ローズウォーターのお話をもう少し続けようと思います。
薔薇の系統発生的見地からダマスクローズの起源を絞り込む方法は既にこれまで試みてきましたが、近年のアッシリアの楔形文字の研究で、薔薇の生産がBC4000年まで遡ることが明らかになりました。そこからBC1000年におけるラテン語、ギリシャ語、ペルシャ語、シリア語、トルコ語でのローズウォーターへの言及があったことが判ったのです。
ローズウォーターは主にダマスクローズから生産されるため、ローズウォーターの生産の経過を追跡することは、薔薇の移動を追跡することになります。ところで、ローズウォーターを製造するのに必要な花びらの供給源として、世界的に栽培されている薔薇には3種類あります。
薔薇油業界で優位を占めている Rosa x damascena は、シリア、ブルガリア、トルコ、ロシア、パキスタン、インド、ウズベキスタン、イラン、中国などの主要な薔薇油生産国で最も広く栽培されている薔薇です。そして、ロサ ケンティフォリアは、フランスとエジプトで少量栽培されています。ハマナスは日本と中国である程度栽培されている薔薇です。
ローズウォーター、ロザセウム、古代のローズオイル、そして今日のローズオイル、薔薇のアター。古代のテキストで盛んに論じられている4つの薔薇の製品は次の様に分類することが出来ます。
- ローズウォーター、薔薇の花びらを水に浸して作ったフレーバーウォーター。
- 薔薇を砂糖または蜂蜜とブレンドすることによって生成される、薔薇の菓子、またはrosaceumと呼ばれる薔薇のペースト。
- イスラム教のテキストで引用されている薔薇油で、薔薇をゴマ油またはオリーブ油に浸し、太陽の下に置いたもの。
- 最後に、私たちが今日知っている薔薇油。これには、ローズオットー、ローズのアター、ローズエッセンス、またはローズエッセンシャルオイルとして知られているオイルがあります。薔薇のオットーは水蒸気蒸留によって抽出されます。ローズアブソリュート(室温で植物の香りを溶媒に移し抽出する溶媒抽出法、またはアンフルラージュ法で抽出した香料)は、溶媒抽出または超臨界二酸化炭素抽出※によって得られます。
超臨界二酸化炭素抽出法 ( supercritical carbon dioxide extraction ) という最新の抽出法が出てきたところで、これまでいくつか述べてきたローズオイル抽出法についてここでまとめておこうと思います。
芳香植物から精油を抽出するのには様々な方法がありますが、蒸留の過程は植物が持っている芳香性分を抽出する方法です。薔薇に限った方法ではありません。ハーブにも利用できます。
内容の説明の前に;
近年、精油などの香料が原因でアレルギー体質や化学物質過敏症の方のアレルギー、喘息などを誘発すると、精油の使用の自粛を呼びかける運動が起きています。特にある抗原に対し生体がアレルギー反応を起こす感作作用が問題になっています。精油の使いすぎ、過信、精油そのものに対する知識をしっかりと持った上での使用を心がけてください。
- 圧搾法
圧搾法は、主に柑橘類の果皮から精油(エッセンシャルオイル)を抽出するときに使われます。果物の皮を手で絞り油胞を潰してスポンジで吸い込みます。スポンジが精油で浸ったら容器に精油を移します。圧搾法は熱による影響を受けないため、デリケートな成分を損なうことなく新鮮な香り成分を取り出すことができます。
過去にはエキュエルというおろしがねのような器具を用いるエキュエル法や、果皮部を絞るスクイーズ法、精油を海綿で吸い取るスポンジ法などで行われていました。現在は機械化され、エキュエル法はペラトリーチェ法に、またスポンジ法はスマトリーチェ法に進化しました。さらに、精油と果汁を同時に採取するインライン法(FMC法)で大規模に香りが劣化しないように抽出することができるようになっています。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます