現在、書店で販売中の「宣伝会議8月号 私の広告論」では、装丁家の名久井直子さんの記事を執筆しています。
今回は、取材は宣伝会議の編集担当。彼女から音声を頂戴して、それを一度自分の手でテープに起こし、そこから記事を執筆しています。
人選で名久井直子さんの名前があがった時から、はやく取りかかりたくてワクワクしたお仕事でした。
彼女の装丁本は何冊か持っていて美しいな、と思っていたのも勿論ですが、装丁家のお仕事を知っているようで
詳しくは知らなかった私にとっては、興味津々。
ですから、イントロでは、そういう私のような読者のために、作家の原稿がおくられてきてから、
出版者の編集ディレクターと打ち合わせし、デザインをしていく過程(プロセス)や仕事の醍醐味を。
また特に彼女自身が印象に残っている仕事を1つ例にとり(ここでは、谷川俊太郎の詩集、「わたしとあなた」)
仕事に対する思い入れの深さなどを中心に書いています。
最後は広告に対してどのように考えるのか、いわゆる広告考で締める!という流れです。
1行に何文字くむのか
余白はどれくらいにするのか。ノンブルの位置、書体選定、花切れやスピンにいたるまで。
本を校正する小さな要素を縦糸と横糸を組むように、自分のセンスを信じて
(作家の思いやターゲットの想定を組み入れ)、緻密に、丁寧に、細部へのこだわりを入れて編んでいく。
名久井さんは、モノをつくることが本当に好きで、工芸作品をつくるように、細部へのこだわりを注ぎ込み、嬉々としてお仕事されています。
御本人も元々絵をかいたり、切って貼ってといった工作することが好きで、
それこそ公私にわたって、誰かに手作りのものを手渡す時でも、同じように懲りまくるタイプのようで、
「脳内で思い描いたデザインがかたちにして残ることがうれしい」といわれていました。
印象にのこったのは、「広告論」のお話になった時、
「最近、比喩表現が減ったなと。「極」、とか「安い」と言い切るパターンが氾濫しているように思う」と述べています。
ストレートにいわずに比喩でさりげなく伝えるほうが、うまく伝わる場合もあるのに、
「好きだ!」のように。直接的な表現ばかりだと寂しい。
広告もしかりで、過去のサントリーのウイスキーの広告や日清カップヌードルの広告のように、
「大人の広告」をみることが少ないと仰っていました。
私も聞きながら、頭をうんうん、と何度も頷かずにいられなった。
素敵な比喩表現って。小説にはあっても広告には確かに少ない。
わかりやすく、ストレートに! 広告という特性上、そのほうが無理なく伝わる!ということもあるとは思いますが、
今、人は急がしすぎるし、SNSも氾濫し、あまりにも情報過多のあまり、急いで言ってしまわないと
相手の時間を奪ってしまう広告は、ゴメン申し訳ないといっているようであり、
ううーーめんどくさっ!となってしまうか。
時代性もあるんだと思いますが、確かに寂しいですね。
本は言葉をのせる舟のようなもの。
デザイナーが言葉に新たな息を吹き込むなら、
言葉は何度でも蘇る、のような感じでまとめています。
文章を書き起こしながら、名久井さん自身の仕事に掛けるこだわり具合が伝わってきて、
すごく愉しく記事をつくることができました。
アッという間、ほぼ1日でまとめて上げています。(周辺の情報収集に半日、推敲に半日は別です)
以前ブログでも紹介した「書道家の川尾朋子さん」から、
「小松美羽さん」
「春風亭一之輔さん」
「名久井直子さん」
と続き、どの号での執筆も新鮮でとても勉強になります。力をいただきます。勿論、他のページも同様です。
次号は「作家で社会学者の水無田気流さん」。
原稿はすでに先週入稿しています!