月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

お伽の国のクリスマスマーケット&ナイトスケート!

2019-12-25 01:18:49 | 羽田ーウィーンの旅


 
 ヨーロッパの夜。ウィーンの気温は1〜3℃。夕刻、陽が沈む頃、風が舞い上がるので最も寒い。7時を過ぎたあたりから風が止まり、静かで、しっとりとした(湿気のある)時間が戻ってきた。

 高い位置から吊り下がった黄金の流れ星をイメージさせるイルミネーション。クリスマスマーケットは日本のお祭りみたいに賑やかだろうと想像したが、シュテファン大聖堂の一帯は、塔の壁を彩ったブルーや赤色のライトアップが幻想的で、暖かく厳かな印象だった。


 私たちは、朝のケルストナー通りを思い出しながら、夜の街をみて、インターコンチネンタルウィーンまでいい気分で歩く(15分)。どのウィンドウも美しいこと。ディープな世界はない。そこらじゅう、お伽の国のように洗練されていて美しい。
   




ホテルの自動ドアの扉を開く。






 室内は温かく、一階ではピアノの生演奏が行われ、大人の紳士・淑女たちがグラスを傾けて、笑いあっている。パイプの煙、カクテル。お菓子の家のまわりで頬笑む人々。私たちは4階までエレベーターで上り、それぞれの部屋へ消える。
 
 タスタブに湯をはっている最中、メールをチェックした。日本からの原稿依頼や午前中の訂正や「レイアウトをしてみたが、文字だらけなのでどうしたらよいか」などの問い合わせが数本きていた。日本の、わたしが居た場所から。


 窓のむこうは、夜のとばり。イルミネーションの洪水。真向かいには白い電気をがんがんにつけたスケートリンクがあって、キャーキャーと声をあげなら男女や子どもたちがスケートを滑る。すごくピースフルな光景。ここは異国だ。お伽の国の続きを物語る。
耳を澄ましたら、スケート靴の銀色のブレードが「シュー!」「シューッ!」と氷を削る音が響いている。

 わたしはひとり、窓の下に配置したソファに座った。ゲラの文字数をiPhoneでカウントし、ちょうど300文字を削る作業をする。一度削り終えたと思ったら、全然足りなくて、もっと大胆に削る。講演での取材中のその人の、穏やかな物言い…。場の雰囲気が、原稿を通して立ち上がる。たちまち日本の懐かしい気分だ。


 1時間後。お風呂に本をもって入るが、結局、開くことなく日本のデザイナーとメールのやりとり(ウィーンと日本の時差は8時間)。お風呂からあがって、先程の原稿を再びチェックして送信した。布団にもぐりこむや、すぐさまストンと眠ってしまいそう。体が心地よく疲れているのだ。

 窓の外は氷を照らす照明で明るく、スケート靴のブレードや氷を削る音が規則正しく響く。シューッ!シュー!銀色の固いブレードの氷にあたる音。削る音。 
 真夏の京都の甘味処で、かき氷を削る音をふと思い出した。








ウィーン名物のシュニッツェル(Schnitzel)を赤ワインで。

2019-12-19 17:43:00 | 羽田ーウィーンの旅


ウィーンの伝統料理でもあるシュニッツェル(Schnitzel)の店をいろいろ食べ比べた結果、Nが選んだのが「フィグルミュラー」だ。

 ウィーンの中心街にあるシュテファン寺院から歩いて3分くらい。
 古く狭いパッサージュを歩くと両脇には、紅茶の専門店やチョコレートショップ、花屋さんなどが並び、その一角にある。
 もう一店舗が、ベッカー通りに入ったところだ。





 夕方5時。予想どおり行列ができている。横から風が吹く中、15分ほどまったところで順番がきた。


 1階には向かい合う小さな部屋が2つあり、2階に続く。
 トントンと階段をあがったところに、天井の低い、隠れ家のような落ち着いた空間が広がっていた。オレンジの温かな照明。肉や油の香ばしさが鼻をくすぐる。


