝には20分たらずでぶっ飛ばした高速道路を、往路には25分かかっても市内に入らないのだ。

あげくの果て、予約していた「徳也茶喫」は、「よろしくないからね~」と、いい、茶文化について論じたあげく、他店を紹介しはじめる。
さあ、温厚で人の良い私だって、そろそろ切れ出した。英単語連発で
半ば命令的に行き先を懇願しはじめた。

しかし、ここで、怒り爆発する事態が…。

なんと市内にようやく入ったと思いきや、着いた茶藝館は、お目立ての場所ではなく
運転手の知り合いの茶商だったのだ。
烏龍茶の卸・小売り専門店。試飲もできないし、茶藝を愉しむことなんて全くできない
古い裏路地の倉庫のような店だった。


中から「いらっしゃいませー」と厚化粧の小太りマダムがでてきたのだから、ビックリである。
すぐにマダムに事情を話して、梨山烏龍茶を購入したから「ノーサンキュー、ノーサンキューね」を連発。
再び、タクシーに乗り込んだ時は、不機嫌このうえない。
徳也茶喫!早く!を連呼する始末。

しかも、このタクシー運転手。迷いに迷って店をさーっと通り越し、大通りでウロウロ。
もうー、私は完璧に切れた。
だって店は、宿泊ホテルの真裏ですもの。
強い口調を発して、タクシーを途中で降りて(料金は支払いましたよ)。
なんと地図傍らに徒歩でようやく目的地へ辿り着いたのだ。
店の扉をあけて息を切らし、アンティークの重厚な紫檀の椅子に座ったのはナント、ピックアップの時間20分前。

熱いお湯が運ばれてきて数分。
はあ~。喉渇いていたのよ~と思うや、料理を作るのが10分はかかるという。私はお茶を飲まずして、さっそく台北シェラトンに戻って事情を話し、
出発を15分遅らせてほしいと、現地コーディネーターに頼みこんだのだが…。(飛行機が飛ぶのは4時、現在は12時20分)
あれほど優しくて融通の利く台湾人はいずこに。(やはりチップを払うから、と言えばよかったのだろうか)
いきなりルール違反だと怒りはじめたのである。

ということで、私たちはせっかくのお昼セットをキャンセルし、お腹も満たされないまま
台湾桃園国際空港に戻らねばならなかったのである。

哀しい~。せめて、注文した烏龍茶(文山包種茶)は飲みたかった。


しかし、2泊3日の台北への旅。心残りを置いてきたまま飛行機に飛び乗ったのは、
まあ考えようによっては良かったのかも知れない。再びリベンジを決意できるに違いないから。

振り返れば、いろいろ蘇る、あれこれ。小さな失敗は数しれず。
(旅をすれば、素の、とても子どもっぽい自分にも遭遇するわけで…。自分発見の時でもあるのだ)

あえて言おう。
台北の魅力は、日本人とみればともかく声をかけてくれる人懐っこい温かさ。
そしてディープな匂いなのに、口に運べばビックリするほど旨味が強い、素朴ローカルフード。
青々しい梨山の高山茶もさすがに本物だし、
標高の高い茶園ならではの深みのある清涼な味わいは想像以上だった。

マンゴーのスイーツやタピオカ入りミルクティー、淡水の酸梅湯も衝撃だった。
龍山寺から西門町へ、淡水、永康街、中山、士林方面へと沢山歩いたので、
陽のあたる台湾の顔と陰翳の顔にも遭遇!
狂犬にも吠えられたり、
最後には茶商のブローカーにも出会ったりして…。そしてフィナーレーは故宮博物館の秘宝を観てシメ。

今も記憶に残るのは、頬をピンク色に蒸気させて、両手に子どもの手をギューッと握りしめ、はしゃぎまくって夜市へ向かう、
親子たちやおばちゃん、おじちゃんのたくましいパワーだ。
特設ステージで繰り広げられる河口沿いの日本語カラオケ慕情大会も。

この国の人達は、なぜあんなに夜になるとイキイキとして精気にあふれ、パワフルになるのか。
そして外食への愛に、命を燃やして食べまくるのか。
ともかく活きる、食べる、したたかさ…。
いろいろな台湾事情を目に焼き付けてきました。
しかし、それでも私たちは所詮ビジター。ひとときの台北の顔をチラリ拝ませていただいただけ。
本当の。ゆるやかに流れる普段の台湾時間をしらない。






旅はええです!
こうやって回想し、書いているだけで、元気になれるから。
日本は、いよいよ11月。深まる紅葉の季節を迎えます。日本に戻るとはぁ~「人」の正義感みたいなところにほっとする。
台湾もいいけど、日本の原風景もまたええもんです!




