サンドロ ボッティチェッリのプリマヴェーラに描かれたΧλῶρις, Chlōris(フローラ)。
古代のバラと文化的伝統ギリシャ神話では、バラは女神の花として知られています。
春、花、新生と関連づけられたクロリス(Χλῶρις, Chlōris、上図)は、バラの冠をかぶっていました。バラは愛と美の女神アフロディーテの象徴でした。アフロディーテが愛の神であるエロスにバラを贈ったとき、そのバラは愛と欲望の象徴になりました。だからこそ、彼女はヘクターの死体にバラ油を注いだのです (8/14,1/14参照)。
エロス(別名、クピド、キューピッド、アモル)が母親ビーナスの情事を隠すため、沈黙の神ハルポクラテスに薔薇を与えたとき、薔薇は沈黙と秘密の象徴になりました(上述)。“sub rosa” (subは、潜水艦:サブマリンから推測されるように ”下” を表す接頭辞なので、sub rosaとは ”薔薇の下“ の意)は”秘密裏の何か“ はここに由来しています。下には天井に大きく刻まれた薔薇の花が。
薔薇の花の下に https://subrosa2019.blog.hu/2019/10/05/a_sub_rosa_jelentese
伝統によれば、ヴェッセレニー(Wesselényi-féle)※の貴族の(陰謀の)指導者たちは、1669年にこの部屋で会いました。そのため、この部屋は「A rózsa alatt : Under the Rose」という名前が付けられています。
※ ヴェシェレーニ陰謀(ズリンスキ=フランコパン陰謀、またはマグナート陰謀)は、17世紀のハンガリーで起きた陰謀事件。ハンガリーからハプスブルク帝国その他の諸外国の支配を排除しようとして計画された事件です。
陰謀の指導者の肖像画と彼らの処刑の描写:(左から右へ)ペタル ズリンスキー(Petar Zrinski)、フランツⅢ世ナダスディ(Franz III. Nádasdy)とフラン クルスト フランコパン( Fran Krsto Frankopan)。
中世の外交会議において、秘密と守秘義務を誓い合ったことの象徴として薔薇が会議室に吊るされたという用法は、実際にはずっと後になってからのものです。
サッポー( Σαπφώ / Sapphō、紀元前7世紀末 ~ 紀元前6世紀、古代ギリシャの女性詩人、出身地レスボス島ではプサッポー、Ψάπφω / Psappho)の詩のほとんどは、他の古代の作家の写本の中、パピルスや鉢植えの断片の中に残っているだけです。薔薇の花に関する彼女の詩があるというので、訳してみました。我ながら何とかならないかという訳ですが、我慢してください。彼女が薔薇の詩を詠んだということが理解していただければと思い、敢えて訳出しました。キリスト教徒がいうところの異教的退廃とはほど遠い、作為の感じられない詩の美しさが感じられました。
上の像はサッポー。ヘルマ( ἕρμα, herma ; 石もしくはテラコッタ、青銅でできた正方形あるいは長方形の柱)の上にのっていた胸像です。紀元前5世紀、碑文にはエレソスのサッポーと刻まれており、この像はローマ時代に作られたコピーと思われます。カピトリーノ(Capitoline)美術館蔵。 https://www.thecollector.com/helen-of-troy/
サッポーの詩、オクシリンコス パピリ(Oxyrhynchus Papyri)の断片:Part X.
https://theconversation.com/guide-to-the-classics-sappho-a-poet-in-fragments-90823
PSI XIII 1300 (c. 200 BCE) containing Sappho fr. 2.
サッポーの詩 https://www.gutenberg.org/files/42166/42166-h/42166-h.htm#THE_ROSE から、
薔薇
気まぐれなゼウスの意に適えば
花の王を選ぶときには、きっと
凛とした美しい薔薇の花に冠を戴かせたに違いありません、
その比類ない存在に;
その優美さは谷を渡り、丘を飾り、
恋いこがれる思いは神殿を建てた、
愛らしい魅惑の花;
死すべき運命を持った者たちにその眼差しは向けられているのです;
植物の喜びと誇り、そして庭の美しい称揚、
緑野の頬にもたらす美しき紅潮;
明けそめる朝あけから吐きだす火と滴
色と匂い;
やわらかい吐息、その香りは情熱への願いであり、
キュプリス※のキスを受け入れるために咲くとき;
香る葉の中にその震える花びらを覆い隠すのです
そよ風の中で微笑みながら。
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