 メニューは、店オリジナルの「フィグルミュラー・シュニッツェル」と「ポテトとノヂシャのサラダ」(パンプキンシードのドレッシングをかけて)。
 牛肉を、ローリエ、セロリ、タマネギなどと長時間煮込んだ伝統料理「ターフェルシュピッツ」。飲みものは、ビールと、赤ワインを注文した。















 豚ヘレ肉を数ミリで叩き薄く伸ばして細かいパン粉をつけて揚げ焼きし、レモンを絞って食べるのがシュニッツェル。子牛が多いがこちらは豚ヘレ。だから軽く、やわらかい。ビッグサイズで直径30センチ以上ある。


 衣は軽くサクサクで、レモンの口あたりが爽やか!1センチにも満たない軽〜さ。だから、お腹にもたれず、ぱくぱくといくらでも平らげられそう。店のシュニッツェルは、1905年の創業から変わらぬ伝統の味を受け継いでいる。


 男爵風の芋がうまい。酸味のあるポテトのサラダと肉厚の葉(ノヂシャ)をシャキシャキ口いっぱいにほおばり、赤ワインで流すと愉快! ここは異国と気分も高まる。

 (ウィーン近郊には、ベートーベンゆかりの場所。ワイン農園・ホリイゲもあると聞き、季節の良い時に行きたい!)


 煮込みビーフの「ターフェルシュピッツ」も見た目よりあっさり。
 赤い色のターフェルシュピッツのスープをつけて食べても。スープだけを味わっても香りがよく栄養価も◎

 ほろほろっとした肉を皿の上にあげて、りんごと西洋わさびのソースのソースをかけていただいた。お腹がみたされると、体中がぽかぽかになっていた。

 店を出たら、昼間とは一風違うお伽の世界。夕刻の風はどこかにいっていた。馬車が闊歩している。








 シュテファン大聖堂の周辺では、ぐるりと取り囲むようにしてクリスマスマーケットの屋台が。

 ライトアップした寺院の建物とマッチし、正統派の厳かなクリスマスマーケットだ。ツリー用オーナメントやクリッペ、サンタ、影絵のランプ、鳥のオーナメントに加え、ホットサンドや飲み物が並べられてクリスマスムード満点! 

 赤いサンタの靴型をしたカップに入れて提供されるグリューワインで乾杯だ。














本場ウィーンのザッハトルテを求めて「ザッハー」へ(7)

2019-12-17 01:59:09 | 羽田ーウィーンの旅

 チョコレート好きなら、外すことができないウィーンの2大カフェといえば「デメール」と「ザッハー」。

「デメール」は王宮に近く、帝政時代には王室御用達として名を馳せる洋菓子店。入口近くには真珠を幾重にも重ねたような華麗なシャンデリア。その下にホール型のタルトやバターケーキが美しくカットされ、宝石をみているよう。














プレゼントコーナーには、キュッと正統派のりぼんをかけたデメールの包装紙のツリー。
あの!すみれの砂糖づけや、クッキー、ザッハトルテ、シュトーレンなど……。(ここだけは行列に並ばずとも買物ができる)。
カフェでは女の子たちが、わくわくした表情で席のあくのを待つ姿があった。



 オペラ座そば。ホテル・ザッハー内のカフェレストランがここ。クロークでコートをあずけて身軽になったら「CAFE」の入口から両側に広がる室内(2室)へ。










コーナーに近い場所に席をとった。
金の装飾に、レッドの絨毯と同色の壁紙。窓の外はヨーロッパの冬だ。
名物のザッハトルテの注文が圧倒的に多いが、トプフェンシュトウルーテル(チーズ入りのお菓子)やヴィナーシュニッツエルを目当てに食事にくるウィーン紳士やアジア人のファミリー層の姿も。