(台北旅行記)5はこちらへ。

(台北旅行記)4はこちらへ。


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台北旅行記)2

(台北旅行記)1



「淡水河邊夜市」と「士林夜市」をはしご。(5)

2013-11-01 19:33:26 | 海外の旅 台湾編


東洋のベネツィア(またはベニス)ともいわれる「淡水」。




実際にはもっと庶民的で素朴だ。
淡水河口沿いの道路が整備されていて、レンタサイクルで走るには最高に気持ちいい。
かつてスペインやオランダに統治されていたため、異国情緒あふれる建築物がまだ残っていて、
淡水河に沈む夕日は美しかった。

「レッドスリーカフェ」はライトアップされた洋館3階にあった。








結構な高台になるので観光客も少なく、
オシャレな台北の若者たちでにぎわっていた。満席のため、テラス席へ。
遠くには海の夜景が臨めて雰囲気抜群である。

船舶と島の灯りがキラキラとして、
それを眺めているだけでお喋りがはずむ。
私たちは、ビールを飲み、魚介のパスタを食べ、フィッシュアンドチップスを食べ、そしてパンケーキまで注文した。いくらでも食べられそう。
全く満腹を感じない、子どものようだった。

ここは確かに台北なのだけど、なぜだかタイのチャオプラヤー川沿いにあるタイレストランを思い出した。

赤や青の電球が頭の上にいつくも下げられ、こうやってテラスで夜風に吹かれながら、すごくリラックスして、
思いっきり料理を平らげているシチュエーションが重なったのだろう。

愉しくて、愉しくて。
胸の奥から脳天までこのワクワクが、ドキドキが連鎖している。
何かあるとすぐに「キャー!」「キャー!」「ハハハ」と声をあげてしまいそうだった。



そんな高揚感をつのらせたまま、1時間半くらいで店をあとにし、先ほど上ってきた急な石の階段を1段、1段と今度は下っていく。


降りたら、歩行者であふれかえっていた。
「淡水河邊夜市」である。




中山路も中正路も淡水の河口沿いも、夜店が続く。活気ムンムンだ。
ものすごい雑踏のなかを、時々、派手な車やオートバイや自転車が横切っていく。
それは幻想的というかまるで夢を見ているみたいな、お祭り騒ぎだった。



私たちはローカル住民にしっかりと混じって、淡水名物の酸梅湯(ドリンク)を飲み、
「アーポーティーエダン」で ウズラや鶏の煮込み卵のお土産を買い、
背の高いソフトクリームを舐めながら、風にふかれて河口沿岸の散歩を愉しんだ。




芝生の広場では、あちらでもこちらでもカラオケ大会が開かれていた。
なぜか演目は日本の歌謡曲、そして演歌、演歌、演歌!
それがなんだかおかしいやら、誇らしいやら…。
サザンの唄も店前のカセットから流れていた。

ここで河口付近に駐輪していたレンタサイクルに乗り換えて、
もう一度駅まで自転車を走らせる。
しかし、人、人、人で自転車を押して歩く。
まだカラオケは大盛り上がりのよう。台湾人の演歌がいつまでもやまない。



「淡水」を後にすると、夜市の愉しさに興奮してしまい、
今度はまたまたMRTに乗って台湾最大といわれる「士林夜市」へ。



ここはまたまた人混みなのだけれど、淡水とは違う怪しくて生ぬるい空気感。アジアっぽい夜市だ。

入り口の店でいきなり買ったのはマンゴーとドラゴンフルーツを山盛り。
これはホテルに引き上げてから、お風呂上がりに食べるのだ。

そして、ブティックやお土産屋を数分ばかりひやかして、
お腹がいっぱいのはずなのに「士林市場美食區」へ。







うわぁー。広い!そしてすごいにおいだ。臭豆腐が特に強烈。

揚げ物やチキンの香りも、すごい。

私たちは、あんなに淡水で食べたにも関わらず、今度は地下1階の屋台フードコートで、
またまた地元ビールとカニの爪揚げ、ラーメン、点心を食べる。




途中で、お腹いっぱいになってきてどうも揚げ物が食べられない。

ふと隣のテーブルをみると母娘が顔を寄せ合って話す姿がみえ、耳を澄ますと、どうやら日本語(東北なまり)のよう。
それで、こちらから声をかけて合流し、テーブルをくっつけて
「こちらの食事もよかったらどうぞ。もう食べられないの」と話し、
すぐに友達になった。

やはり台北はローカルフードが魅力的なのだ。食は友をつくる。東北の仙台からこられた親子と旅の話をあれこれ交換。

今回は2組のグループと友達になった。
そういうのもまた旅の醍醐味である。

「まだまだ帰らない!今夜は遊び倒す‼」と叫ぶNを連れて、
夜市を後にするのはひと苦労だ。
街はまだまだ暑く、いっそう熱気をおびるよう。どこからあれだけの車やバイクが集まってくるのかと、いうほど
道路はまだ渋滞。
夜市の人は後を引かない。街のパワーが、食べ物や人の笑顔や、屋台のネオンに跳ね返って、
どんどん膨れ上がっていくようだ。

