先週半ばから難案件(株式会社日本ビジネス出版「環境ビジネス」の取材記事作成)を抱えていて、
テープ起こしをしても3割程度しか理解できず、どうにもこうにも1行の原稿が書けないというちょっとした恐怖と絶望の淵にいた。
頭の中は覚醒していながら、どこか諦めモード。
まるで苦手な数学でも前にしているかのような気分であった。(苦手なことは努力をせず避けて通りたい性格)
それでも自分が怖しいのは、最後にはなんとかなるだろう…と年の功からそして経験からくる開き直り。
取材内容もテーマも、道筋も、知識がなく。また資料を読んでも頭からポロポロと消えてなくなるよう。
少しだけばらしてしまえば…「太陽光発電市場における再生可能エネルギー電源(バイオマス、pps、風力、地熱、中小水力)など総合エネルギー企業を掲げる某社社長の見解とトータルソリューション。
あるいは市場におけるこれからの見通しを、記者の視点で述べるという記事づくり」だった。
しかも、専門的すぎる内容のため、
東京から環境ビジネスの編集トップの方がインタビューをしてくださったという異例中の異例で(自分で取材しない記事作成は初めて)。
もらった日程も3日ほど。
そんな最中に出掛けたのが、これ。
や、やばいんじゃないの。月曜朝一に入稿できるの?
そんな自分を客観視しながら、
それでも、約束はしたのだから、気になるし、突然友達を誘うのも気がひけて
主人を誘って出掛けたのである。
「シャンソンのソロ・ライブ」人生は一度だけー。
ちょっとした縁から昨年2度ほど仕事をご一緒させてもらったライター(兼シャンソン歌手)海江田文さんの、20年を祝うステージ。
「主人とともに伺います」とメールをしたら
1番前の上席を確保してくれていた。
シャンソンを始めて聴いたのは、15歳の頃。金子由香利さんの「銀巴里」でのライブアルバムから。
(なぜ中学時代に聴いたのかといえば、私の当時(中学時代)大好きだった歌手が、金子さんが好きでよく聴いている、というインタビュー記事を読んだのがきっかけで私も辿り着いたのだ)。
それからエディットピアフや、リュシエンヌ・ボワイエ、ギュリエットグレコ…。それにジャン・ギャバン。
有名な曲は、少しは知っている、その程度の知識。
だけど、シャンソンの世界観は好きだった。映画や文章からの影響もある。
クラシック時代のフランスの空気感は、ポーランドの映画監督クシシュトフ・キェシロフスキや、
フランス映画でお馴染みの
フランソワオゾン、パトリス・ルコントなどが、とてもとても好きだから。
独特のモノクロのそういった映像は自分の中で描ける
ライブは、実に素晴らしかった。
第2ステージは、1番前の席だったこともあり少し緊張して、その場の雰囲気にのまれて、音質がまっすぐに入ってこなかったのだが。
第3ステージ目からは、完璧に唄とピアノが自分の中に溶け込んでいった。
赤ワインをぐびぐびと飲んでいたのだけれど。
まるで、雨と霧に煙ったうす暗い晩に。ふと立ち入ったパブで、氷のたっぷり入った冷たいウイスキーを飲みながら、聞いているほどのリラックスした気分に。最高だ。
梅田のシャンソニエ ジルベール・ベコー。
すっかり、想いはフランスのパブ、
そして、降ってくる、どんどん降ってくるシャンソンの雨が私の体の中で旋律となって、心に響いてきたのだった。
こんなにも贅沢な、泣きそうになる心地よい時間って。
本当に久しく忘れていた。
海江田さんの声は、深く心に沁みる包容力のある大人の声。
やさしくて、コミカルで。それにドラマチック。まるみがあった。
特に、グレコの「街角」。
マレーネ・デートリッヒのナンバーで「ベルリンのスーツケース」、「ブラックマーケット」、「イリュージョン」。
そしてセルジュ・レジアニの「ウイスキーは水に」。
セルジュ・レジアニは確か男性のシンガーなのだけれど、
彼女の唄のほうが私はこの楽曲にしっかりとよく馴染んでいるように思うのだった。
帰りには、少しお腹がすいたし、ワインも飲み足りなかったので、近くのお初天神にあるサルヴァトーレクオモでピッツァとワインを飲み直して帰宅。
家に着いたらすでに日は変わっていて、さぁ仕事と思ったら、娘がすでに帰宅していて、一緒にお風呂に入り1時間半も浸かりながら恋愛のちょっとした相談を聞いて。
頭がフリーズしそうになったが、気をとりなおして2時から朝6時まで原稿を書く…。
翌日は、1年ぶりにお寿司の宅配をオーダーしてしまった。
(上盛り合わせと赤だし)
夕食を作らなかったので、なんとか翌朝2時半に一旦は仕上がり、それからお風呂のなかで推敲。
朝5時まで手直しをして、
2時間仮眠を。
朝11時になんとか提出できたのであった。
その翌日からはいつものペースでの仕事に戻る。
レギュラーでのよくわかる内容である。ほっとするなぁ。新鮮な気分。
これからは、あまり手に負えない内容の仕事を依頼されたら、
やはり慎重に受けなければならないのである。
専門誌での仕事はやっぱり怖い。
今回はいい記事を書く、どころか。終わりまでたどり着けるのかどうか…。それすら危うかった内容。
そんな綱渡りの仕事…はこれからどうしようか。
資料を5本。どうにかネットと本屋で見つけたから参考にして、ある程度のかたちになったが、インタビュー内容と会社案内では、どうにも書けないような。
しかし、シャンソン。
シャンソンはいい。やっぱり。ライブはしびれるなぁ
このライブをきっかけに、もう1回あの頃に戻って、シャンソンに、はまっていきそうな予感。