取材は20分たらずで終了。

オペラ座の通りを歩く人を窓枠のむこうに眺めていたら、いよいよ運ばれてきたお目当てのケーキ。












 軽い食感のスポンジ生地。表面のチョコグラサージュ(チョコレート部分の糖衣)の甘みが強い、いわゆる日本風のザッハトルテであるデメールに対して、
(※デメールのアプリコットジャムは、スポンジとグラサージュの間だけに塗ってある)。

ホテル・ザッハーのそれは、外側のチョコレートが固く、やや苦みの残る大人の味。スポンジはしっとりと濃厚で、3層になったアプリコットジャムが酸味を際立たせ、洋酒を含んだビターチョコの風味を引き立てる。


1832年頃。まだ20歳にもならないフランツ・ザッハー君が考案したこのケーキ。いかにもウィーンらしく優雅なエスプリを覚える。甘み、酸味のバランスがとても豊か。積極的な甘さの楽園につつまれ、チョコレート好きにはたまらないだろう。




飲み物は、メランジュではなく、ブラックコーヒーにホイップをたっぷりと真上までいれたアインシュベナーに初挑戦。



 おみやげ用のザッハトルテを購入するには、ホテルの外へいったん出てケルントナー通り側の入り口へまわる。夜12時まで営業しているので街歩きの最後に買うのがいい。(私はLサイズとSサイズを購入しました)。

ウィンドウもほらこのとおり、クリスマス仕様でかわいい。














店を出れば、すでに夕方。

このあと、スワロフスキーや化粧品、バッグなどお買い物散策をして、夜はサクサク生地が評判のシュニッツエルのおいしい店へ!




世界の食材が集まるユリウス・マインル(Julis Meinl) (6)

2019-12-15 22:30:00 | 羽田ーウィーンの旅

ウィーンの旅 つづき 

(1)(2) (3)(4)(5)


外を歩いたら、馬車が蹄の音を「カッカッ」とたてて、目の前を流れていく。
(いつの時代!)

「絶対に好きだよ」と、Nの推薦でカフェに行く前に立ち寄ったが、高級デリカテッセンのユリウス・マインル(1862年)だ。












ウィーンはもちろん、ドイツ、バリ、スイス、イタリア、アジアまで多国の高級厳選食材がそろうスーパー。クリスマス前なので、内装や食材の華やかなこと。 

1階は、コーヒー豆、ソルト、チョコレート、パン、ケーキ類。
2階は、ハムや肉類、魚、お総菜、チーズなどがずらり。

食品棚のラベルには、食品の原産国をしるす国旗が表示されていた。























結果。最終日の4時半に、ここへ駆け込み買い込んだあげく、トランクの鍵が破綻寸前になったという結末に。

もっと欲しかったけれど…。各国のおいしい食材ほど、そそられ、興味深いものはない。

どこにいても食材に興味があるのだなぁと自分を知る。





フレスコ画の極み ペーター教会 (5)

2019-12-15 22:23:00 | 羽田ーウィーンの旅




王宮、オペラ座界隈のカフェをめざし、再び、世界遺産の街に繰り出す。グラーベン通りの奥まった位置に偶然みつけた「ペーター教会」。

ディテールの極致、厳かな建築とあいまって。こんな素敵なフレスコ画みたことない!














ここは建築家・ルーカスフォンヒルデブラントの手で1701〜1733年に建築された。

天を仰ぎ(天蓋)、聖母マリアの被昇天(フレスコ画)をみる。










ぐるりとあたりをみわたし、中世の世界に迷い込んだ。






表にでて書店へ。

目がすっかりウィーンになっているので、クリスマスカードや絵本、旅行ブックなどなにをみても、ため息だ。異国を訪れたら必ず書店を探してしまう。 時間の流れがかわる。










ウィーンのカフェ、一番目は「ハヴェルカ」で(4)

2019-12-14 17:02:39 | 羽田ーウィーンの旅

ウィーンの旅 つづき (1)(2)(3)

通りを出ると、雪まじりの雨が細く降っていた。折りたたみ傘をもっているが、傘をさす人は5%未満。それも観光客ばかりだ。通り雨が多い国なのだろう。


背中をまるめ、前から吹く風をよけて。お目当てのカフェ「ハヴェルカ」を探す。
Nは、ウィーン滞在が毎月あるので、地元の地理には、私たちよりはるかに詳しい。

シュテファン大聖堂から大通りを横切り、路地裏に。すぐ、「ハヴェルカ」を見つけだし、外観の写真をとるように促してくれた。それがこれ!