結局、11時過ぎまで遊びまわって、またまたMRTに乗車して、
シェラトン台北の部屋まで辿り着いたのは11時40分だった。

バスバブに浸かったらすぐに眠気に誘われて、バスローブのまま1時前には眠ったのだろうと思う。夜中3時に目が覚める。
明日はいよいよ帰国である。









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台北旅行記)2

(台北旅行記)1



台北・麗水街の「泌園」。そしてMRTで「淡水」へ。(4)

2013-10-29 21:54:05 | 海外の旅 台湾編

9月からずっーと仕事が切れ目なく続き、ありがたいのだが
ここ最近は、どうもうまく進まない案件が連続して、ストレスがはんぱない。石の上をゴテゴテに走っている。

忙しいからこうなるのか、というと「絶対に違う」と、いおう!
最近自分の小ささを改めて痛感する。キャパにしてもそう。
考え方も誰かのようにワールドワイドでないから、小ぶりな案しか浮かばない。
大プロジェクトの依頼がくれば、それも多額が動き、間に2・3社、コンサルタントまで入る案件となると、たちまち怖じけづく。
あーと嘆くまえに。


せめてグジグジと反省したり思い返して妄想を広げたりするよりも、
前へ進もう。前へ!…。前へ。ということで、
ずっーと途中下車したままの、旅行記をおしまいまで書いてみることにいたします。

再び真夏の台北へ旅します。



途中下車したのは、点心で有名な「點水樓」から。
再び台北市内を走るMRTで「東門」までやってきた。

「西門町」(ティーンの活気あふれる町)とは全く異なる落ち着いた大人の町だ。
台湾はいろいろな顔をもっているなぁ、と改めて実感。

野犬に吠えられたディープすぎる台北も夢のようである。
台北の「鼎泰豊本店」もこの街に。
麗水街や永康街を歩いているだけで、思わず入りたくなるようなセンスのいいショップが軒を連ねる。

まず、麗水街の入り口にあるブティックで、刺繍使いのドレスやブラウスに釘付け。
しかし台湾デザインをあなどるなかれ、値段も6000元という結構の値札(約2万円)。素晴らしい~。

ともかく、この街ではいいもの、珍しいものをたくさん観た。

特に「圓融坊」のシノワ雑貨はすごい。
最初にのぞいてから帰り際にも訪れて2回も入店した。



「成家家居」、「雲彩軒」、自然ジャムの「自然結果」、
銀製品の「玩銀工房」。
(Nはまたシューズショップで、靴を物色。洋服も購入していた)。

この街は中心部に大きな公園があって、
ガジュマルの木の下で語らうおじいさんたちの微笑ましい風景や、子供たちの元気な笑い声も響く、
とてもピースフルなところも気に入った。

小吃料理の店。いくつかの画廊、茶館、イタリアンレストラン、雑貨店、そして昭和町文物市集…。
豪華な豪邸と素朴な古いアパート。
さらに昔懐かしい木造家屋など、新旧が交わり合う、このミスマッチな感覚が愉しい。


西瓜ジュースを手に歩き、「マンゴースィーツ」の有名店へ。



マンゴーかき氷は、成熟した果実がものすごくフルーティーで練乳たっぷり。
大盛りでもぺろっと。胃袋にストンという感じだった。

そうして、2時間くらい街散策して訪れたのが、念願の「泌園」だ。
私は、ここを訪れたくて台湾行きを決めたくらい、茶葉と骨董の茶道具を扱うこの「泌園」という店に恋い焦がれていた。
その理由は、婦人公論新社で掲載されていた平松洋子さんのエッセー「台湾名香」、
そして、「旅で恋に落ちる瞬間」を何度も繰り返して読んでから。

平松さんは、2000年に「泌園」で、お香を求めて以来、在庫を補充しつつ、
「毎日忙しい東京での生活を潤わせてくれるのは、あなた(泌園の店主)が調合したこのお香。
台湾から帰って以来ずっと朝に夕に焚き続けてきました」というほど、
この店を、このお香を愛してこられたという。

「ゆらりひとすじ居間の片隅で香煙が立ち昇っている。
私のふだんの香炉はベトナムの蚊取り線香入れ。
その枯れた風情の銅色の上蓋からふくよかな、しかし奥底にきりりと1本芯の通った上品な香りがあたりを満たしていく。(中略)」

お香の名は「正黄奇楠沈香」だ!
黄奇楠と呼ばれるベトナムの沈香に
松香が調合されている。

沈香とは、永い歳月を積み重ねながら沈丁花科の樹木に樹脂が蓄積していったもの。

平松さんは、いよいよ残り少なくなった香りを求めて、この店を再び訪れ、店主と再会する。
そして、店主の廖さんは平松さんに言うのだ。

「よくいらっしゃいました。またお会いできてうれしいです。あなたのことはよく覚えています」

(中略)

