英国湖水地方・魔法の庭ダルメイン
昨日 ( 5/31 ) テレビBSプレミアム 3 ~魔法の庭ダルメイン▽ 英国湖水地方・秋冬そして春 ▽ リス大活躍 ▽ 屋敷伝統りんご料理~を見ていたら、見慣れた絵が登場しました。
ロバート メイ( Robert May; 1588-1664 ) が1660年から1665年に書いたThe Accomplisht Cook or the Art and Mystery of Cookery の中にある“アカシカのパイ包み焼き“ が一部分引用されていました。
私がかって訳した料理書の中にロバート メイの上記の料理本があります。その部分を引用しておきます。パイの表面に描かれた文様は下の本の中にある図柄そのままでした。シカ肉にしっかりとスパイスを効かせてバターを入れるのがこのレシピの優れたところで、この料理を作らなくても、料理に興味のある方は参考になさってください。その際使っていた型は、下の図柄を拡大すると詳細まではっきりと分かります。
興味をそそられてみていましたが、TV内で作られていた内容はレシピそのままでした。この番組は人気があるらしくビデオに取っておられる方も多い様です。「鹿肉の料理」に興味がおありの方も多いのではと思い、今回ブログで取り上げました。
アカシカを焼く
アカシカのサイドを用意して骨を取り調味する。バックの筋を取り、皮を剥ぐ。フィレ又はバックに中指大のラードをラードする。先ずナツメグ、ペッパーで調味する。ペッパーを4オンス、ナツメグを4オンス、塩を6オンス用意して一緒に混ぜる。ヴェニスンのサイドに調味する。調味しやすいように内側にナイフで切れ込みを入れる。この形に合わせてパイを作る。パイの底にバター、クローヴを1/4オンス、ベイリーフを1―2枚肉の上に置いて調味する。しっかりと覆う。クローヴ、保存の良いバターを入れて蓋をして8―9時間焼く。最初によくといた卵6―7個を塗る。焼けたら冷ましてよく澄ませたバターを入れる。
アカシカのサイド又は1/2のハンチを用意してライミール1/2ブッシェルを粗めに篩ってボイルした水だけを入れて非常に硬く作る。
熱くして食べるにはシーズニングを半分にして焼き、クラレットワインと良質のバターを入れる。
The Accomplisht Cook or the Art and Mystery of Cookery から引用
弓の模様をつけたパイ包みの横にある、右側の蓋付き鍋の様なものは、アカシカを使って作るパイの型です。平たく作る方法と、円筒形のパイのなかにシカ肉を入れて焼く二通りの方法があります。アカシカは脂身が少ないので「ラード」することと、「バター」を入れることが必須です。
また、パイクラストは、メイの時代では、小麦粉1ポトル( 約 1.2kg)の中にバターを1/4―1/2ポンド、冷水を入れて作る方法を取っていました。上の料理からも分かるようにパイクラストはあくまでも料理を入れて蒸し焼きにするための「容器」でした。固くて食べられなかったと思われます。小麦粉の中に卵とバター、冷水を入れて作る「コールドバターペイスト」もありましたが、今のように美味しいパイ皮が登場するのはもう少ししてからです。
もう少し詳しく説明すると、メイが料理書が出版した1660年は中世後期からすでに250年は経っていますので、クラストはすでに食べられるのではと思いがちですが、そうではないようです。料理書の中で骨髄のパイはbaking ではなく、シチュ、ポタージュと同じboiling の中に分類されています。小麦粉と水で作った(コフィン)はポットと同じ食材を煮る“入れ物”として扱われています。オーブンに入れて蒸し焼きにする鍋です。蓋をして食材を入れて煮る鍋と同じで、硬くて食べることができなかったたようです。
文中、サイド、バック、フィレ、ハンチとあるのは鹿肉の各部位の名称です。
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