1936年創業の老舗カフェ。あの「ハヴェルカ」についにきた。
ザッハトルテで有名な「カフェ・ザッハ」同様、観光用のレターカードにも印刷される、かつて文化人が集った歴史のある店……。


扉をあけると、まだ電気が半分くらいしか、ついていない。奥の調理場からオレンジ色の温かい光がこぼれていた。こうして店の一日がはじまる。







店内はまだやや寒く、マフラーをまいている女性。うつむいて何か思案し、書いている。窓際には男女がおしゃべりにこうじる。地元の人のごく普通の朝の光景。

私たちは、窓際の入り口の席を選び、アンティーク風の木のポールハンガーにコートをかけた(感激!)。薄暗い店内の壁には、演劇やコンサートの褪せたポスターやチラシが貼られ、往事の面影。(神戸にもこんな空間があるなぁと)

「何を飲みますか」と注文をとりにきたウエイター。メニューをもたずに注文をとるのが店のスタイルだ。
周囲にあわせて、おなじみの朝食とメランジュをオーダーする。


私たちが次の行程を話していたら、2代目オーナー(ギュンター・ハベルカ氏)が、挨拶にきてくれた。写真でみるのと同じ、まるっぽい頬、歓迎ムードいっぱいにチャーミングに笑いかけてくれ、Nが英語で応対する。歴史などを少し聞いた。








ウィーンでよく見かけるのがこのパンだ。噛みごたえのあり、粘りをもち、粉特有のおいしさが感じられて何度もちぎって食べたくなる。信じられないほどたっぷりのバターをつけて。

甘み・塩気がちょうどよい。銀のトレイのうえには、お水といっしょに、ややぬるめのメランジュ。ミルクとエスプレッソを半々のウィーン風コーヒーだ。後口にほどよく苦み、唇のあたる部分はふわっとムース状。



「コーヒーは利尿作用があるので、一緒に水をたくさん飲むといい」のだそうだ。

1時間もいたら、照明がすべて付いて、店内が3倍ほど明るくなった。
常連客なのだろう、入口からむかって一番奥のソファーにつく中年の女性はおそらく出勤前か、さっきから新聞をよんでいる。
男性が、スタッフに笑いかける。

厨房ちかい奥の席のソファが毎日かよう人のための定席に違いない。














早朝のウィーン シュテファン大聖堂(3)

2019-12-12 12:06:42 | 羽田ーウィーンの旅



12月2日(月曜日)晴れ 

(1) (2) に続く

ウィーン国際空港の到着は、早朝の6時前だった。










入国審査はパスポートを提示するだけなので、すいすいと進み、アッという間に荷物を受け取れた。
空港内は、コーヒーのおいしそうな香りが漂い、ハイセンスなカフェが目立つ。

その名も「Spar」というスーパーで、ヨーグルトなどを購入、おいしそうなのでどこかで食べよう。


空港とシティ・エアターミナル「ウィーン・ミッテ駅」を約26分で結ぶ、シティエアポートトレイン(CAT)で移動。
途中、仕事のメールを読む。乗り換えて、一駅「ウィーン市立公園前駅」(Stadtpark)まで。



スーツケースをころがしているので、エレベーターのある後ろ側で降りる。朝6時40分といえども、空は紫色。うっすらと雪が舞っていた。
まだ薄暗い市立公園内を通って、今旅の宿泊地「インターコンチネンタル ウィーン」へ!