「泌入心脾」。「心の奥までしみわたっていく香りを中国人はこう表現します。
おっしゃるように、この香りは雑念を取り払い、気持ちを沈めてくれる。沈香は神様と向かい合う時に焚くお香です。
立ち上る1本の煙を静かに愉しみ、しだいに無の状態に近づいていく。
空寂。つまり雑念のない世界に入っていくことができる、このお香はそんな香りなのです。
そのことを深く理解してくださったのですね」(店主の廖さん)。


さて、その「泌園」。

台湾のどことも違う、穏やかで高賀。温かい味のある店だった。
茶藝道具が飾られたカウンターと対面し、南投県の凍頂烏龍茶やプーアール茶などが陳列してあった。
お香は、入り口から一番遠くのプライベートスペースに近いガラスケースに、
ほんとうに目立たないようにひっそりと納められていた。

もともと骨董品屋だったというオーナーの廖さん。
日本に在住経験のあるご主人と20年ほど前にこの店を始めたとあって日本人かと思うほど、
日本語が素晴らしく、やわらかい自然な笑顔と言葉づかいが似合う人だった。


そして私の話を、すごくうれしそうに耳を傾けてくれたばかりか、さっそく、
なんの躊躇もなく、巻き線香を手にしたかと思うと
「正黄奇楠沈香」に点火。 なんと、その場で聞香させていただいたのである。





ほんとうは、来客と雑踏もあって、もっと静かに聞きたかったけれど…。
それでも、確かに日本の香とは違う、高尚なやわらかい息吹。
花のようでありながら、
不思議な静寂に包まれ、「異国の賀なるにほひ」というようなイメージを感じた。

平松さんとのエピソードもゆっくりと語ってくださった。

もちろん、購入しましたよ。
かの「正黄奇楠沈香」。平松さんが購入されているのは、3000元。
あまりに高価すぎて、わたしにはふさわしくないと思い、その半額1500元のものを購入した。

私たちは、メール交換をしあい店を後にしたが、感性がいつまでも研ぎ澄まされ、敏感であるような気がしてならなかった。

そのあと、「回留」や「豊盛食堂」にも行きたかったが、 なんだか自然をみたいなあーという気になる。
そして、再び「MRT」に乗って「淡水」へ(「東門」から30分)。

車窓に台北の街を見ながらゆっくりと電車に揺られた。




そこからがまたまた、場面変換。
ではないけれど新しい台北の顔に出会う。
これがまたインパクト大!
台湾のベニスといわれる「淡水」。




「MRT」を降りたら、すでに黄昏で。

海の台北を満喫しようと、あたりにレンタサイクルを探していたら、すごい活気にのまれそうだった。
独特の雰囲気!なにこれ!

この日は、土曜日。「淡水河邊夜市」に繰り出す人で溢れかえっていたのだ。

皆大急ぎで走っているのはなぜ?皆が、小走りなのである。

もうきゃーきゃーと歓声も。それほど?というほど、一様にうれしくてたまらないよう。
とにかく、おばちゃん、おじちゃんが颯爽と走っている。
お母さんは両手に子どもの手をひしっと握りしめ、ある人はさらに前後ろに子どもを連れて。
顔をにやつかせて、夜市へダッシュ!
皆が、誰もかれもが、大騒ぎ。

なんだか、遠い昔。自分が幼稚園児だった頃に、夏祭の夜店へ掛け出していた頃をふと思い出す。
それも地方の、田舎にある小さな夏祭りだ。


周囲を見渡すと、
私たちのように、台湾のベニスに浸る人は観光客ばかり。



それでも、せっかくレンタサイクルを借りたので淡水河側の整備された道を、
風を切って自転車をこいだ。


気持ちいいー!最高だ!


ビュンビュン走らせるわけにはいかなかったが、遠くの島はキラキラして、

船舶が浮かんで、波がゆらゆら。風がゆらゆら、とても心地いい夕暮れだった。








私たちは、自転車を波止場で止めて。

今度は、山側をテクテクと歩いて、階段を上る。上る。上る。

はぁはぁと肩で息をしながら今度はどんどん、どんどんと山のほうにむかって上がった。


そして目当ての「紅樓中餐チィン」(1399年築)へ。



美しい夕日のいビュースポットとしての絶景を目にして、ほっーとため息。

きれいだった。

予約をしていなかったので、1階の「中華料理」は満席だったが。
少し手前の部屋で点心だけいただけて。

さらに3階にある「レッドスリーカフェ」で、
台北一の海の夜景を堪能しながら、ビールを飲み、イタリアンメニューを愉しむことができた。

(つづく)


(台北旅行記)3はこちらへ。

台北旅行記)2

(台北旅行記)1





























台北2日目は「龍山寺」から「西門町」、小籠包の名店へ。(3)

