エンジェル フード ケーキ(エンジェルケーキ)
アメリカの製粉会社キングアーサーフラワーが創立200年を記念して1992年に出版したクックブックのエンジェルフードケーキのレシピは次のような文章で始まる。
「これは手に入れて食べることのできる、空気よりも軽い( light )ケーキである。バターもオイルも卵黄も一切使わない他に類を見ない、この世のものとは思えないケーキである。しかし恐れることはない我々の簡単なレシピに従えば誰にでも作ることができる。」
脚付きのエンジェルフードケーキパン
エンジェルフードケーキの作り方
1カップ オールパーパスフラワー
1 1/2カップ 砂糖
12個 卵白(L)
1/2ts 塩
1ts バニラ又はアーモンドエッセンス又は両方
1 1/2ts クリームオブタルタル
1.小麦粉に砂糖を3/4カップ入れて混ぜる。
2.塩とエッセンスを卵白の中に入れて泡立てる。クリームオブタルタルを入れて光沢が出るまで泡立てる。
3.砂糖を1/4カップずつ3回加える。小麦粉をさっくりと混ぜる。
4.3.を油を塗っていないエンジェルフードケーキパンに入れて162℃ で40-45分間、表面がキツネ色になるまで焼く。
5.パンをひっくり返して冷ます。
Light はフワフワした、の意味ですが、胃にもたれない、すぐに消化する、コレステロールの少ない、気にしなくてたくさん食べられるうれしいケーキであることを伝えようとした言葉のようです。コレステロールの多い卵黄、牛乳、バターを一切使わない、いくらでも食べられる天使のような優しいケーキです。
1953年出版のベター・ホームズ・アンド・ガーデンズ・ニュー・クック・ブック, 1962年のジョイ・オブ・クッキング, 1967年のバイ イット・アンド・トライ・イットのレシピは上とほとんど同じ内容です。
1896年刊のボストンクッキングスクールのクックブックにエンジェルケーキの名があります。この頃にエンジェルケーキが生まれたと思われます。そのレシピは;
卵白 1カップ
砂糖 3/4カップ
コーンスターチ 1/4カップ
小麦粉 1/3カップ
塩 1/2ts
クリームオブタルタル 1ts
バニラ 1ts
卵白を泡立て、砂糖を徐々に入れて混ぜる。バニラを入れ、コーンスターチ、小麦粉、塩、クリームオブタルタルを入れて混ぜる。パンにバターを塗らずに、中火で45-50分間焼く。(1896年から1967年のレシピまで、その内容はほとんど変わっていません。)
1897年に、フランスでポール・サバティエが接触水素化反応を発見し( 微細なニッケル粉末を触媒に使ってエチレンに水素を添加する方法を発見した。これにより彼は1942年にノーベル化学賞を受賞している )、1901年にはドイツの化学者、エドウィン・キュノ・カイザーが水素を脂肪に添加する方法を考案した。後にプロクターアンドギャンブル社で綿実油に水素を添加することに成功し、1911年クリスコの商品名で売り出した。( 液体である油に水素を添加すると、常温下で固形となる。 )
バター、ラードを食事の中からできるだけ減らしてコレステロールが原因の脳梗塞、脳卒中、脳溢血を防ごうという社会的な動きと、エンジェルフードケーキの出現は連動しているように思われます。
エンジェルケーキに似たケーキに、シフォンケーキがあります。これは、1927年にロサンゼルスのハリー・ベーカーが考案した、卵(全卵)、サラダ油を入れてエンジェルフードケーキパンで焼くケーキである。エンジェルフードケーキを下地に、考え出したお菓子です。
参考文献
Brinna B. Sands, The King Arthur Flour 200th Anniversary Cookbook 1992
Better Homes New Cookbook, 1953
Irma S. Rombauer, Marion Rombauer Becker, Joy of Cooking, 1962,1975
Women's Society Tokyo Union Church, Buy it'n Try it 1967
Fannie Merritt Farmer, Boston Cooking School Cook Book 1896, 1918
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