回転ドアをあけたら、唐草模様に装飾された黄金のシャンデリアがいっせいに目に飛び込んできた。ヨーロッパ調の内装。中は温かくて、先ほどとは別世界。ロングブーツの底が半分くらい埋まりそうなほどのふわっとした絨毯。ほぉー!これは期待できそうだ。



チェックイン、カウンターのそばのカフェには、こんなお菓子の家も。








ガラス越しに外が望め、白々と夜が明けてきた。まだ寒そう!


荷物を預けたあとで携帯をチェック。すると入稿前の冊子の原稿で訂正依頼があった。
「取材対象者側が300文字ほど書き足しておられるので、これでは写真が入りません。どうしたらよいでしょうか」と、文字ばかりで埋まった見開きページがおくられてきた。 荷物を預けるや、椅子に座り込み、書き足しておられる分をリライトし、そのほかの数ページをチェック。あとは、夜に送ると連絡する。

同行者を待たせてしまい、7時半から、ホテルを出た。


朝の旧市街は霧雨みたいな雨が降っていた。なぜか誰一人傘をさす人はいない。メーン通りとなる「ケルントナー通り」までホテルから約10分。石造りの建築が通りに建ち並ぶ。パリとよく似ている。が、通りや路地も美しく、こぢんまりとし、秩序をもって在ると感じた。

店はまだシャッターが降りたままだ。静かな朝の街を何度もかっこいいオレンジ色の大型車に出くわすと思ったら、あとで聞くと「ゴミ収集車だよ!」とのこと。ゴミ収集車まで洗練されたデザインに思えるとは。ことさら主張することなく華麗にはしりまわっていた。








吐く息は白い。マイナス1度くらいだ。
ウィーンの中心部に位置する「シュティファン大聖堂」を真っ先に訪れた。



















オーストリアのシンボル的教会。初めて建てられたのが12世紀という。何度か増改築を繰り返して、現在の姿になった。ゴシック様式の大聖堂である。
パリのマドレーヌ寺院をふと思いだした。入り口のあたりから漂う厳かな空気が似ていた。
各国の紙幣やコインが入る透明の箱。バロック様式を取り入れた祭壇の先にはキリストの画、そして十字架。

むかって左端を進み、マリア像や天使の彫刻。宗教画をみる。



「東洋の国・日本からの旅行者です。これからの数日。よい旅になりますよう、よろしくお願いします」
と祈りを捧げて、ご挨拶。どこの国・街を訪れても、最初に訪れるのは最も神聖な場所で穢れを払ってから、土地を歩くようにしている。
数分、静かに祈りの時を過ごす。朝なので外国からの旅行者も、2組ほどだ。


大聖堂のカタコンベには、「建設公」と呼ばれるハプスブルク家のルドルフIV世も埋葬されているとあとで聞く。

また聖堂の屋根は、オーストリア・ハンガリー帝国の双頭の鷲、ウィーン市とオーストリアの紋章が描かれている。



教会には塔が2本建っていて、343階の階段やエレベーターで塔を上がると、市内からウィーンの森までみわたせるという。 外に出ると、とりどりの色を重ねた大聖堂の屋根が目に入る。
クリスマスローズなど花を売る店。
楕円型をしたクリスマスマーケットの家々がずらりと軒を連ねていた。







12月のTOKYO 羽田空港で(2)

2019-12-10 23:33:11 | 羽田ーウィーンの旅

 (1の続き)



12月1日 日曜日(晴れ) 午後から深夜


羽田空港、国際線ターミナル。白々とした朝の雰囲気だ。大きなクリスマスツリーが飾られ、ライトアップ用の銀色の枝が光っている。

同行者とおちあい、昼食には「すき焼き」を食べた。
今日初めて食べる食事がすき焼きとは、愉快なこと。






その後。リムジンバスと東急電車を乗り継いでNの家へいく。
ひとしきり、弾丸のようにしゃべり大笑いしたあとで、大阪出身のパイロットさんに教わったというおいしいラーメン屋「葉月」へ(雪が谷大塚駅より徒歩5分)。