2013-10-20 01:14:09 | 海外の旅 台湾編

台風が来て雨が降るたびに冬が近づく。
木枯らしも吹いていないのに、そんな冷たさを感じた秋の日だった。

あれから、忙しく働いているうちに秋も終盤か。
いやいや紅葉もまだなのだから、
これから秋本番がやってくるのだ(突然寒くなると、寂しさがこみあげるね)。

最近また日に何度もお風呂に入るようになった。
私の場合、気分を替えるにはお風呂か、おいしい紅茶か、お香か…。
無論、テレビという選択肢はほぼないのだけど、

昨晩11時頃にNHKを付けてみたら
吉田拓郎さんと小田和正さんのトーク番組を放映していて見入ってしまった。
小田さんはアスリートのようにして生き、唄い続けているのだという。
70歳を目前にしながら、少年のような感性と声を保つために、残された「今」の自分にできることを必死で、やり遂げているのだという。
あれほど繊細な唄が作れる人なのに、激情に流されたり、保守的だったりするのではなく、心身を鍛え、体育会系のように日々挑戦し、自分の役割を生きている。
ふと、村上春樹が書き続けるために走りこんでいる人生と重なった。高校の頃、同じ部屋の先輩がよく聴いていた小田和正の名曲を、改めて聴き入ってしまった。


さて、常夏の台湾の日々がまだ行ったままになっているので、旅を続けなくては。

台北2日目の朝。

シェラトン台北の朝は、早かった。
カーテンをレースだけにしていたので、5時頃には目が覚めた。
シャワーを浴びて、7時過ぎには1階のダイニングへ。



それは、素晴らしく近代的であり、かつエキサイティングな朝のバイキングだった。
100種類はゆうにあるメニューだ。焼きたてパンだけで30種、豆乳プリン、ヨーグルト、数種のサラダメニューに、6種類のフルーツ。



洋食系のメニューに加えて、奥にはお粥、麺類、点心、和食メニューまであった…(合計5ブースほどに分かれて食事が用意)
アメリカの3つ星ホテルで食べた朝食以上のゴージャスさに度肝を抜かれた。
そうだ、オーストラリアの「シェラトンミラージュ ポートダグラス」の朝食を彷彿させるような内容で
ほんとうに驚いたのだった。

(ただ残念なのはフルーツがまだ若かったのと、クランブルエッグはよろしくなかったが…)

特筆すべくは点心とラーメンの美味しさだ。なぜ、こんなスープの味が出る?さすがは本家だ。
しかも、シェフが出来たてをつくる。
私は朝から麺を2杯も(お粥を山盛り)お代わりして満腹で部屋に引き上げたのである。





さて、最初に訪問したのは、MRT(地下鉄)にのって善導寺から龍山寺へ。
台北最古の神様へご挨拶をしておかなくては…。



お線香を7本購入。三宝仏をお参りし、本殿、
文昌帝君、水仙尊王、媽祖娘娘、註生娘娘、関聖帝君、月下老人と、
8つの神様を参拝して、1本ずつ線香を奉納していく。




線香の持ち方は、左手を外側、右手を内側に。
そして「住所、名前、生年月日」を言い、三回頭を下げ、線香の一本を左手で香炉に入れる、というのを繰り返す。




さすがに台北のパワースポットといわれるだけあって、不思議な高揚感に包まれる。





建物のひとつひとつが日本の寺院とは違って極彩色で派手なんだけど、
エキゾチックというかエネルギーが満ちている。
ジリジリと照りつけるような太陽とマッチした南方の中国宮殿式であった。

最後に月下老人の前で、これまた不思議なおみくじを。
半月のものが、「表、裏」と互いに違う面が出たら、赤い糸を頂いてOK。

「表、表」「裏、裏」と、同じ面が両方とも出たらやり直し。やり直しは三回までで。
わたしは3回目でようやく違う面が出る。何事も苦労するタイプなのである。



このあとに、西門町まで近いなぁと思い、地図をみて歩いて行くことにする。昨日の晩にたっぷり歩いて自信がついたのだ。



しかし、ここからが本来の旅の始まりである!
排気ガスがすごいなぁと思いながら歩くうちに、

店先でしゃがみこんでいる人、外商と外商との口論、安い服屋の前であくびをして店番をするおばさん、
道ばたの露店で食事をする人達…。
観光地(外向け)の顔とは全く違う、
普段着の台北という街に遭遇する。

おそらく地図では、康定路沿いをテクテク歩いていたと思う。
安い店前の向こうには家具屋街や、下町工場のようなところを抜けねばならず、
何匹もの犬たちに合う(猫もいた。九官鳥にも)

もちろん日本のように、予防注射などは義務づけていないだろうし、鎖にも繋がれていないのだろう。
あまりに盛んに吠えるものだから飛びついてきたら、どうしょうと思うと足がすくんだ。
人通りはないかなと周囲を見渡すと、
安い作業服を売っている店で、丸椅子に座って新聞を見たまま顔を上げないおじさんがいたが、
犬には全く無関心だ。ムシ!
(あらぁ日本人とみるや親しげに声をかけてきてくれるやさしい台湾人はいずこに)

5匹一度に「ワンワン」「ワンワン」「ワン」と吠えられた時にはさすがに怖くなって、
結局は空車のタクシーに飛び乗ってしまった。



ああ。このオイルの匂いと排気ガスのスモッグが肌になれていくのがわかった。
本来は、中山あたりを散策し、
「春水堂」のタピオカミルクティーでも飲みたいと猛烈に思いながら、近くの「西門町」で一旦降りる。







西門町は、ティーンの街だ。若者達でごった返している。
台北のハレの顔にいつのまにか戻っていた。
西門町は、Nにオススメ!というのが昨晩ホテルで聞いた情報だ。


Nは安い靴や鞄を物色中。
私は、大型店舗のユニクロに入ったりしたが、あまり興味がもてず。
それでもNに付き添って、歩行者天国の街を30分もぶらぶらした。
Nもどうやらこの町には安かわいい、ものはあるけれど、さして珍しいデザインのものに出会わなかったようで、
「もうOK」が出たので(靴を買ったらしい)
再びタクシーにのり
今度は、点心で有名な「點水樓」を訪れる(本店は予約が必要である)。







昨日のガイドさんが「ここが今年の賞をとった名店よ」と、ものすごく自慢していただけあって、
キレイな店構え。昼近くなると続々人が入ってすぐに満席。

暗い薄暗い台北の裏通りとはうってかわって、
ここはハイソなサラリーマンが通う名店らしく、上品な背広姿のおじさん達が多い。

メニューを見ようとするとこれまたガイドさんが、コースで予約してくれたらしく、点心の蒸籠が5つも並び、
小籠包ほか、カニ小籠包、胡麻小籠包、水餃子、シュウマイなど点心だけで8種も。
それに加えてスープやエビチャーハン、青菜炒め、干し大根の卵焼、蒸しケーキ、とお昼からものすごい豪華バージョンに。






結果的に味はよかった。特に小籠包。あっさりとした鶏とホタテ貝柱ベースのスープが
薄皮で包まれていて、あっという間に完食。

カニ味噌の小籠包もおいしかった。カニ炒飯も。さすが台湾。
調味料が旨いのか、味付けに奥行きがある。
少し濃い口なのだけど、すぐに慣れてくる。
ジャスミンティーがおいしくて、ポット2杯も飲んでしまった。




さて次はどこへ行こうか。そうね、点心のあとはスイーツ!

勿論、永康街のショップをハシゴしま~す。

(つづきはこちら)


台北旅行記)2

(台北旅行記)1


台北1日目は「丸林魯肉飯」のローカルメニュー。そして京劇へ。(2)

2013-10-13 23:42:30 | 海外の旅 台湾編

台北の「丸林魯肉飯」を教えてくれたのは、九フンまで連れていってくれたガイドさんだ。
看板の下でカメラ、カメラ。



店先には、台湾人の予約客で1階はあふれかえっている(セルフ食堂)。
2階にあがると円形テーブルが沢山並び、名物メニューがアラカルトやセットメニューで注文できる。

見渡すと、会社帰りに訪れたサラリーマン客のグループやら、親戚一同の祝い事で集まったグループ、家族連れなどで賑わっていた。
日本人のように、一人もそもそとラーメンなどをかきこむ姿はない。
ともかく台湾の人達は沢山オーダーして、ワイワイと騒いで1時間ほどで平らげ(ものすごい食欲)、
サッと帰ってしまう面白い国民性。
ビールも飲まないのに
よくあれほど盛り上がれるなぁ。
それにしても愉しそう。日本人が少ない店で、よかった。





まず台湾の地ビールをキューッと一杯!

そして、700元くらいのセットメニューをお願いしたのだが、
からすみが出たら、究極といわれる魯肉飯(名物)が。
これ、砂糖と醤油で煮込んだバラ肉のそぼろかけ御飯だが、美味しいのなんのって!
もう倍返しでお代わりしたかったほど。
ほかに、干し大根を入れた卵焼きに、海鮮の炒めもの
豚の角煮、青菜炒め、炒飯、小籠包…と盛り沢山だ。
不思議なにおいはナンだろう。わからない、
独特の調味料である。
やはりここは飯物が絶品だ。大衆っぽい、いい感じの店だった。







窓は開かれていて、台湾のねっとりとした空気と、排気ガスと食べ物と動物のフンのような怪しいにおいが、
流れ込んでくる…。
こうやって娘のNと向かい合っていると、ここが台湾というのが不思議。
ひっきりなしに流れるバイクや車、トラックや、人の騒ぐ気配。
帰宅途中のサラリーマンたちや繰り出してはしゃぐ大勢のファミリー。
台湾の夜はビックリするほど活気に満ちていて、そのエネルギーが食堂にいても伝わってきて、ますます愉快な気持ちに!
ああ面白いなぁ旅。