「特らぁめん」






国産小麦粉とイタリアのセモリナ粉のブレンドする、という麺は、もっちりとしてスープも上品。洋風仕立て。

丁寧にアクをとっているのだろう、丼の底まで澄んだスープは塩味が効いて、鶏と鰹だし、隠し味の魚介類が際立っている。
豚肩ロース、鶏肉の2種類のチャーシュー計3枚。
メンマ3本、煮卵1個、海苔3枚。




11時40分発の東急、京急電車を乗り継ぎ、
再び羽田空港の国際線ターミナル。

やや重いスーツケースをころがして、リンクのようにカタい館内を滑るように歩く。
昼よりも垢抜けしてクリスマスムードいっぱいのイルミネーションにウキウキ。

免税で化粧品を購入し、これから飛び立という各国の飛行機がよく見えるカフェで強炭酸のレモネードを飲んだ。

夜中1時、2時とは思えないほど旅立つ人でごった返す空港。 年末感が漂い、突然と愉しくなってくる。




背後の席ではサリーをかぶったインド人の女性、中東からのファミリーが眠そうな目を濾すって無言でコーヒーを飲んでいた。



午前1時55分発のANAに搭乗します。

機材はボーイング787−9型 (ビジネス48席。エコノミー167席) 

席についたら簡単なピタサンドが出たので、白ワインでおいしくいただいた。

本を読み、4時に就寝。

 

羽田ーウィーン フライト当日の朝

2019-12-10 23:15:01 | 羽田ーウィーンの旅


12月1日 日曜日(晴れ) 朝


朝5時半に起きて30分、お風呂。
「翼の王国」(2019年2月号)。しまおまほさんの書かれたウィーンのエッセイをよんだ。(4度めくらい)。







滞在中のカフェだけに絞り込んで書かれている。今旅のテーマだ。


昨晩のお風呂(夜中12時)は、浴内全ての照明を消し、外からの灯りだけではいった。薄灯りの中だと、音も消える! と発見。その分、お湯や石鹸の強い香りが鋭敏につたわってきた。私の場合、海外へ行く前の日は眠れないので、少しでも安眠しやすいようにと、思ったのだ。


今朝の風呂は、昨晩の名残があって、
一面に水素の蒸気が漂っているよう。
昨晩。11時に入った水素風呂を落とさなければよかったと少し後悔したが、ゆっくりと浸かっている暇はない。(私の場合はお風呂から何かをはじめ、一日の終止符を打つのが習慣だから)



明日の早朝からのウィーン行きで、絶対に行きたいカフェに再びチェックをいれて、さぁもう、お風呂からあがろう。
すこぶる頭が冴えているのか、この時、忘れ物を3つほど思いついた。ひとつはモロッコのスリッパ(バブーシュ)。いま進行している雑誌の途中経過の刷り上がり。機内で鞄をくるむ袋。2種のサプリメント。もしかしたら、旅立つ前のこういった瞬間が一番好きなのかも知れない


6時40分に家を出て伊丹空港へ。






8時のANA便でまず羽田空港へ行き、編集の若い女性と落ちあう予定だ。

機内ではずっと、ラフマニノフの「楽興の時」を聴いていた。前日にヨドバシカメラで購入したBOSEノイズキャンセリング(QuietControl 30 wireless headphones)の機能は想像以上!






エンジン音はほぼ聞こえない。空を、滑るように飛ぶ不思議な浮遊飛行。音が官能的なまでにかたりかけてくるサウンドの中をドラマチックに飛べる。


ラフマニノフは、波のような旋律で訴えかけてくる。
脳に一節一節、刻み込まれていく揺るぎない解釈。

つたえたいものが伝わってくる力のある音。
愛しく、哀しげに、どこまでも訴えてくる調べだけに集中して聴いていた。

ラフマニノフを聞きながら、飛行を続け、12月号の「翼の王国」をよむ。

いつも真っ先に開き、今回もやはり開いた吉田修一氏の「空の冒険」 。今月号は「ジンセイハツノトークショー」 ……。

眼下にはいくらでも白い雲がふえていく。