1時間半ほどで食事を済ませて勘定を払い、
目指すのは京劇の「タイペイシーブン」である。

店の人に聞くと20分ほどで歩けるというので
テクテク、テクテクと徒歩で中山北路周辺まで
台湾の夜街を愉しみながら歩く。
途中、セブンイレブンへ立ち寄ったり、写真館での変身写真を見たり、ブランドショップをひやかしてりして歩くので
ちっとも飽きずに、アッという間である。

さあ、ついたここ。
さすがに日本人は垢抜けたファッションに身を包んだ上品な観光客が多いこと。
京劇が始まるまでは、役者さんのメイク風景や衣装などを観ることができ、
これもサービス精神旺盛である。







舞台の内容は西遊記だった。
唐の三蔵法師が天竺へ行き底に仏殿をもたらす道中のストーリーだ。
大切な娘を、妖怪に召し捕られたので、孫悟空や豚の八戒、
河童の沙悟浄が闘い抜いて助けるという内容だった。
パフォーマンスは迫力満点。やっぱり京劇は唄にやられる…。








中国映画の『さらば、わが愛/ 覇王別姫』(93年)、
『活きる』(03年)等で、京劇とはどういうものかということは分かっていたのだが、
内容はシネマほどではなく完璧に観光用だったのが少し残念。

だが、観客席では、韓国人、米国人が多くて様々な言語が飛び交い、
とても国際色豊かというのも愉しめた。
舞台が終わればスターたちと記念撮影まで出来た。

再び、シェラトン台北まで今度はタクシーで戻る。

18階まで吹き抜けになった高級ロビーはやはり圧巻である。ホッとする。



部屋に戻れば、すでに10時半。ホテル内を探索したあとでティーを一杯。
そして全面鏡に被われた広い広い浴室へ。

シャワーブースで汗を流したら、
ゆっくりバラの入浴剤をいれてバスタブに。
寝転がってもまだ広くて落ち着けるのが最高だ。
本も読まずに、ゆっくりと30分くらい浸かってあがり、バスローブを羽織って部屋に。
夜のとばりが美しい。 テレビをつけると台湾語のニュース。ドラマが多い。
まだ街は活気ムンムン。ウエルカムドリンクの赤ワインを飲もうかと思ったが疲れているのでそれも諦めてベッドへ。
隣をみるとNはもう夢のなかだった。


(台北旅行記 1はこちら)


(台北旅行記 3はこちら)


台湾は晴れのち雨。ランタンの灯が灯る九フン散策の後、梨山茶のおいしい茶藝館へ。(1)

2013-10-08 22:09:05 | 海外の旅 台湾編

飛行機は、キャセイパシフィック航空(CX)565便。
関西国際空港を11時15分にフライト。

キャセイは初めての経験だ。日本航空のように機内でシネマをみている人は誰もいない。
皆、新聞や雑誌を読んでいるか眠っているか。小声で話しても目立ってしまう。
前シートの背がモニターになっているようだが、どうやっていじっても香港のニュース番組にしか映らない。
それでずっと陽気なポップスを聴いていた。(クラシックはなんとなくこの飛行機に合わなかった)。





途中で1時間くらい空を飛んだら食事が運ばれてきた。
豚肉の薄切りをのせた丼のようなランチ。小さな器には蕎麦。
サラダとお菓子付き。これに赤ワインを注文する。

機内食はなし、とパンフに書いていたので、クッキーくらいサービスされるかなと思っていたが、
これが予想に反して、ちゃんとした軽食。とても美味しかった。味がいい。特に丼が最高。
どんな調味料で煮込んでいるのだろう。おそらく干し貝柱などが入っているのだろうか。
さすがは香港の航空会社。
サービスは日本の航空会社の接客乗務員にはおよばないが(笑顔も少なく、何かお願いすると少し面倒な感じの対応)、
機内食はキャセイのほうが上だと思った。インスタントっぽさが全くなかった。

さて、台湾へ到着して、



市内を一望しながらリムジンで向かうのは「九フン」という街。

今回の旅は全てフリープランなのだが、「九フン」だけはオプショナルを日本から予約した。
現地のガイドさんも人のよさそうな親切なおばさんで、
店の宣伝や買い物のことなどをしゃべりすぎないのがいい。

他に同乗者もなく、自分たちのペースで車を走らせて台湾市内の高速を一直線に山の方へ向かう。
台湾の住居らしきアパートメントも見る。超高層で窓が小さい、ベランダがないので洗濯物が窓枠にロープを吊り、
ヒラヒラとはためいている。
排気ガスや埃をかぶっているのだろうという色…。

あ、あれはグランドホテル(圓山大飯店)!
さすがに目をひく中国宮殿風の建物で威厳高い。
台北101の高層塔も見つけた。
さっきまでピッカーンの青空であったのに、霧雨が降ってきたのかしら。
空がみるみる曇って灰色の雲が重たく、あたり一面を覆いはじめる。

九フンの市街地にさしかかると、原色の看板や蛍光灯が増えてきて、観光客もちらほらと。
おじさんがタバコをくゆらしている光景などが見える。
茶商やモーターバイクの店、コンビニなどが車窓の横を流れていく。
もしかして突然の雨は幸運かも。
雨で曇った台湾の街に、この原色極まりない電光看板や提灯の灯りが映えてカッコイイではないか。

小さな漁港のむこうには
ゴツゴツした山々、温泉街のような町が山の岸壁に貼り付いている。
今は観光地っぽいが、ここらは昔は炭鉱の町だったという。


九フンに到着したのは4時半頃だ。

傘をさして、チャイニーズ街のような細くまがりくねった商店街(基山街)を歩いた。





細くて、舗装されてなくて、狭い道に地元の名物やピーナッツや臭豆腐や甘味物、革製品、
刺繍物、靴屋、雑貨の店がギッシリ。
鮮やかな傘、傘、傘が商店街を行き交う。



「ノスタルジック、九フン」。ガイドブックなどにはそう紹介されているが、確かに夕方の街の光景は、
赤や青や黄色の灯がたくさん出て、日本の地方に見られるお祭りのような賑わい。

テントの店も多く沖縄の夜市とも少し似ていたりする。
私たちは、土産物の店をいつくかひやかした後で、茶藝館「九フン茶坊」へ行った。







ここは、洪志勝氏さんというアーティストが石造りの建築物をリノベーションさせた店だ。 
茶壺に茶器、絵画そして木のテーブル、椅子も全て中国のアンティーク風で素敵。台湾のレトロ。
テンションが一気にあがる。これは期待できそう。

頂いたお茶は梨山の高冷茶だった。

茶藝の作法のとおり、シュンシュンと湧く鉄瓶から、茶海へ移し、可愛い茶器へと注いでくれた。




中国茶や台湾茶、岩茶など飲む機会があればこれらのお茶が好きで口にしてきたが、
それでもやはり本場で高揚しているのか、清涼感と青々しさが澄みわり、
すばらしいと思わず声が出た。
コクもありながら甘味もあって、苦みが少ない。 1煎ごとに味は深まるが、清々しさというかお茶の透明度は変わらない。

8煎ほどいただいたが全くお茶酔いせず、おいしい。
聞くところ、梨山とは台湾で最も海抜が高く2500mもあるとか。最高のクオリティのお茶だったらしい(日本に帰って調べたら、80gで1万円ほど)
お茶請けには、烏龍茶の葉を浸したシロップに浸けた梅の実や
凍頂梅茶とピーナッツ菓子、草餅などがセットになっていた。

ゆっくりと1時間くらい居た。 お喋りも弾む。
トイレへ行こうと地階に降りると、館のなかを鯉が泳ぐ池がありヨーロッパ茶器や家具などが並ぶギャラリーになっている。




裏のテラスからは、「阿妹茶酒館」の灯りまで見わたせ、
景観もよかった。


店を出て再び、基山街を歩くうちに夕刻になる。
それで基隆湾が見下ろせる石畳の階段で写真撮影。千と千尋の神隠しの舞台にもなった「阿妹茶酒館」も風情があっていい。



非情城市という映画の舞台になった街。思い出そうとするが、ストーリーを思い出せなくて残念。
台湾へ旅立つ前にもう一度見ておけばよかったと思う。

前の店で梨山烏龍茶を購入しようとすると150gで1万円と少し。高~い!
それで20%ほど値を下げ「阿里山烏龍茶」を購入。それでも高いなぁ、と思いながらも美味しかったので満足。
ユアンの石けんなども数種買った。皮製品のブレスレットも買った。




曇った夕景は寂しげで、やはりノスタルジックだ。
海が見えた。




九フンを後にして、台湾市街へ再び車を走らせて今回の旅で宿泊する「シェラトングランデ」ヘ。
最上階まで吹き抜けになっているアナトリウムや広々としたレストランなどが素晴らしい。
ヨーロッパとモダンチャイナをミックスさせた近代様式な良いホテルである。

部屋からは街の灯が見渡せる11階。シャワーブースとバスタブが別々で、お風呂がきれいで広いのが気に入った。



荷物を置いてすぐに向かったのが
圓山駅から徒歩15分の「丸林魯肉飯」である。
玄関口は予約しないとはいれないようで並んでいる人も。車の中で予約しておいてよかった。




翡翠の置物や美術品がある踊り場をぬけて、
円卓が整然と並ぶ2階へ。

地元で人気店のようで、台湾人たちのグループ客や家族連れですごく賑わっている。
今日は平日の金曜日。それでも親戚一同集合といった光景。そこがすごい。

やはり台湾ときたらローカルフードを食べなくっちゃね。
九フンの街と同じような不思議なにおいがあたりを包んでいた。
まずは台湾産ビール!

そのお話はまたこの次に。

(台北旅行記 2はこちらへ)